蔵のまち小江戸川越

2006年12月31日
 現在、観光課の仕事で「歴史再生・古民家維持」ワーキングというのを民間の人たちと一緒にやっている。秋田県内に残る歴史遺産や歴史的建造物、古民家などを活用して、観光などのビジネスに活かしていこうという取組みだが、横手市増田地区に数多く残る内蔵をターゲットの一つにして、今後活動しようとしているところである。
 蔵を観光やビジネスに活用した事例は全国にも数多い。小江戸と呼ばれる埼玉県川越市もその一つである。そこで、妻の実家からも近い川越を、年末年始の帰省の合間を縫って訪れてみた。
 川越は、大宮から埼京線で20分ほどの場所に位置する。また、池袋からは東武東上線、新宿からは西武新宿線で直通しており、都心からも交通の便がよい。そのため、年間の観光客が500万人にも達するという。外国人観光客もとても多い場所だ。
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大正浪漫通り
 JR川越駅からクレアモールと呼ばれる商店街を歩く。約1キロにわたって歩行者専用道路の両側に商店が並ぶクレアモール。「この感じ、どこか鎌倉に似てないか」と妻に話しかけたら、「鎌倉のようにおしゃれな店がない」と反論された。それでも、雰囲気はよく似ている。クレアモールは、大正時代の雰囲気を伝える「大正浪漫通り」へとつながっていく。ここにも蔵造りの店や、モダンな建物が並んでいる。
蔵の町並み 亀屋
 大正浪漫通りを過ぎると、蔵の町並みが残る一番街へ出る。町の4割の家屋が消失した明治26年の川越大火。そのとき、焼け野原に残った土蔵造りの家をみて、商人たちが競って耐火性に優れた土蔵造りを家を造った。それが、今も残っている蔵の町並みだ。ここでは、蔵が単なる倉庫としてではなく、店舗として活用され、付加価値を生んでいる。惜しむらくは市街のメインストリートにあるせいか、車の往来が激しいのが玉に瑕である。通りの両側に蔵の町並みが続くのだから、もっと気軽にそぞろ歩きができる工夫がほしいものだ。
大沢家住宅(重要文化財) 時の鐘
 明治26年の川越大火の際、この通りで唯一焼け残った家屋が「大沢家住宅」。寛政4年(1792年)に建築されたこの家屋は、間口六間、奥行き4間と当時の町屋としては広く、国の重要文化財に指定されている。
 TVコマーシャルにも使われ、川越のシンボル的存在が「時の鐘」。櫓の高さは奈良の大仏と同じだという。以前は火の見櫓としても使われていたそうだ。4代目にあたる現在の「時の鐘」は、今も1日4回(午前6時、正午、午後3時、午後6時)、市民に時を知らせている。その音は、平成8年環境庁の「残したい日本の音風景百選」にも選ばれた。
川越高校の楠の木 川越城本丸御殿
 蔵の町並みから、川越城本丸御殿に行く途中、県立川越高校の正門前を通った。3階建ての校舎をはるかにしのぐ大きなクスノキが、一際目を引く。ここには、男子シンクロ部があるとかで、あの人気映画「ウォーターボーイズ」のモデルになった学校だそうだ。
 川越城は、関東管領の扇谷上杉持朝が古河公方(足利氏)に対抗するため、家臣の太田道真・道灌親子に命じて造らせたもの。江戸時代は、幕府重臣の大名が配置された。元々平城で天守閣のない城だったが、明治になって解体された。現在は、嘉永元年(1848年)建造の本丸御殿の玄関と大広間が残り、往時を偲ぶことができる。今年(2007年)は、川越城築城550年の記念の年にあたる。
三芳野神社 「わらべ唄発祥の所」の碑
 川越城の隣に位置するのが三芳野神社。地元の人からは、天神様と呼ばれているそうだ。ここは、童謡「通りゃんせ」のモデルになった神社だそうで、境内には「わらべ唄発祥の所」の碑が建てられていた。神社に向かう細い参道が、それらしく見えてくる。また、ここの神社はノラ猫がとても多かった。
 「通りゃんせ、通りゃんせ。ここはどこの細道じゃ。天神様の細道じゃ。ちょっと通してくだしゃんせ。行きはよいよい、帰りはこわい。こわいながらも通りゃんせ、通りゃんせ」
喜多院山門(重要文化財) 仙波東照宮の前にあった建物
 川越でもっとも有名な寺院が川越大師とも呼ばれる「喜多院」である。徳川家康と深い親交があった天海大僧正のころから大いに栄えたという。寛永15年(1638年)の火災で境内の建物はほぼ全焼したが、唯一焼け残ったのが現在も残る山門で、国の重要文化財に指定されている。また、火災後に江戸城内の家光誕生の間や、春日の局化粧の間などが、喜多院の書院や客殿として移築され、それが現在も保存され公開されている。それだけ、徳川将軍家と深いつながりのあるお寺というわけだ。
 妻から、「これが東照宮だよ」と言われて撮影した建物。朱塗りで、ケバケバしい装飾は、いかにもそれらしく見えたのだが、どうも違う建物を撮影してしまったようだ。もう一度見に行かなければならない。
 今回は、年末だったため、すべての施設が休館中だったのは残念だった。また、訪れた後に、龍神由美さん著の「瓦版 川越今昔ものかたり」(全3巻、幹書房)という本を読んだ。川越の歴史が詳しく解説されていて、再訪の意を強くしているところである。
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