RUMIKOの読書日記

2017年
カウンター設置 2003/02/11

 

12月6日(水)

「プラージュ」 誉田哲也 幻冬舎文庫 ¥690+税
WOWOWで即ドラマ化されたので文庫化された時には主役の星野源ちゃん以下の出演者達が帯に写真で出ていたので役にあてはめながら読了。男子はスムーズにはまっていったが美羽ちゃんと紫織ちゃんは取り違えて読んでた。メンバーの一人の最後の告白でラストの大団円を迎えるのだがドラマとしてもすごく良くまとまるんじゃないかと思える上出来の一冊。


「東北学/もうひとつの東北」 赤坂憲雄 講談社学術文庫 ¥960+税
稲作文化圏としての視点で日本の民俗史を捉えた柳田国男とは違った焼畑、狩猟などの山の暮らしから東北を掘り下げる。新聞のおすすめ文庫として購入。帯に『フロンティア』という言葉を使って「辺境(フロンティア)は最前線(フロンティア)となる」というキャッチがうまくて購入、という点も。まさしくこれからの東北がこうなるであろうことに期待したい。
p169、芭蕉の歌のロマン性により元からあった東北の風景を再発見できたこと、p176悪路王とも言われたエミシの英雄阿弖流為への鎮魂の舞『原体剣舞』を一遍の詩に詠んだ宮沢賢治の詩「原体剣舞連」に描かれる世界に言及し、p220では柳田国男の民俗学への考え「フォークロアの学問ほど人間味の豊かな学問はない」という思いにはそれぞれ共感を覚える。p250で著者は言う。「故郷を離れた者と、故郷に留まった者とが共通の課題として引き受けるべきことがあるとしたら、それはいったい何か。(中略)伝統的な知恵や技術や世界観のなかに、未来を照らし出す手掛かりが埋もれている可能性はないだろうか。」これは今まさに各県が取り組んでいる地域おこし協力隊的な移住の試みなのではないかと思う。彼らの地域と年を結ぶ力を生かすも殺すも地域の能力でもあると思う。

11月15日(水)

「豆の上で眠る」 湊かなえ 新潮文庫 ¥590+税
うーん、やっぱり湊さんのミステリーはソフトな落としどころだなぁ、と思いながら読了。行方不明になってから戻った姉は本物か?という疑問を抱きながら成長してゆく妹の視点で描かれてゆく。身代金の請求がない、と言う時点で思っていた通りのラストだったが、題名から来る「かすかな違和感」がどんぴしゃ。心の中を丁寧に描く、と言う点では湊さんならではの出来映えである。


「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎 幻冬舎文庫 ¥600+税
京都に市中に入る前伊丹からのモノレールの車中で読み始め。読む前にどうしてもハミングしてしまった名曲のさわり。そのテンポに乗るようにやはりなじめる伊坂文体。真骨頂のゆるやかにつながってゆくひとつの集合体と時間の流れを希望をはらませながら描く。そして最初の方にそのテーマが語られているのだ。p33「さっきの出会いの話だけど、結局出会いってそういうものかなあ、って今思ったんだ」(と高校時代から美少女の誉れ高かったのに学生でき婚しちゃった妻織田由美さん)「そういうものってどういうもの」(とほんとは彼女を好きだったの、佐藤君が聞く。由美さんが言う)「その時は何だか分からなくて、ただの風かなあ、と思ってたんだけど、後になって分かるもの。ああ、思えば、あれがそもそもの出会いだったんだなあって。これが出会いだ、ってその瞬間に感じるんじゃなくて、後でね、思い返して、分かるもの」これって若い頃のひとめぼれとは違うある程度人生を重ねてこそわかる出会いの形。そしてこれって人との出会いばかりじゃないよね~、と一人自己満しながら皿を買った私。

10月22日(日)

