古都鎌倉を歩く

(平成14年1月19日)

散歩1(北鎌倉駅〜円覚寺〜東慶寺)
散歩2(浄智寺〜建長寺〜鶴岡八幡宮〜頼朝の墓)
散歩3(鎌倉宮〜瑞泉寺〜国宝館〜牡丹庭園〜鎌倉駅)
円覚寺三門

 12月のダイヤ改正で鎌倉行きが便利になった。新宿や埼玉方面から乗り換えなしで行けるようになったのだ。また、秋田から往復割引の東京フリー切符を利用すると、鎌倉はフリー区間に入っている。東京で、もし一日自由な時間が持てたら、古都鎌倉の名所・旧跡を見て回るのはどうだろう。
 朝10時過ぎに電車は北鎌倉駅に到着した。天気が良かったせいだろう。冬なのに大勢の観光客が電車から降りた。北鎌倉駅の目の前に見えるのが鎌倉五山第二位に列せられた古刹円覚寺。臨済宗円覚寺派の大本山である。開基は鎌倉幕府8代執権北条時宗。宋から無学祖元を開山に迎え、1282年に建立された。2度にわたる蒙古襲来で戦没した敵味方の霊を慰めるために創建されたのだという。 
 「山門を入ると、左右には大きな杉があって、高く空を遮っているために、路が急に暗くなった。その陰気な空気に触れた時、宗助は世の中と寺の中との区別を急に覚った。静かな境内の入口に立った彼は、始めて風邪を意識する場合に似た一種の寒気を催した。」
 夏目漱石の「門」の一節である。三門の周囲の鬱蒼とした杉木立は俗世間とは違う雰囲気を漂わせて、そこに居るだけでキリリとした荘厳な気分になってくる。


円覚寺選仏場

 仏殿の脇に綺麗な姿を見せる選仏場は、1699年に僧堂兼経堂として建立され、現在は修練道場として使用されている。青空に方丈の茅葺が美しい。選仏場前の白梅は、暖かな陽射しを受け、すでにほころび始めていた。
 さらに、奥に進み、国宝舎利殿がある一撃亭に向かう。舎利殿は一般公開されていないので拝観出来なかったが、一撃亭の門外から手を合わせることにした。


東慶寺本堂

  続いて、円覚寺から歩いて5分ちょっとのところにある東慶寺へと向かう。この寺は、不幸な結婚に悩む女性の駆け込み寺、別名「縁切り寺」として有名である。妻側からの離縁請求が許されなかった江戸時代、女たちはこの寺に救いを求め、この寺に駆け込んだ。妻に寺に駆け込まれると、夫はやむなく離縁状をしたためて離縁を承知せざるを得なかったという。その離縁状は3行半で書かれることが多かったので、離縁状を三下り半というようになった。結婚前に、妻と初めて訪れたとき、「これで縁切りになるなんてことないわよね。」と言ったことが思い出される。もう20年以上も前の話だ。 


東慶寺の蝋梅

 東慶寺は、「水月観音半跏像」が有名である。岩座の上にゆるやかに腰をかけ、水に映る月を眺めているところから「水月観音」の名で親しまれているが、若い女性の柔和で優しげな面差しの像は、見る人を幸せな気分にさせてくれる。拝観するには予約が必要なので、行く前に電話予約をすればいいだろう。
 また、外には黄色く色付いた蝋梅が綺麗に咲いていた。蝋梅の匂いは辺り一帯に漂い、訪れた老女たちを興奮させていた。匂いの元に何かあるのだろうか。

散歩2(浄智寺〜建長寺〜鶴岡八幡宮〜頼朝の墓)へと続く


散歩1(北鎌倉駅〜円覚寺〜東慶寺)
散歩2(浄智寺〜建長寺〜鶴岡八幡宮〜頼朝の墓)
散歩3(鎌倉宮〜瑞泉寺〜国宝館〜牡丹庭園〜鎌倉駅)

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