早春の男鹿半島

2004年3月26日(金)

 秋田県は南北を長辺とし、東西を短辺とする長方形の形をした県である。その長方形にちょっとしたアクセントを加えているのが、日本海に突き出た男鹿半島。秋田県の日本海側は、対馬暖流の影響を受けているせいか、思いのほか暖かいのだが、特に男鹿半島は、その地理的条件から、その影響が大きいようだ。春先に県内でもっとも早く花を咲かせる地域の一つが男鹿半島であることはあまり知られていない。今回は、早春にはかなげに咲く「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」に遭いに、男鹿半島まで出掛けてみた。 

 男鹿市門前地区に、その昔鬼が一晩で築いたとされる999段の石段がある。何でも漢の武帝に連れられた鬼5匹が、武帝が住み着いた本山のふもとに1000段の石段を作ると約束したが、1000段目に取り掛かったときに一番鶏に鳴かれてしまい、約束が果たせなかったという言い伝えが残っている。
 それにしても、この石段は急峻である。しかも鬼が造ったせいだろうか、段差が不規則で、その一段一段が高いのである。これには少々こたえた。あとで気がついたのだが、石段とは別ルートの登山道もあって、そちらは落ち葉の敷き詰められた土の坂道になっていて、とても歩きやすいのだった。

 その999段の石段を登りきったところにあるのが、赤神神社五社堂(国重文)である。ここには、その石段を造ったとされる鬼を祀った社殿が5つ建てられている。五社堂というと、男鹿半島にはもう一つあって、なまはげ伝説で名高い真山神社の奥宮も五社堂と呼ばれている。
 ここ赤神神社五社堂から真山神社五社堂までの間は、毛無山・本山・真山という600メートルから700メートル級の山々が連なっている。古来、これらの山々は「お山」と呼ばれ、山岳信仰上の聖地と崇められていた。そしてそこに祀られた神々を詣でながらの道者登拝を「お山かけ」と称しているのだそうだ。
 早速、こちらも「お山かけ」をと試みたが、途中で雪が降る悪天候に見舞われ、20分ほど登ったところで退散してしまった。いつか、本格的な登山の準備をして再チャレンジしてみたい。

 五社堂の麓にある絵図には、今はなき多数の堂塔が、山のあちらこちらに描かれており、往時の山岳信仰の隆盛さが偲ばれる。

 男鹿市真山地区にある真山神社は、「お山かけ」のもう一方の起点である。ここは、毎年「なまはげ柴灯まつり」の舞台であり、隣りには「なまはげ館」や「男鹿真山伝承館」が立ち並ぶ、なまはげのメッカとも呼べる場所である。ここには、杉の大木が鬱蒼と茂っており、門前とは趣きを異にしていた。

 さて、目的の「スプリング・エフェメラル」だが、赤神神社五社堂から毛無山に掛けての登山道にたくさん見られた。福寿草、カタクリ、キクザキイチゲ、オウレン、アズマイチゲなど。そんな春の妖精たちを見たい方はこちらのページからどうぞ。

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