花の秋田駒ケ岳を歩く

2003年7月28日(月)


 秋田駒ケ岳は、秋田県と岩手県の県境に位置する秋田県最高峰の山である。春になると中腹に馬の形をした雪形ができることから駒ケ岳という名が付けられた。この山の西斜面には、田沢湖スキー場や田沢湖高原スキー場が整備され、冬になると県内一多くのスキーヤーで賑わう場所である。
 また、夏はコマクサを始め数多くの高山植物が咲き乱れる花の名山として、県内外から多くの登山客が訪れる。まさに、オールシーズンを通した県内でも有数の観光メッカである。

 秋田駒ケ岳は8合目まで車で登れるのだが、7月、8月の2カ月間(および6月、9月の土日)はマイカー規制が行われており、高原温泉の駐車場に車を留め、そこからバスで行くことになる。7月下旬のこの日、9時20分発のバスは平日にもかかわらず大型バス2台が満席になる盛況ぶりで、駒ケ岳の人気のほどが伺える。多くが中高年の女性たちであった。この日は、梅雨空の合間を縫って、抜けるような青空が広がっていた。
 8合目駐車場でバスを降り、一路、山頂付近の阿弥陀池を目指す。そこまでは約1時間の道のりだ。間断なく聞こえてくるウグイスの声、登山道の両脇には次から次へと現れる高山植物の数々。その都度、足を留めてカメラのシャッターを押す。あまりの花の多さにただただ感動するばかりである。

 30分ほど歩くと急に展望が開けた。片倉台展望台だ。ここの展望台からは眼前に田沢湖がくっきりと見えた。そこから先は右手に田沢湖、左手に女目岳、そして正面には荒々しい山肌の男岳、さらに登山道両脇に咲き誇る無数の高山植物というシチュエーションの連続である。歩き続けると次第にニッコウキスゲの群生が現れてきた。ハクサンシャクナゲやハクサンシャジン、トウゲブキなども道端に無数に咲いている。まさに花の楽園とはこういう場所をいうのではないか。

 阿弥陀池手前から男岳に登る登山道。ここでもニッコウキスゲの群生が出迎えてくれる。男岳北側斜面は、どこもかしこもニッコウキスゲが咲き乱れているという状態なのであった。また、阿弥陀池周辺もシロバナトウウチソウやヨツバシオガマなど高山植物のオンパレード。あまりに贅沢しすぎて目が回りそうだ。
 ここから、駒ケ岳の外輪山最高峰の女目岳に登る。ここにも、ミヤマダイコンソウやエゾツツジなどの花が見られた。長く続く木の階段では、さすがに足がガクガクになった。今回の山歩きで唯一キツイと感じた場所であった。

 女目岳山頂から眼下の阿弥陀池を見下ろす。残念ながら、ここからはガスがかかって回りの景色がよく見えなかった。晴れていれば最高の眺望なのだという。すべてがすべてうまくいくとは限らない。
 再び阿弥陀池まで降りて山小屋の前で昼食を取る。下界は快晴だったのだが、この辺りにになると高山のせいかガスがかかって少し寒い。休憩もそこそこにして、浄土平の湿地帯を歩いた。時期がもう少し早ければ、チングルマやイワカガミ、コバイケイソウなどの花が群生しているというが、今の時期はヒナザクラが沢山咲いていた。高山植物の種類が豊富なので、その時期、その時期に合った花が楽しめるというのも、この山の魅力なのかもしれない。

 浄土平から横岳に登ると目の前に黒い火山礫に覆われた大焼砂と小岳が見える。駒ケ岳は最近では昭和45年(1970年)9月に噴火した火山なのだが、その噴火の爪痕がこうして残っている。
 駒ケ岳といえばコマクサが有名だが、コマクサもこの火山礫という生育環境の悪い場所に生えている。あの可憐な姿と火山礫は似つかわしくないが、そんな環境の悪い中で健気に咲いている姿が、また登山者の共感を呼ぶのかもしれない。

 帰りは、横岳から焼森経由でコマクサをゆっくりと鑑賞しながら8合目駐車場まで下山した。空は抜けるように青かった。赤く色づいた葉っぱが青空のもとで輝いていた。また、来年来ようと山に誓って、下山のバスに乗り込んだ。

高山植物の数々はこちらのページをご覧ください。
掲載一覧
ヤマハハコ カラマツソウ ハナニガナ オニアザミ ウゴアザミ
ミヤマアキノキリンソウ トウゲブキ エゾニュー ハクサンシャジン ハクサンシャクナゲ
マルバシモツケ ニッコウキスゲ ヨツバシオガマ シロバナトウウチソウ  エゾシオガマ 
オヤマソバ エゾツツジ ミヤマダイコンソウ ベニバナイチヤクソウ ウサギギク
ショウジョウバカマ ムシトリスミレ チングルマ ヒナザクラ モミジカラマツ
ハクサンチドリ オニシモツケ タカネアオヤギソウ コマクサ イワブクロ
オオバキスミレ コミヤマハンショウヅル      

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