金沢散歩

2006年11月18日〜19日
 自治大時代の政策課題グループ同窓会が、金沢市で行われることになった。今回は、妻と娘2人とともに家族旅行を兼ねて出掛けることとした。金沢を訪れるのは、やはり自治大の2階フロア同窓会が行われた1999年以来、7年ぶりのことである。
 秋田から金沢へ行くには、寝台特急日本海を利用するのがもっとも便利である。今回も17日の金曜日、仕事を終えてから妻と一緒に日本海4号に乗り込んだ。金沢駅に到着したのが、翌18日の午前6時16分。まだ、朝早いのに、金沢駅は多くの観光客と、それを出迎える大型バスで溢れかえっていた。恐るべし、観光都市金沢の実力。
※写真をクリックすると大きな写真(600×450pix)になります。
金沢駅 尾崎神社(重要文化財)
 金沢駅は7年前に訪れたときとは、すっかり様変わりしていた。透明なドーム型の建物は、「もてなしドーム」と呼ばれるもので、雨傘をイメージして作られたそうだ。また、正面にある木造の大きなモニュメントは、鼓をイメージした「鼓門」。伝統芸能が盛んな金沢を象徴する建物である。
 今夜宿泊するホテルキャッスルイン金沢に荷物を預けて、埼玉から来る娘たちと合流するまでの間、夫婦で市内散策に出掛けることにした。最初に向かったのは、金沢市民の台所、近江町市場。今月解禁となったばかりのズワイガニが市場内の各店舗で売られている。石川県の港に水揚げされたカニは、足に青いタグが付けられていて、すぐ見分けられるようになっていた。早速、石川県産のズワイガニ(加能ガニ)を買い求めて、カニ好きな両親に宅配してもらうことにした。
 次に訪れたのは、赤い朱塗りの門が目立つ尾崎神社。ここは、四代藩主光高が家康公を祀って建てたもので、北陸の東照宮と呼ばれているそうだ。
尾山神社(三層楼門・重要文化財) 尾山神社(本殿)
 尾山神社は、五色に彩られたギヤマンが象徴的な和漢洋折衷のエキゾチックな三層楼門と、重厚な造りの瓦屋根が印象的な本殿が好対象をなしている。境内には歴代藩主を祀った社もあるが、朝が早いせいか訪れる人もまばらであった。また、NHK大河ドラマ「利家とまつ」放映記念に作られた前田利家やまつの像なども境内にある。
尾山神社東門 兼六園 ことじ燈籠
 尾山神社東門は、金沢城二の丸門から移築されたもの。両唐破風造りで、上部に施された彫刻が見事である。
 特別名勝兼六園は、水戸の偕楽園、岡山の後楽園とともに、日本三名園と並び称される金沢を代表する観光名所。「兼六園」の名は、宋代の「洛陽名園記」に由来し、壮大、幽邃、人力、蒼古、水泉、眺望の六つを兼ね備える名園として、時の老中、松平定信が命名したとされる。
兼六園 雪吊り 兼六園 根上りの松
 園内の植木には、ちょうど雪吊りが施されていた。秋田の公園でも、同じような雪吊りが施されるが、兼六園はこれだけで観光客が呼べる芸術的なものである。また、園内の中央に位置する巨大な「根上りの松」には、目を見張らされる。
成巽閣(重要文化財)
 成巽閣(せいそんかく)は、13代藩主斉泰が母、真竜院の居宅として建立したもので、一つの建物に書院様式と数奇屋風書院造りが混在する珍しい建物。内部は、藩家の格式高い調度品や華麗な装飾空間が一杯で、見所満載である。
金沢城石川門(重要文化財) 金沢市街(北国新聞社)
 兼六園と陸橋で結ばれる金沢城石川門。金沢城は、加賀百万石前田氏の居城だったところだが、平成6年までこの城内に金沢大学のキャンパスが置かれていたという。今回の同窓会を主宰した金沢市役所勤務の二宮さんも、この城内のキャンパスに通ったそうだ。
 尾山神社の近くには、近代的な高層ビル「北国(ほっこく)新聞社」がある。歴史的な町並みと近代的なビルが、程よく混在していて好ましい。
石川近代文学館
 中央公園内の一画に位置する「石川近代文学館」は、旧制四高の校舎をそのまま使った美しい赤レンガの建物で、石川を代表する近代の三文豪(室生犀星、泉鏡花、徳田秋聲)を始めとして、石川県ゆかりの作家の著書や生原稿、遺品を展示している。旧制四高時代の展示物もあって、なかなか興味深い。
金沢21世紀美術館 「割烹いしみ」前で女将と記念写真
 金沢市役所に隣接する金沢21世紀美術館は、新しい金沢の観光名所。「まちに開かれた公園のような美術館」を基本コンセプトとして、誰もがいつでも立ち寄ることができ、様々な出会いや体験の「場」となるような、公園のような美術館を目指しているそうだ。「気軽さ」「楽しさ」「使いやすさ」がキーワードの美術館らしからぬ美術館である。建築学科に在籍する娘が一番見たかった場所がこの美術館で、午後一杯ここで時間を費やした。
 今夜の会合は、長町の「割烹いしみ」。待ち合わせ場所の21世紀美術館からは、歩いて10分ほどの場所である。今年、3月に秋田県乳頭温泉郷の蟹場温泉で会って以来、半年ぶりの再会である。残念ながら、指導教官だった宮嶋先生は帯状疱疹に罹患し、体調を崩されたため欠席だった。金沢の郷土料理や地酒を嗜みながらの会合は楽しいものだった。しかしながら、前日からの夜行列車と一日歩き通しの観光の疲れもあって、早々と睡魔に襲われてしまった。2次会は遠慮して、駅前のホテルに帰着した。
ひがし茶屋街
 翌日は、市内観光バスを利用して、家族4人で市内観光をした。昨日訪れた、尾山神社や兼六園なども含まれていたが、他に卯辰山、金箔工芸館、藩家老蔵品館などを見学した。
 卯辰山山麓を流れる浅野川の川岸に残る「ひがし茶屋街」は、キムスコ(木虫籠)と呼ばれる美しい出格子の家々が並ぶ昔ながらの街並みである。茶屋街というから遊郭や芸者町だったはずだが、今はおしゃれなお土産屋さんや喫茶店などに利活用されている。重要伝統的建造物群保存地区に指定され、「街並みの文化財」として保存・活用が図られている。
長町武家屋敷跡
 金沢観光最後の場所が、長町の武家屋敷跡である。旧藩士の住まいがあった武家屋敷跡は、今もそのまま土塀と石畳の家並みが続く住宅街となっている。このような通りが、そのまま残されていることが金沢の素晴らしさである。
 このあと、埼玉に帰る娘たちとは金沢駅で別れて、再び寝台特急日本海1号で帰路についた。往復寝台を利用するという、とてもハードな旅ではあったが、金沢の奥深さにふれることができた思い出深い旅であった。また、金沢に来なければいけないという思いが一層強くなったように思う。
旅の空から目次