東北の未来を拓く −地方分権と地域づくり−
  2004年6月26日(土)

 東北開発研究センターが主催する東北開発セミナーが秋田市で開催された。テーマは「東北の未来を拓く−地方分権と地域づくり−」だった。地方分権時代に不可欠となる住民と行政のパートナーシップによる「市民協働の地域づくり」をテーマに筑波大学大学院教授の岩崎美紀子氏による基調講演のあと、北東北広域連携推進協議会会長の賢木新悦氏をコーディネーターとしたパネルディスカッションが行われた。
 岩崎教授は先月も三位一体改革シンポジウムで秋田に来ているので2ヶ月連続の秋田入りということになる。岩崎教授は、講演のなかで地方分権の課題として、今後は地方自治体の自治能力が必要になってくることを強調されていた。その自治能力には大きく分けて2種類あって、一つが自治体職員のプロフェッショナルな能力として法務能力と企画・立案能力、二つめが住民との関係をよりオープンなものにすることとして情報公開だという。情報公開が能力といえるかどうかは疑問がないわけではないが、住民と同じ土俵で政策論議をする共通の基盤として徹底した情報公開が必要なことは論をまたない。私は、この中では法務能力が最も重要であると思う。少なくとも、行政のプロを自認するなら必須の条件が法務能力であるといった方が良いかもしれない。
 また、岩崎教授は新たな「公」という概念の必要性も強調していた。これは、たぶんイギリスに見られるパブリックと同じことかなと自分勝手に推測しながら話を聞いていたが、公の場面で市民協働の地域づくりが生まれてくるのだという。
 続いて行われたパネルディスカッションでは、大館まちづくり協議会の小棚木正之氏、北東北広域連携協議会委員でもあるたざわこ芸術村の小嶋えみ子氏、秋田県立大学教授の三品勉氏、講演に引き続いて参加の岩崎教授の4人がパネリストとなって、地域づくりの話がなされた。それぞれの体験をもとにどのようにして元気ある地域を作っていくかという話は、大いに共感を覚えるものだった。そして地域づくりの課題として、小棚木氏は人づくり、小嶋氏は地域への誇りをあげられていた。また、三品氏は、目的の目的は何かということをとことん探っていく目的展開という手法が、地域づくりには非常に有効であると話していた。そして、岩崎氏からは、自治体職員には、官と民の立場が共存している存在であることを忘れないでほしいという注文がだされた。もっと積極的に市民の一員としてアフターファイブに地域づくりに関わってほしい、市民のブリッジとしてその接点になってほしいという言葉がとても耳の痛い話だった。

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