いただいたチケットでマンドリン演奏会に行って来ました。あとリオンの音楽ホールはほぼ満席、人気のほどが伺えます。マンドリンの繊細な音色を堪能しつつ、アンコールの「ハナミズキ」にも感動、最後にみんなで「冬景色」を合唱、これは演奏会の定番なのかな?音楽の授業以来ですけど好きな歌だったので実は今も二部合唱で歌えるかも。英術の秋を満喫、スポーツの秋も満喫のはずが肉離れで一週間戦線離脱?早く復帰したいなぁ・・・でも読書の秋は在宅でもできますから。

「アキラとあきら」 池井戸潤 徳間文庫 ¥1000+税
いやぁ、これまた一気読み。WOWOWでドラマ化されたが残念ながら見られないので向井君と工君の演技の様子は想像(妄想?)するしかないが、個性的な周辺キャラもさぞや彩りを添えたのではないだろうか。池井戸さんお得意のバンカー物なのでなじみやすい。御曹司の会社は立て直すことが出来るのか?その時もう一人のアキラは・・・?って今クールで始まった「陸王」みたいじゃん。


「ブランド力」 関野吉記 日経BPコンサルティング 非売品
夫より借り。帯に「ブランド作りは未来への投資」とあり、この夏の大仙市周辺の水害への対応で物議を醸した佐竹知事とわらび座の山川氏がインタビューされてるのも一興。働くものが誇りを持てるブランド力の形成、県民が誇れる秋田を作るのはともに簡単なことではないが、見つけられないだけできっとカギは足元にあるはず。これを読んで繁盛することも」もちろん大切だが、「つぶれない」と言うことこそが愛されるブランド力なんじゃないかな、と思った。

10月10日(火)

しまった!彼岸埼玉往復分を書くのを忘れ今まとめて・・・

「ジャーニーボーイ」 高橋克彦 朝日文庫 ¥740+税
この続きが読みたいんだよ!と秋田県民的には思いながら読了。それにつけても強かったのね、鶴吉さん。単なる通訳の若者、と思ってたから新発見ではある。しかもあとがきに中島京子さんの「イトウの恋」、佐々木大河さんの漫画「不思議の国のバード」も関連本と言うから一興。旅程は謎と危険にあふれているが、鶴吉さんたちの奮闘でバードさんは泰然と旅を続けて行くからすごい。


「町の未来をこの手で作る」 猪谷千香 幻冬舎 ¥1400+税
7月に夫が見学に行った岩手県紫波町のオガールプロジェクトという官民一体の街づくりの流れを追った一冊。行政系の本をしては珍しく幻冬舎より出版。秋田のナカイチがちょっと失敗例的に書かれていたのは悲しかったが、娘の元上司も協力していたので出ていたのが嬉しい。良くしていこう、という意識の強さの大切さをしみじみと感じさせられる一冊


「ふるさと白岡」 ぎょうせい
昭和54年、町制施行30年を記念して調子編纂室が中心となって発行したもの。今回の実家納戸片づけの際、亡父の文庫本などと一緒に出てきたものである。それからさらに30年を超え、町は市になり区画整理で家々も道路も大きく変わってきている故郷をこれからも期待と共に見守っていきたい、とつくづく思った。ちょうど7月還暦同窓会もあったしね。今回その亡父の27回忌も行ったがお世話になったお寺の記述もあり、改めて学ぶ。


「日本の民俗 埼玉」 倉林正次 第一法規 ¥800
これも納戸から発見。昭和47年出版となっている。秩父周辺の民俗が多いのはやはり三峯信仰から来ているのか?子供の頃好きだった「秩父音頭」の歌詞も出てきて懐かしい。氷川神社の文化圏を描くとまた違う内容になってくるとは思うがやはり修験の土地から描かれるのが順番だからかな。


「銀翼のイカロス」 池井戸潤 文春文庫 ¥760+税
最近池井戸作品は夫が買ってくるのでお任せしている。これってJAL再建?と重ねながら興味深く読了。同期との交流、同僚の力を借りて半沢が合併前の銀行の闇と政界との黒いつながりを明るみにさらす胸のすく作品。ラストまでいい感じで半沢応援隊と共に走ってゆくが、中野渡頭取、富岡氏の姿勢に拍手を送りたくなる名作。分厚い本でも一気読み。今回も出てくる黒崎の立ち位置は・・・?

