地方分権・三位一体改革推進列島縦断シンポジウムin秋田
  2004年5月29日(土)

 「地方分権・三位一体改革推進列島縦断シンポジウムin秋田」というシンポジウムが秋田県立大学講堂で開催された。全国6箇所で開催されるリレーシンポジウムの一つなのだそうだ。今や闘う全国知事会の会長である梶原岐阜県知事がわざわざ秋田まで駆けつけて挨拶をしたほか、秋田県出身で東大総長の佐々木毅氏による基調講演のあと、「いま地方分権の時代〜真の地方自治の確立へ向けて〜」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションのコーディネーターはプロデューサーの残間里江子氏が務め、パネリストは地方分権推進会議委員や地方制度調査会委員などを歴任する筑波大学大学院教授の岩崎美紀子氏、青森県知事の三村申吾氏、岩手県知事の増田寛也氏、秋田県知事の寺田典城氏、秋田県議会議長の鈴木洋一氏という面々。このメンバーを見ると、私が担当した第3回北東北知事サミットを思い出す。あのときは、北東北3県の知事に加え、残間さん、佐々木毅さんらが加わり、たざわこ芸術村で情報と産業をテーマに語り合ってもらったのだった。あのときと比べると青森県知事が代わったが、新知事はとても面白い語り口調の人で、残間さんからも噺家のようですねと言われていた。挨拶に掛け付けてくれた梶原知事は以前に比べると痩せたようだ。確か御自身が前立腺がんに罹っていると告白されていたと思うが、全国知事会会長という激務に加え、病気の影響もあるのだろうか。ちょっと気になった。
 今回のシンポジウムにタイミングを合わせたかのように、昨日小泉首相から3兆円の税源移譲を発表されたので、今回のシンポジウムもその点に話題が集中した。玉は地方に投げられた。あとは地方がどう投げ返すかだとは増田知事。これから補助金削減のリストを出さなければいけないが、単にリストを出すだけでは予算折衝の話になってしまう。なぜその補助金は要らないのか、その出し方を慎重に検討しなければいけないとのこと。増田知事はここ数年の間で、すっかり知事会のブレーンになったようだ。また、佐々木教授が盛んに言っていたのが、システムの管理、プロセスのメンテナンスということ。地方分権が良いのは誰にも異論はない。ただ、どういう道筋で、どういう方向に、どんな手順でやるのかがまったく見えてこない。地方分権を実現するということは、この国の形をどうするかという話だから、その辺のプロセスをきちんとしておかないと実現には相当の困難を要するという。まさにその通りだと思う。
 国も地方も財政が疲弊しきっているいま、それを解決する方策は地方分権しかない。補助金業務をやめ、その財源を地方に移譲すればどれほどの人と金が浮くことか。おそらく国家公務員の半分以上は必要なくなるし、国会議員もしかりである。地方だって、自主財源になればその使い道もシビアになるし、議会の見る目もまったく違う。もう全国一律の基準でやる時代は終わったのである。住民に最も身近な自治体がその住民の身の丈にあった行政を住民と一緒に考えながら進める。これが本来の姿であり、理想とするところなのだ。わかっちゃいるけど、地方分権はなかなか進まない。寺田知事なんか、もう国の言う事なんて聞いてられない。良しとすることは地方が独断専行でどんどん変えていかないと、国なんか絶対に変わらないと話していたが、遅々として進まない地方分権へのいらだちが見え隠れしているようだった。
 一方で、住民がまったくこの議論に乗ってこないことに対して岩崎教授は、変わることへの不安と他と違うことへの不安があるためではないかと指摘していた。この不安を払拭しないと、住民を巻き込んで議論を進めるまでには至らないのかもしれない。ただ、増田知事は、最近の住民の期待感は確かに変わってきている、出来るだけ負担を少なくして満足感を高めて欲しいという欲求が高まっているという。このように時代が豊かになってくると、個々に満足感は違ってくるのだから、全国一律の行政をやるよりは、住民にもっとも身近な自治体が住民の声を聞きながら住民参加で行政を進める方が、はるかに満足感を高めることが出来る。このことを寺田知事は独特の表現で「豊かさの自由」と話していたが。
 いずれにせよ、今の時代の閉塞感を打ち破るのは地方分権しかないと思うし、この実現は国家の有り様を変える明治維新の大事業にも匹敵するくらいの一大事業なのだから、もっと広範な議論の展開が必要なのだと思う。そして、国がダメなら地方がリーダーシップを取りながら変えていかなければならないという思いを一層強くしたシンポジウムであった。

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