平成28年度 第28回定例会
「藤里ラウンド」

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開催日:平成28年7月9日(土)〜10日(日)
場所:秋田県藤里町「ゆとりあ藤里」
参加者名簿  
 世界自然遺産白神山地のお膝元、秋田県藤里町で「福祉でまちづくり」を実践しているお二人を講師に迎えて定例会を行いました。今回は、青森県社会福祉協議会や岩手県釜石市鵜住居地区民生児童委員協議会などから多数の参加者を得て、過去最高の61名の参加者が集まりました。
【講話1】  「自死予防はまちづくり」
 藤里町曹洞宗月宗寺
          住職 袴田 俊英 氏


 まず始めに、藤里町で自殺予防の取組みを続けている「心といのちを考える会」会長で、月宗寺住職の袴田さんから話を伺いました。

会の活動として、まず住民が気軽に立ち寄って語り合う場のコーヒーサロン「よってたもれ」を開設。その後、男性の自殺者が増えてきたことから、男性向けに夜の赤提灯サロン「よってたもれ」も開設した。

自死、過疎、孤独死、すべて根っこは同じ。話し、話せる相手がいることがとても大事なこと。会話をする、このつながりを、地域のつながりとして結び付けていくことを、現在模索している段階である。農業が機械化され、従来あった「結い」の仲間がいなくなったことで社会が大きく変化した。何でも経済優先の「お金中心の世界」が、人と人のつながりを希薄化させた。

秋田県は、平成25年まで19年連続で自殺率が全国一だった。この間、秋田県内では様々な活動を展開された。平成10年には、秋田いのちの電話が開設。県医師会では、かかりつけ医の啓発等をスタートさせる。平成12年から、行政、民間(蜘蛛の糸、なまはげの会など)、秋田大学などが協力して自殺予防対策を実施。平成15年に県内81機関でふきのとうホットラインという県民運動を展開。平成22年には、101の個人・団体による県民運動に発展。これらの活動によって、秋田県の自殺率は大きく減少した。自殺は個人の問題ではなく、社会問題であるという認識が広く浸透し、国でも自殺対策基本法が制定された。

自殺予防の基本は、困っている人、悩んでいる人に手を差し伸べ、親身になって相手の相談を聴くこと。これは総合的な人間対策であり、人間力を養うことでもある。袴田さんは、「プロフェッショナル」というテレビ番組に出演したことがあるが、相談員はプロフェッショナルでは駄目だと言う。とても意味深い言葉だと思う。

また、これからの自殺予防活動の一つにゲートキーパー養成を挙げる。地域から排除されていた人たちが、まちの中で安心して誰かと触れ合えることがコミュニティの形成の大事な視点であり、ゲートキーパーの考え方もまさにそこにある。大変な人に気づいたら自分の時間をちょっとだけ使い、必要な支援につなげる役になってもらう。それがまちづくりの基本を作っていくことになるはず。

社会的弱者に地域がどう関われるかが、自殺予防だけでなくまちづくりの基本的な考え方である。
【講話2】  「地域福祉の可能性」
 藤里町社会福祉協議会
        会長 菊池 まゆみ 氏


 続いて、ひきこもりの若者の活動拠点として「こみっと」を立ち上げ、ひきこもりの若者支援を行って、全国的に注目を浴びている藤里町社会福祉協議会の菊池会長から話を伺いました。

福祉は、対象者を明確にする必要があったから
「ひきこもり者及び長期不就労者及び在宅障害者支援事業」という事業名になったが、この「等」に込められた思いがすべてである。

原点は、一人の不幸も見逃さない運動として行ったネットワーク活動事業である。しかしながら、福祉の対象者を明確にしなければならないという弊害があった。そこで、クビになる前になんでもしてやろうと思い、地域福祉トータルケア推進事業へ転換して、「福祉による地域活性化」ではなく「福祉でまちづくり」を目指した。

福祉ニーズには、行政等によるフォーマルサポートだけではなく、福祉対象者をも含む住民全員によるインフォーマルサポートとの両面から支援を行う。支援されるだけではなく、支援する側にもなる。参画の仕方はいろいろある。みんなでやればいろんなことができるという思いがこの事業につながった。

一度駄目でも、何回でもチャレンジできる仕組みが欲しかった。制度と制度の間に落ちてしまった人が、そこから飛べる翼事業といった国の役人がいた。伴奏型支援。こみっとはそんな思いから生まれた事業である。でも国の事業は、生活困窮者自立支援なんて名前になってしまった。これも、予算獲得の苦労なんでしょうね。

ずっと引きこもっている。この「ずっと」の尺度は人によって違う。所属するものがない人への支援が必要。よく言われる「地方創生」という言葉のイメージは、100%頑張れる人をイメージした言葉である。なんらかの支援が必要な人には、「地方創生」は遠く感じる。そこで、福祉の立場からの「地方創生」を考え、町民すべてが生涯現役を目指せるシステムづくりを急ピッチで始めている。過疎化・高齢化が進む藤里町を支える「人づくり事業」、町民全員参加の主産業をつくる「仕事づくり事業」、若者が住みやすい町をつくる「若者支援事業」。これらの事業を、分野の垣根を越えて、町民全てが生涯現役を目指せるシステムづくり事業として、総務省の補助金の交付を受けて実施することとしている。

これらを、町の社会福祉協議会が主体となって行うという。藤里町社会福祉協議会は、とてつもなくすごい組織なのです。

 翌日は、秋田白神ガイドの小森久博さんの案内で、白神山地を堪能しました。あいにくの天気でしたが、小森さんの丁寧なガイドを聞きながら、美しい風景に出会えて、一同大満足でした。
今回の参加者名簿
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