9月6日(日)

大曲花火が終わったら急に秋らしくなって来ました。今回は思い入れのある2冊だったので感想多めですみません。ま、一冊目の本も広告で「昔東北のある村が一晩で壊滅」というのを見て恩田陸さんの「光の帝国」を思って買ってしまったんですけど。

「荒神」 宮部みゆき 新潮文庫 ¥940+税
帯にある「時は元禄、東北の山村が一夜にして壊滅した」というのを恩田さんの「光の帝国」系かな?噴火かな?と思って読んで行ったら「ツチミカド様」というモンスターだった。それを作り出した一族とそれを封印することを運命づけられた人々とのストーリーを壮大に描いた一冊。最近夏に毎年行く上小阿仁アートの八木沢集落と同じ空気感を感じながら読了。NHKでドラマ化、とあるのでキャストが楽しみ。人の思いが怪物を生み出す、って一理なくはないでしょ。いつもはいい人が異常に変わる瞬間、みたいな。


「タマゴマジック」 恩田陸 河北新報出版センター  ¥1200
へぇ、河北さんから恩田さんの本!とほくそ笑みながら購入。ふふふ、皆さん、なかなか手に入らないでしょ、的な。この一年卵のごとくあっためてました。その間「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞されたのでそちらは先読みですけど。3月生まれの私は自分の誕生日が過ぎると子供の卒入学や転勤引っ越しなどばたばたしているうちに春が近づく陽射しの増加を感じるのが常だったが、あの2011、3月だけは今までのように自然と「春になる」のではなく、自らの心の持ち用や服や食材で「春にする」必要があったくらい日本人の心は曇天だったと思う。その頃の話を絡めながらS市(恩田さん出身の仙台市)の発展と奇妙な現象や都市伝説を織り込んでお得意の構成力でマジカルにまとめた一冊。そして秋田を含め今年は雨の害が多かったが、当時最新の茨城鬼怒川決壊の話も。その時流されなかったヘーベルハウスの白い家、話題になったなぁ・・・一面泥の湖と化した中に浮かぶ白い家を恩田さんは「北に向かって疾駆する白い馬」を置くからさすがとしか言いようがない。その姿をラスト2011のS市にも登場させて秀逸。

8月17日(木)

盆の埼玉でまとめ読み。50年ぶりの16日連続雨の天気にどんぴしゃ、エアコンは不要だったけどお寺往復はちょこっときつい。でも草取りはできないのでそこはラッキー。

「かたづの!」 中島京子 集英社文庫 ¥760+税
3年ほど住んでいた大舘は秋田よりも津軽文化を感じさせる街だったし、さらに足を伸ばした小坂、鹿角に行くと南部の色濃い街だった。ということで南部藩八戸から遠野への物語。もちろんNHK大河の「直虎」にもあやかり文庫化か、とも思うけどちょうど今回足止めされた埼玉での時間をうまく使えて◎。ちょっと遠ざかっていた中島さんだがあとがきを読んでもう一冊読もうと思った。


「首折り男のための協奏曲」 伊坂幸太郎 新潮文庫 ¥670+税
伊坂君お得意の「絡み合う」短編集。の中にレギュラーメンバーともいえる「黒澤」が2編にわたって活躍?!殺し方こそ残虐だが実はスムーズに読み通せる一冊。


