ランプの宿 青荷温泉

(平成13年9月29日〜30日)

 青森,岩手,秋田の北東北3県は,平成9年に開始された「北東北知事サミット」を契機に広域連携が活発に行われている。その知事サミットの合意事項から生まれた「北東北広域連携構想」の策定担当者を中心メンバーとして,3県の行政マンが定期的な集まりを持っている。仕事を通じて生まれた他県との人的交流が仕事を離れてからも続いているというのはめずらしいことで,新たに意欲あるメンバーや民間人も加えてその輪はどんどん広がっている。
 今回は,青森県黒石市にある青荷温泉に3県から30人余りが集まった。青荷温泉はランプの宿として全国的に有名で,予約を取るのも難しいらしい。この日も100人余りの宿泊客で賑わっていた。こういう宿に泊まれるのも,この会に入っているメリットだ。


青荷温泉と吊橋

 広くまとまった敷地がとれないためだろう,宿は点々と離れた場所にいくつも建っていて,敷地内には川が流れている。テレビもなければラジオもない。ただ川のせせらぎの音だけが聞こえてくる。我々が宿泊する宿は,一旦フロントのある本館から出て吊橋を渡っていくのだった。


青荷温泉の宿

 建物の間近まで山が迫っている。そばには滝もあった。建物の外見は古く,屋根も茅葺だが,中は木の香りがプーンと漂い,新築の香りがした。きっと中は改装したのだろう。通路にもランプの灯りが灯っている。


ランプの灯り

 四方を険しい山々に囲まれているため,室内は日中からほの暗い。2時から講演と討議を行ったのだが,書類の文字が見えないので3時過ぎにはランプに火を入れてもらった。また,9月だというのに底冷えする寒さで,ストーブにも火を入れてもらった。この宿では1日,150個のランプを使うのだという。ランプの灯りというのは,思いの外暗いものだ。明るさを調整するため火を強くしたら,ランプのガラスが割れてしまい,思いっきり宿の人に叱られた。
 当然のことながら,宴会場となった大広間もランプの灯りだけで,せっかくの料理がよく見えない。宿の人が,津軽弁で面白おかしく1品1品の説明をしてくれた。キノコや山菜,川魚,かも肉など地元の山の幸が盛り沢山だった。変にマグロの刺身のような海のものがないのが潔くていい。ただ,確かに美味しい料理なのだが,料理というのは目で味わう部分も大きいものだと実感した。


露天風呂

 宿には4つの温泉がある。うち2つが男女混浴で,この露天風呂も混浴だった。しかし,ランプの灯りだけのため,夜になると暗くて男か女か良くわからない。そこがまたいいのかもしれない。それに,ランプの灯りと温泉の湯気は良くマッチし,幻想的な雰囲気を醸し出してくれる。室内に電気がないのは不便だが,温泉にはランプが似合っている。


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