金 浦 温 泉
2001年5月3日(木)

 昨年来,父がほとんど歩けなくなってしまった。座っているのも覚束ない。整形外科に通ってはみたものの,一向に回復の気配がないので,成人病医療センターに検査入院することにした。以前,心臓疾患があって,この病院に入院したことがあったので,循環器系の病気に原因があるかと思ったからだ。1週間入院して検査したが,糖尿病の疑いはあるものの血液の循環は正常そのもので,何ら問題はないという。退院のとき,車で家まで送っていったが,助手席に座っているだけで苦痛に顔をゆがめていた。どうも座って腰を曲げているのが痛いらしい。これは神経系かもしれないと,中通病院で検査してもらうことにした。結果は,椎間板ヘルニアということだった。手術を施すのは糖尿病の疑いがあるので無理だという。そこでブロック注射をすることにした。話しに聞くとすごく痛そうだ。
 こんなことがあって,母から温泉に浸かると少しは良くなるのではないかと言われて,このGWを利用して温泉に連れて行くことにした。療養目的なので効能がある温泉というので選んだのが金浦温泉だった。

 金浦温泉は,秋田市から日本海沿いを南下して1時間ほどの所にある金浦町にある。金浦町というと,国道7号線沿いに最近リニューアルした町営金浦温泉の温泉宿泊施設「はまなす荘」があるが,この日行ったのはそこではなく,少し内陸に入ったところにある県共済の施設である。
 この金浦温泉は二つの違った泉質の温泉があって,一つは白濁色の硫黄泉,もう一つは無色透明のラジウム鉱泉である。秋田県内の日本海側の温泉というと,塩分が含まれるヌルヌルとした肌合いのナトリウム泉が多いのだが,硫黄泉は日本海沿岸ではここだけかもしれない。普通,硫黄泉というと火山のある山の温泉に多いものだ。
 温泉のパンフレットによると,
「この温泉は昔からその名の通り「硫黄谷地温泉」と言われ,昭和初期には私設の湯治場もありよく繁昌していたという。今般,この温泉を科学的に分析したところ,イオウ温泉(H2Sが10.65と非常に多い)の薬効があり,温泉法及び鉱泉試験法による「療養泉」に適合し,あがった後もポカポカするあったまり湯の良質なものであることが判明した」とある。
 確かに,白濁した独特の硫黄臭の温泉に浸かっていると,身体にいいことをしてるという気分になってくる。上がったあともポカポカしてすこぶる気分がいい。
 さらに,同じ場所に無色透明のラジウム鉱泉(北投石)がある。同じく温泉のパンフレットには,
「北投石は,台湾の北投温泉で発見されこの名がつけられたものだが,世界で3ヶ所,我が国では秋田県,玉川温泉が唯一の産地として知られている。この石は放射能性を有し,硫酸バリュームと硫酸鉛との混昌体で,昭和27年3月特別天然記念物に指定され,法律によって採取を禁じられている。(本館の北投石は指定以前に採取されたものである)
金浦温泉 玉川温泉はこの北投石により湧出する温泉であり,ラジウム放射能を含み下流で北投石を生成しつつある。」
 要するに玉川温泉と同じ成分を有する温泉だということなのだろう。玉川温泉はその療養効果が日本国中に知られたところで,湯治客がひっきりなしに訪れる温泉だ。プロスポーツ選手なども,オフに訪れてシーズンの疲れを癒すという。そんな有名な温泉と同じ成分なのだから,さぞかし効能があるに違いない。しかもこの日の金浦温泉は連休にもかかわらず,訪れる客も少なくのんびりとした雰囲気の温泉であった。いつまでもこの素朴さを失わずにいてもらいたいと願いつつ,大広間に寝っころがりながら本を読んでいた。温泉の入り口には,遅咲きの八重桜が満開だった。

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