「一瞬と永遠と」 萩尾望都 朝日旭文庫 ¥660+税
高校入学してすぐできた友人があまりに熱く勧めるので読んだらはまった萩尾さん。理由は絵のうまさ。幼さ=可愛さを前面に出したような漫画が流行っていた中、私はこちらが好きだった。そして最近「ポーの一族」の続編が書かれて評判、というから嬉しい。仕事の話、旅の話、映画の話等々エッセイ集として定番のコースが萩尾さんらしく語られて楽しめる一冊。ただSFチックな世界と併せて名作「イグアナの娘」に通じてゆくご自分の親子関係を吐露され、p8で「子供の頃、私は母に疲れて、他の人は親にどう対応しているのだろうと友人に色々聞いてみたが、私の母のタイプはいない。」以下の母娘関係はどんぴしゃ私自身にも当てはまる関係で、おそらく当時の女子の何パーセントかは同じ状況で、自立できるあと数年をもがいていたからこそあれだけ支持されたのかも、と思う。p99「よかれと思って支配している。こんな人いるのか。いる。私は知っている:」という望都さんの文に「私も知ってる」とつぶやく女子がきっといるはず。面白いことに母と娘に支配関係はあっても母と息子は支配でなく溺愛関係になっていくんだろうな。どちらの姿も子供に依存であることに変わりはないが。p99は河合隼雄の著書に言及しつつ、「ところでその思春期、私は両親とこれという大ゲンカはしなかった。どうせ何を話しても理解してもらえないと思い、自分の意見を言うのを避けた。」って家庭内暴力に向かう男子とは方向が違うだけの女子の思春期なんだよ、きっと。そしてp100~101「心理学で親子関係を分析することはできるが解決はできない」というくだりも納得の重い一冊。


「心配しないで、モンスター」 平安寿子 幻冬舎文庫 ¥690+税
若い頃はああだった、これもした、と描いてみせて、でもp10「でもばあさんになったら、そんなこと全部無縁になる」以下の「ばあさん」の描き方があまりにも適切なので。おお、これは日常をくさくさと生きるしかない高齢者(少なくともオーバー70)を想像してたらなんと!59歳のカナエさんが一遍目の主人公って私と同じ年じゃん!とがっくし。p11「去年(RUMIKO注58歳ということか)まではまだまだ十分、おばさんの段階だったが(中略)一年過ぎたら、すべてが変わった。(中略だがここでも進む廊下が描かれている)そしてついにばあさんデビュー。」でも確かに実家周辺で電車に乗ると時間帯によっては自分が最高齢かも、と思うことはしばしば。そんなカナエの綺麗な老い方と乙女心との折り合いのつけかたを悩む「丘の上の馬鹿になりたい」はビートルズの作品の日本語版。他の8遍も歌の題名にからめ、カナエから派生した人間関係を主人公にした9人の物語。「私だっていつかはプリキュア」はちょうど孫が何シリーズか後のに今はまってる。3.11が舞台なのでちょうど娘が女子高生だった頃女バス試合での訪れた石巻、日和山が出ていて感慨。

7月27日(木)

あれ、7月更新してない?と慌ててまとめ更新・・・秋田の豪雨被害お見舞い申し上げます。身近なところでも車や小屋の被害にあった方、実家の大曲周辺の浸水、道路冠水で迂回など聞きました。さもないことですが私は小町運休で一日埼玉からの帰宅が遅れ大曲からバス、法事で規制の娘家族は今日こまちの変更、大曲からの快速などの手続きを済ませて戻る予定です。

「妻の女友達」 小池真理子 集英社文庫 ¥495+税
これも義妹から借り。最後の一冊。法事でお返しできて一安心。男女の複雑な愛と行き違いで起きた事件(死の形式は様々ですが)をどうしてゆくか、悶々とする時間を描く6つの短編集。


「成功している人はなぜ神社に行くのか?」 八木龍平 サンマーク出版 ¥1500
夫が買い。以来神社にまじめにお詣りしている夫、還暦直前、成功したいものとは何か?私に落とすとすれば娘が買ってくれたロフトのワナドゥ手帳ヨガ編。ヨガで教わったアーサナを記入してるが、ちょうどそこに掲載されているチャクラの説明に追記できるような神社パワーも書かれていて改めて参拝の作法や神社の持つパワーなどを学べる一冊。


