出雲路をゆく

(平成14年3月15日〜16日)

出雲路をゆく1(石見神楽〜松江城〜堀川遊覧〜小泉八雲旧居)
出雲路をゆく2(出雲大社)

 「健康日本21」という、国民健康づくり計画を御存知だろうか。すべての国民が健康で元気に長生きしようという計画である。早い話が、みんなが寝たきりや介護状態にならずに、元気なまま長生きしてポックリ逝きましょうということ。そうすれば、医療費や介護費などの社会負担も軽くてすむ。これからは、若者が少なくなる社会だから、少しでも老人にかかる負担を軽減しないと、国そのものがダメになってしまう。単純に言えば、そんな図式で作られた計画である。
 そして、少しでも多くの人に、この計画を知ってもらおうと、昨年から全国大会が開催されている。1回目は東京都で開催されたが、今年から全国各地で持ち回りの開催となった。そのトップバッターが島根県。事前に秋田県には何の打診もなかったところを見ると、直接国からの島根県への指名だったのだろう。 


石見神楽「おろち」石見神楽「おろち」

 大会は、松江市内の「くにびきメッセ」で開催された。一通り、健康をテーマにした講演会やらシンポジウムなどのお決まりのメニューを行った後、最後のアトラクションとして披露されたのが、石見神楽であった。島根県西部の石見地方は神話を題材にした神楽が盛んで、例祭などの神社の神事のほか、観光客向けにも常設で演じられているらしい。この日の出し物は、やまたのおろち伝説を題材にした「おろち」。4匹のおろちが絡み合い、火を吹きあうなど、ものすごい迫力で、見るものを圧倒する。最後に、スサノオノミコトがおろちを退治したときには、思わず会場から大きな拍手が巻き起こった。これはすごい。必見の価値ありである。
 見ながら、もし秋田で大会をやるとすれば、これに匹敵するような出し物があるだろうかと考えた。竿燈?なまはげ?何か今一つピンとこない。そんな思いで会場をあとにした。


松江城松江城

 大会の翌日、帰りの飛行機までの時間を利用して、松江市内と出雲大社を観光することにした。朝8時にホテルを出発。松江駅前からバスで松江城に向かう。松江城は慶長16年(1611)に堀尾吉晴によって築城された。ここの天守閣は山陰地方に現存する唯一のもので、姫路城につぐ日本で2番目の大きさだ。明治になって、城内のすべての建物が取り壊しの憂き目にあったが、この天守閣だけは、住民の強い要望により、取り壊しを免れたのだという。今は国の重要文化財に指定されている。ちなみに、戦前は国宝に指定されていたというから、この辺の文化財指定の基準はどうもわからない。
 入口で靴を脱いで下足箱に預ける。外から見ると5層だが、内部は6階建てになっており、急な階段を登り最上層から眺める松江市内の眺望がとてもよい。特に、淡く霞みたった宍道湖の遠望は何とも言えぬ素晴らしさだ。


堀川遊覧堀川めぐり遊覧

 松江は水の都だという。そのためか、城の周りや市内をぐるっと小舟でめぐることができる。一周約50分のコースだが、この日は時間の関係で乗ることは出来なかった。偶然、城から小泉八雲記念館に向かう途中、その遊覧船に出会うことが出来た。カメラを向けると、向こうもこちらに気付いたようで、手を振って返してきた。若い女性のグループだった。 


小泉八雲旧居小泉八雲旧居

 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)というと、すぐに松江を思い浮かべるが、実は松江に住んでいたのは、1年余りの期間に過ぎなかったのだ。松江の寒さとあまりの窮乏生活のため、職を求めて熊本に移転している。しかし、松江では生涯の伴侶となる小泉セツと出会い結婚しているし、数多くの作品も松江時代がなければ書き得なかったものだろう。やはり小泉八雲は松江なのである。
 八雲が松江時代に住んでいた旧居の家賃が3円。熊本で得た五高教諭の月棒が200円だったという。感覚的にみて家賃がとても安い。それでも窮乏生活を送らざるを得なかったということは、松江での給与がいかほどのものだったのだろう。
 ここから、ぐるっと松江レイクラインというワンコイン(100円)バスに乗って、松江温泉駅に向かう。このワンコインバスは、市内の主要観光スポットを周遊しており、どこで乗り降りしても1回100円。1日乗り放題で500円という優れもの。定期バスの最低運賃が150円ということを考えれば、一般の利用客も多いに違いない。松江温泉駅からは私鉄に乗って約1時間で出雲大社へ行ける。出雲大社は次のページで。

出雲路をゆく2(出雲大社)へと続く


出雲路をゆく1(石見神楽〜松江城〜堀川遊覧〜小泉八雲旧居)
出雲路をゆく2(出雲大社)

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