ラベンダーは香りの花である。また,「手折らば折れん」という風情の可憐な花である。秋田県の県南地方に位置する千畑町は,今の時期になると,まち起こしで始めた「ラベンダー祭り」で賑わう。
花火で有名な大曲市から,奥羽山脈方向に向かった山懐に抱かれる小さな町だが,「ラベンダー祭り」の初日となったこの日は,どこから集まったのか大勢の人たちで賑わっていた。
ラベンダー園から大曲市に向かう県道沿いに「払田(ほった)の柵」(仙北町)という古代城跡がある。 外柵周3.6km,面積87.8haの広大な面積を有し,9世紀初頭の平安朝初期に作られた国家の出先機関跡だと推定されているが,これほど大規模でありながら古代文献に全く記載されていない謎の城跡である。
年代は,遺跡から出土した材木により,伐採年が801年だということが判っており,建設は以後1,2年以内だと推定されている。
当時の代表的な文献「続日本紀」に雄勝城が築かれたとの記載があり,雄勝城跡がまだ発見されていないため,払田の柵が発見された当初は雄勝城跡ではないかとの推計もなされた。しかし,雄勝城は8世紀中旬の建設のため,建設の年代が特定された後は,雄勝城が移転したものではないかと推計されている。
いずれにせよ,当時の東北北部は,中央政府の辺境の地(蝦夷の地)であったため,文献の記載が非常に少なく謎を深めている。
政庁が置かれたこんもりとした丘の登り口に外郭南門跡の柱12本が復元されている。外郭は築地塀だったと推定されており,奈良の平城宮に復元されている築地塀と同等の規模だった。この太い門柱に触れていると1200年の時空を越え,平安の世に舞い戻ったような錯覚を覚える。
政庁跡は綺麗に整地され,短く刈り込まれた芝生が周囲を覆っていた。その一画では,地区住民だろう,パターゴルフを楽しんでいた。史跡で住民がレクリェーションを行っている姿は,何とも微笑ましいものであった。史跡だからと特別扱いせずに,住民に公園として開放しているのは,新鮮な驚きである。これぞ,発想の転換だと思った。
「公園的に自由に使うことができ,地域の人々の郷土意識を高めることに貢献している。単なる復元に終わることなく地域環境保全に資する施設ある。」としてグッドデザイン賞を受賞したのもうなづける。