「歌舞伎町ダムド」 誉田哲也 中公文庫 ¥720+税
♪きっと来る~きっと来る~♪と「リング」の旋律が頭を駆け巡る読後感。こりゃあ続きはあり、かもですね。あまりのスプラッタに「ジウ」以外はドラマ化できないとは思うが一応ドラマ化の際の?メンバーまで妄想して読み。そしてそのメンバーの記憶を甦らせ、強化するため「歌舞伎町セブン」を読み直してから挑む誉田愛。今回もセブンを巡る筋立てだがなんと東警部補が狙われている。結局「ジウ」から暗躍する「新世界秩序」の壊滅には至らなかったがだからこそ次作を心待ちにできる一冊。


「ケモノの城」 誉田哲也 双葉文庫 ¥759+税
使い古された言葉だが「事実は小説より奇なり」な2002年の北九州市小倉北区で発覚した凶悪監禁殺人事件がモデル、とあとがきにある。そういえば似たニュースあったなぁ、とまでは思い出せるがその後の流れは意外にマスコミが追わなかったのか、さらに大ニュースが出たのか詳しいことは覚えていないから不思議。それをベースに誉田さんが人物を際立たせ、読んだ後に実は本当の犯人は?とか今後生存者たちの人生は?と妄想すると今ある世界に不安が広がるほどの一冊。

6月12日(月)

恒例月一埼玉で冊数を稼いできました。あちらは晴れが続き暑い日もあったのですが戻ってきたら秋田まだ冬かよ!と思うほどの肌寒さ・・・(泣)今朝の北海道の最低気温は10度以下みたいだし・・・でも台風2号発生してるし・・・

「夜の目覚め」 小池真理子 集英社文庫 ¥480+税
これも義理妹から借り。6編の短編集全てが若くはない女性達の秘密の恋の物語。そんな彼女達のほとばしる恋心を描く一方で表題作なんて末期がんの叔母の還暦祝いをするところから物語が始まって、ついアラ還自分と置き換えて読んでしまい哀しすぎる人生の残り時間を思ったりして。


「サイコパス」 中野信子 文春新書 ¥780+税
話題の新書を夫が買い、満を持して読む。サイコパスの少し手前「反社会性パーソナリティ障害」というくくりの人なら思い浮かびそうな私の周囲。「あなたの周りのサイコパス」という「漠とした不安」をあおるラストまで面白く読める一冊。これを読むとサイコパスが現存している、ということは人類の維持、進化のためには必要だからであり、淘汰の対象にはならなかったことが答えであること、そして脳の機能障害と思えば「治す」という考え方の範疇外、というのも頷ける。そして「性格」だと思うけど腹も立つけど「障害」だと思うと少し温かい目で、いや諦めの目で見られるようになるかな?そうすればストレス軽減にはなるかもね。ただ、「治らない」ものだという著者の指摘によればp26の対象者の今後が気にかかる。


「言ってはいけない  残酷すぎる真実」 立花玲 新潮新書 ¥780+税
耳障りの悪いことを言うと嫌われる、という神話?にとらわれ、できるなら「感じの良い人」になるべく努力してきたのが人々の歴史ではあるが、60歳越えに近づくと残りも見えてくる人生、もう嫌われたっていいじゃん、言いたいこと言ってやりたいことやろう!と思うように変わってきたのは3,11の影響もかなりある。
そしてまさに本書は人々が口に出すのを控えていた絵空事の真実に立ち向かうというふれこみだから売れるのがわかる一冊。そしていまだに口に出せない人々がのぞき見したくなる一冊。
これはたまたま直前に「サイコパス」読んでから読んだ方がスムーズに頭に入ると思うのでもし2冊買ってたら(夫は2冊買ってたがこちらから先に読んだらしい)「サイコパス」での予習をおすすめ。、
p93からの「反社会的人間はどのように生まれるのか」の章など、テストステロンの影響、心拍数の影響、発汗の少ない子供などなど中野さんの著作と重なる部分も。
またp160鬱病に影響を与えている脳内伝達物質のセロトニン濃度不足が「心配性」につながる、なんてところは私たち夫婦の両方の母がすごく心配性だけどその原因てこれだったのね、とわかったので個人的にも〇。
ラストp242~では「子育ては無意味か」」とあおりながらも「親のいちばんの役割は、子供の持っている才能の芽を摘まないような環境を与えることだ」とハリスの言葉を引用しているところは救いかもしれない。


