酒田散歩

(平成15年2月25日)


 娘の受験に付き添って本荘まで行ったのだが、娘が受験している間、こちらはやることがないので、酒田まで足を伸ばしてみることにした。酒田は、本荘からだと車で1時間半ほどの距離である。


十六羅漢十六羅漢

 酒田の手前、秋田との県境に遊佐町がある。ここには「東北泉」という美味しい地酒があるのだが、それは帰路の楽しみにとっておくこととする。ここはまた、日本海に突き出た奇岩を巧みに利用して仏像が刻まれた十六羅漢と呼ばれる名所がある。この仏像は、元治元年から明治初年にかけて、地元の僧侶石川寛海和尚が刻んだものだそうで、風浪に晒されながら140年の歳月を経た今もなお、しっかりとその姿を拝むことができ、見るものを敬虔な気持ちにさせてくれる。


山居倉庫山居倉庫

 酒田といえば「山居(さんきょ)倉庫」というくらい有名な場所。この山居倉庫は明治26年、旧藩主酒井家によって建てられた米保管庫で、庄内米の積出港として賑わった酒田の歴史を今に伝える貴重な建物である。NHK朝の連続テレビ小説「おしん」の撮影場所にもなったことで、全国的に知られるようになった。
 白壁・土蔵造りで11棟からなり、米の収容能力は13000トン。今なお現役のJA全農庄内の農業倉庫として活躍中である。三角屋根と白壁がマッチしてとても美しい。


山居倉庫の荷上場山居倉庫の荷上場

 ここから、倉庫に運び込まれた米が船に積み込まれた。右の蔦にからまる建物と後ろに並ぶ山居倉庫の配置がまたいい。


山居倉庫裏のケヤキ並木山居倉庫裏のケヤキ並木

 山居倉庫の後ろにはケヤキ並木が配置されている。これは、夏の西日をさえぎり、倉庫内の温度を低温に保つために工夫されたもので、冬には西から吹き込む風除けにもなっている。しかし、それだけにとどまらず、景観としても優れている。機能的に優れたものは、景観としての美しさにもつながるものなのだ。


本間家旧本邸本間家旧本邸

 「本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に」と、その栄華をうたわれた酒田の豪商、本間家。その旧本邸は、二千石旗本の格式を備えた長屋門構えの武家屋敷で、奥が商家造りとなっている。二つの建築様式が一体となっているものは極めてめずらしく、全国的にも例を見ないものだという。
 本間家は、3代光丘のときに、千石船(北前船)による商いを始める一方で、農業振興のための土地改良や水利事業、砂防林の植林などに力を注いだ。また、庄内藩主酒井家の信望があつく、藩財政の相談にのるなど酒田のみならず庄内地方全域の発展に大きく寄与した。
 3月から雛人形展が開催されるというが、この日はお土産用に小さな雛人形が販売展示されていた。つい、OBAKOさんの家でみた、雛人形を思い出して、じっくりと鑑賞してしまった。


観光案内標識

 山居倉庫から本間家旧本邸まで歩いていくと、道の辻々にこのような案内標識が設置されている。また、道路も車道と分離された歩道にはなっていないのだが、歩く部分にカラータイルが埋め込まれてあり、そこを歩いていけば、迷わずに目的地まで辿り着けるという按配で、まことに親切である。観光地はかくあるべきと思った。


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