12月5日 (日)  勝平得之

今年は勝平得之が生まれて100年になる。そこでというか、秋田ふるさと村の県立近代美術館で勝平得之の企画展が今日まで開催されていた。職場のO氏から、その招待券を2枚もらっていたので、今日妻を誘って横手まで行ってきた。勝平得之は秋田が生んだ版画家で、秋田の風景や農民の暮らしを描いたことで知られる。秋田市大町の赤レンガ郷土館に勝平得之の常設館があるので、特別珍しいわけではないが、近代美術館所蔵のものも併せて一堂に見られる機会はそうはないかもしれない。

勝平得之の版画の特徴は、その描写の精緻さにある。日常の風景が、実に丹念に細部にこだわって描かれている。それが、ボクが生まれ育った秋田の風景なのだから、どうしても熱心に眺めてしまう。そこに描かれているのは、農民の暮らしだったり、子どもたちの遊びだったり。はたまた、秋田の風景や祭りだったり。こうして見ると、得之は実に忠実な秋田の記録者だったことに気付く。歴史の一切片を忠実に切り取るようにして、記録者の目で描写しているのだ。得之の版画は、同時代の写真よりもはるかに見るものに訴える力をもっている。

振り返ってみるに、今の秋田に得之のような記録者はいるのだろうか。少し、不安になってきた。ボクには、絵心もなにもないけれど、せめて写真でも残しておきたい。得之の版画をみて、強くそう思うようになった。