NO7 地方分権と知事会  1999年9月11日(土)

北海道東北地方企画調整主管課長会議が,北海道庁赤レンガ庁舎で開催された。この会議は,北海道東北地方知事会の議題を討議するために,毎年持ち回りで開催される。今年の当番が北海道で,会議の場所が赤レンガ庁舎という訳だ。

赤レンガ庁舎は,札幌観光の名所になっていて,観光客も沢山居たが,そんな場所でもしっかりと執務場所として利用しているのはすごいことだ。会議室は天井が高く,重厚な造りで,本当に明治の建物は素晴らしいと思った。現代建築のうち,いくつがこうして後世に残せるだろうか。特長のない,無機質な建物ばかりではなく,とことんデザインにこだわった,贅沢な造りの建物があっても悪くはない。

知事会の議題は,これまでは予算獲得のための国への要望が中心に議論されていた。北海道東北地方が統一して,国に制度や予算を要望する事項を決議して,国に対して統一行動を起こすという図式である。相も変わらぬおねだり型の知事会のあり方を変えようというのが,今回の会議の主要議題であった。

今年6月に地方分権一括法案が成立した。これまでの中央集権の世の中から,地方分権に行政の仕組みを変えていこうという試みである。中央集権は,明治維新以来,一貫して貫かれた制度であり,確かにこれまでのように欧米に追いつき,追い越せをスローガンとして経済成長や所得の向上だけを目標にしていた時代ならば,最適の仕組みであっただろう。ただ,現代のように,人々の暮らしが豊かになり,価値観も多様化しているときに,全国一律に物事を進めていくのは,様々な面で弊害が出てきている。住民に密着した地方自治体が,住民の意向を汲み上げて制度を考えていく方が,余程,合理的で無駄のない社会なのだ。今,先進国の中で中央集権制で行政が動いているのは,日本だけである。

地方自治体の意識も,これまで国ばかりに目を向けていたのが,住民に近いところに目線が降りてくる。地方分権の顕著な例は,道路の問題で言い表せる。道路行政は建設省の所管だが,農水省では農道を,林野庁では林道を,運輸省では港湾道路を作っていた。国道よりも立派な農道が各地に作られ,二重投資の弊害をかねてから指摘されていた。これが,道路はすべて地方自治体が作るということにすればどうだろう。絶対に二重投資なんて問題は起こらない。国の役割は,外交だとか,防衛,司法などごく限られた分野に限定すべきで,基本的に住民に身近な行政は,自治体が自らの責任で行うのが正しい選択なのである。

こうした,時代潮流を受けて,知事会も,これまでのように国の予算獲得のための陳情ばかりやっているようではだめで,地方が抱える課題を知事同士が議論し合い,知事会として政策を提言するというスタイルにしなければ,地方分権の意義を損ねてしまう。地方分権というと,そんなの絶対無理だ,国がそんなに簡単に権限を委譲するわけないじゃないかと思っている人も多いだろう。しかし,時代は確実に変わっている。その流れを読み取れない人間は,時代から取り残されるばかりである。それに,いつまでも,国の補助金ばかり当てにして,乞食根性まるだしなんて,そんなみっともないこと,私の美意識からして耐えられない。(写真は北大植物園)

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