秋の鳥海山  2000年10月7日(土)
〜南由利原高原〜

南由利原高原 秋田県と山形県の県境にある鳥海山。森敦の小説の影響か,山形県の山と思っている人が多いようだ。確かに山頂は山形県に位置するが,ほぼ両県に二分されている。
 僕の生まれ故郷は,鳥海山の麓の矢島町というところだ。生まれてまもなく秋田市に転居したため,その当時の記憶はないが,中学に上がるまで,お盆には毎年矢島町にある叔父の家に遊びに行っていた。
 叔父の家からは,真正面に鳥海山が見えた。その雄大で流麗な姿に畏怖の念すら覚えていたように思う。目の前に川が流れていた。石ころを拾っては,木のバットでバッティングをした。思えば目の前の川を越え,鳥海山に届けという思いがあったに違いない。
大谷地池と鳥海山 当時,地元の子どもたちは川で泳いで遊んでいたが,なぜか川遊びは恐くて出来なかった。ただ,一人で黙々と木の棒を持って,石ころをボールに見立てて,バッティングをしている様は,周りから見ていてさぞかし奇異な姿だっただろう。
 先週の土曜日,秋田,仙台,山形の早稲田出身者による野球大会が,その矢島町の町営野球場で開催された。その日も快晴で鳥海山がよく見えた。野球をやって,花立高原のユースプラトーという宿舎に泊まって,3県の地酒に舌鼓を打ちながら,夜の更けるのも忘れて歓談した。
 翌日,外に出て鳥海山を眺めてみると,そこだけ雲がかかっていて,隠れているではないか。秋田への帰路,同行してくれた人が,鳥海山の周囲を巡るようにして南由利原高原から仁賀保町へ抜ける道路を通ってくれたのだが,鳥海山は雲居に隠れたままだった。こうなると,前日に山の写真を撮らなかったのがすごく悔やまれた。
コスモスと鳥海山 そして,1週間後,3連休の初日となった7日の土曜日,どうしても鳥海山の写真を撮りたくなった。天気予報によると,3連休で天気が良くなるのは土曜日だけだという。僕は,秋田から1時間半の道のりを車でかけていた。今日は,先週とは逆のルートで,秋田市から国道7号を南下し,由利町から高原へ向かう。天気は快晴だったが,鳥海山の周囲だけ雲がある。どうか隠れないでくれと願いながら山を上った。
 始めに訪れたのは,仁賀保町の土田牧場とひばり荘。ここから眺める鳥海山はとても雄大だ。日本海が一望できて,遠くには男鹿半島も見える。しばらくの間,日本海を眺めていると,新潟へ向かう日本海フェリーが見えた。仁賀保高原はすすきが一杯だった。(注:TOPページ写真)
コスモス園 続いて,南由利原高原へ向かう。ここは,青少年旅行村として,オートキャンプ場やバンガローなどが配置され,大谷地池を1周するようにサイクリングロードが整備されている。子どもが小さいころ,よく遊びに来てはサイクリングをしたものだ。
 そういえば,独身時代,湯沢の総合庁舎の仲間たちと,ここのバンガローに泊まったことがあった。そこで,一人の女性と気が合い,二人だけで夜遅くまで肩を並べて外で語り合ったことが,急に昨日のことのように思い出された。あのとき,どんな話をしたのだろう。忘れ掛けていた遠い過去の記憶が,ふとしたきっかけで目の前に蘇ってくる。なぜか胸がキュンとなった。バンガローの近くにはコスモスが一杯咲いていた。
 帰りは,矢島町の花立高原を通り,矢島町のAコープで,矢島町でしか販売していないという「出羽の富士」の「天之美禄」という酒を買う。矢島町長お勧めの酒である。鳥海山の別名を「出羽の富士」という。秋の空はどこまでも青かった。

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