唐松神社界隈(協和町)

2002年8月25日(日)


 秋田県のほぼ中央に位置する協和町。秋田市から車で30分ほどの位置にあるにもかかわらず、秋田からだと大曲や角館の通過点になってしまい、なかなか立ち寄ることが少ないが、役場のある境周辺は唐松神社を始め、中世の歴史が色濃く香る地域である。

杉並木

 唐松神社参道200メートルの両側に幅狭く立並ぶ杉並木は、佐竹義処(よしずみ)の延宝年間(1673〜81)に植えられたと伝えられる。樹齢300年を超え、一番高いものになると約45メートルはあるという杉の巨木は見るものを圧倒して見事というほかない。県の天然記念物にも指定されている県内有数の杉並木であり、一見の価値がある。


唐松神社

 杉並木を通り抜けた奥には唐松神社奥殿が鎮座している。神社は高いところに建てられ、仰ぎ見るようにして参拝するのが一般的だが、ここは参道から見下ろすように低い場所に社殿が建てられている。これはかつて唐松岳の山中にあった社殿をこの場所に移すとき、藩主の怒りを買いこのような形になったのだという。
 ここは安産と子授けの神様として親しまれており、この日も生まれたばかりの赤ちゃんを連れた二組の親子が参拝していた。私は夫婦で訪れたのだが40代半ばの中年夫婦は果たして周りからどのように見られたのだろうか。


唐松山天日宮

 唐松神社の社家は物部氏であるが、その氏神社・唐松山天日宮が唐松神社に隣接している。石を積み上げられてできた島の中に建つ社殿は、大社造りの屋根であった。古代史で活躍する物部氏の由所正しさを感じる。


物部長穂記念館

 その物部氏から近代ダム建設の権威者、物部長穂氏が生まれている。そして物部長穂氏の業績を称えて、神社近くにある唐松岳史跡公園内に氏の記念館が建てられていた。
 物部長穂氏は、日本の水理学、土木耐震学の草分け的な人物で、特にダムの耐震設計で高い評価を得た人物である。近頃何かと評判の悪いダム建設だが、ダム建設が日本の近代化に果たした役割は大いに評価してよい。


唐松岳史跡公園

 唐松岳の麓に整備された史跡公園の中心にあるのが、秋田県にただ一つの本格的な能舞台である能楽殿。ここは1990年にふるさと創生資金を活用して整備されたものだが、日本最古と言われる京都西本願寺の北能舞台をモデルにしたという。
 この日は能と狂言の定期公演が行われており、すごい人出だった。この日公演があることをまったく知らずに行ったのだが、外に開放された舞台だけに中に入らなくても覗くことができた。狂言の野村万斎氏ら国内の一流どころが集まっての公演で、チケットも7500円と高価なものだったようだが、中に入らなくとも十分に堪能できるのは何とものどかな雰囲気である。
 なお、能と狂言の定期公演は毎年5月最終土曜日(薪能)と8月の最終日曜日の年2回開催されているそうなので、本格的な能舞台で古典芸能を楽しむのも悪くないかもしれない。


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