田沢湖芸術村と抱返り渓谷
 2001年5月20日(日)

 5月19日,田沢湖町の田沢湖芸術村「温泉ゆぽぽ」で,北東北3県の行政担当者が集まって,「北東北広域行政研究会(仮称)」の設立総会が開かれた。北東北3県の連携は,平成9年に青森県の木村知事の呼びかけで始まった「北東北知事サミット」に端を発する。その記念すべき第1回の知事サミットの合意事項に,北東北広域連携構想を策定するというものがあった。それを受けて,担当田沢湖ビールレストラン者レベルや策定検討委員会などで話し合いがもたれ,平成11年に構想が策定され,官民一体となった連携推進協議会が組織された。
 その策定を通じて仲良くなった3県の担当者が,「いつもいつも事務局じゃ詰まらないよね。いっそのこと行政担当者の連携団体を組織してみない。」ということになった。そして,この日,平成11年に知事サミットが行われた記念すべき場所で,約30名の3県職員らを集めた連携団体の発足式が行われたのだ。

ボクにとって,この「田沢湖芸術村」は特別の思いがある。それは平成11年に北東北知事サミットの主担当として,約半年間ここにかかわったからだ。特に,わらび座デジタル・アート・ファクトリーの長瀬さんには,会場準備から当日の事例発表など,ほぼ全面にわたってお世話になった。そもそも,「情報」というテーマ設定で,真っ先に思い浮かんだのが,長瀬さんらが取り組んでいた民俗芸能のデジタル・アーカイブだった。それに,ここは北仙北インターネット協議会というプロバイダ事業も行っている。まさに情報というテーマにうってつけの場所ではないか。
 知事サミットのメイン会場となった田沢湖ビールのレストラン前は綺麗に整備されつつじが咲いていた。この場所で3県知事とゲストの記念写真を撮ったのだ。この風景を見ると,いまだに当時の思いが熱く胸をよぎってくる。

新緑の抱返り渓谷 この田沢湖芸術村から車で数分の場所に,県立自然公園「抱返り渓谷」がある。前日のアルコールを払拭するには,新緑を浴びながら歩くのが一番だろうと思い,岩手県の人たちを連れて抱返りに向かった。抱返りとはすれ違った人が抱き合わなければ通れないほど狭い道路沿いにある渓谷という意味合いで付けられたと聞く。約2年ぶりの訪問だが,駐車場付近は幾分整備されたようだ。一緒に行った岩手県職員は,今までこの場所を知らなかったという。確かに有名になりすぎて,人であふれ返るのも困りものだが,隣県の人にすらその場所を知られていないというのは,いささかPR不足ではないだろうか。秋田にはこのような場所が多すぎると思う。
 ただ,観光バスは角館,田沢湖観光のルートになっているらしく,何台も訪れていた。ここの特徴は,何といっても,渓谷を流れる川の水の独特の色合いにある。緑と青が混ざったような毒々しいまでの色。コバルトブルーというと聞こえはいいが,何となく絵の具を溶かしたような感じに見える。

回顧の滝 駐車場からゆっくりと歩いて30分ほどの所に「回顧(みかえり)の滝」がある。ここが渓谷の一つの観光スポットで,ここまでの往復1時間が格好のハイキングコースとなっている。この滝は,角館方面から向かうと真っ暗なトンネルを抜けた場所の右手後方にあって,大きな瀑音に思わず振り返って見たくなる。そんな意味合いから付けられた名前だろう。それにしても見事な滝だ。新緑のシャワーを浴びながら,ここまでたどり着いた者たちに一服の清涼感を与えてくれる。ここから神代ダムまで3キロの案内標識があったが,今日のところは引き返すことにした。この先には,まだ行ったことがない。いつかは3キロあまりの道のりを歩いて,神代ダムの近くにある夏瀬温泉に入ってくるのも悪くないかもしれない。
 十和田湖にそそぐ奥入瀬渓流にも大小無数の滝が奥入瀬に流れ込んでいるが,そこは国道沿いにあるため,車の流れに景観が遮られてしまうことがよくある。その点,この抱返り渓谷は切り立った崖を切り開いて造られた道路なので,車はもちろん,バイクや自転車も通行できない。その分,景色を思う存分堪能することができる。県内には,阿仁の「安の滝」や奥森吉の「桃洞の滝」など,車では入り込めない奥地に名瀑が多い。

 帰り路,渓谷の下まで降りてみた。上から眺めると,絵の具を溶かしたような川の色だったのだが,近くに寄ってみると,多少の色はついているものの,透き通った非常に透明度の高い水で,川底までちゃんと見通せるのだった。渓谷を流れる玉川そこには,毒々しさは微塵も感じられない。
 蛙の鳴き声があちらこちらでこだまする中を駐車場まで戻った。朝,来たときは二日酔いでフラフラしていたのに,約1時間の散歩ですっかりアルコールが抜けた。二日酔いのときは散歩に限る。まして,このようなグリーンシャワーを浴びながらの散歩は効果がてきめんだ。
 駐車場で岩手県の人たちと別れ,新緑の角館武家屋敷を見て秋田に戻った。角館,田沢湖芸術村,抱返り渓谷は,いずれも車で10分圏内にあって,セットで見て回るにはちょうどいい。今年8月からは,わらび座で「アテルイ」を上演するというし,観劇と地ビール,温泉までセットにして,第1級の観光地である角館と抱返りを観光するのも悪くないと思うのだがいかがだろう。

あきた散歩INDEX