「星がひとつほしいとの祈り」 原田マハ 実業之日本社文庫 ¥600+税
帯に「心に迫る珠玉の七編」「救いの物語」とあるように20代から60代までのヒロイン達が一歩前に進むきっかけを描く短編集。遠くも近くでも「旅」が舞台だ。一作品嬉しくも男鹿から白神山地、しかもガイドさん付きツアーも舞台になっており感謝。確かに読む人それぞれに、また時々に思いれのある作品が見つけられること受けあいの一冊。今の私は「長良川」かな。

5月27日(土)

忙しかった五月でしたが二回書き込めるとは優秀!恩田陸さんのがあったから?義妹から借りましたシリーズも残すところあと2冊

「雪月花黙示録」 恩田陸 角川文庫 ¥680+税
ついに朝日新聞の天声人語でも取り上げられた「蜜蜂と遠雷」に続いて読んだ若者シリーズ。デビュー作「六番目の小夜子」のように学園ものだが、そこは現代らしくゲームチック、アニメチック。ビジュアル系な登場人物を楽しみながら読める一冊。ゴシックな感じが「少女曼荼羅」を思い起こす一冊。ラストで収拾がつかなく尻すぼみな感も否めないが、やはりこの勢い、「さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」と皆さんに勧めたい一冊。


「ため息の時間」 唯川恵 新潮文庫 ¥520+税
520円でごめんなさい、と思うほど面白かったぞ。唯川さんと言えば「恋」と思ってたけどこれは「ほろり」だわぁ、と思ったら、そうか、この本の語り手(主人公)はオール男性だったんだ、と気づく。人生のほろ苦さを小さなため息でやり過ごすやりきれなさが味わえる一冊。あとがきによると傑作「肩ごしの恋人」が出される直前の作品でこの本の直前に出された「めまい」「刹那に似てせつなく」「病む月」「愛なんか」の4作品が唯川さんが大きく変貌した作品群とある。これらが彼女のターニングポイントになった「ベターハーフ」につながり、この作品を描くことでさらに大きな成長になった、とあったので読んで良かった一冊。

5月12日(金)

ゴールデンウィークは娘家族が来秋、義妹家族5人+赤ちゃんも来て総勢15人で夕食会もできました。なんと男鹿の水族館でインタビューされた娘家族の姿も放映され思いがけないプレゼントになりました。その人数に負けないために子供達には「秋田合宿」「小岩井強化合宿」と銘打ってメール連絡してこちらも楽しんじゃいました。夕食会の次の朝なんて合宿よろしく残ったおかずでバイキング形式です。(笑)その後大混雑の小岩井からお泊り会、そこから埼玉に行っての読書でした。今回は3冊とも義妹から借りてる本です。

「地下街の雨」 宮部みゆき 集英社文庫 ¥520+税
室井滋さんが解説で語ってるが、7つの短編dpれもが少し不可解で不条理な怖さを含んでいて一気読み。やはり表題作のからくりがしゃれててドラマチック。1998年文庫化から50刷というのも宮部さん人気を物語ってる。


「隠し事」 羽田圭介と簡単な 河出文庫 ¥550+税
ケータイ時代ならではの妄想小説。現代「あるある」。「驚愕の家庭内ストーキング小説」とあるがこんなにストレスためてくよくよするなら別れたら?と簡単なアドバイスを送りたい。こんなの現実では普通だよ、とも言ってあげたい「僕」のくよくよ。現実にストーキングは男女の関係ばかりじゃないんだよ、とここで書くと新たな恐怖が・・・?


「悪意のクイーン」 井上剛 徳間文庫 ¥630+税
積み重ねたキャリアを諦めての出産、ママ友との不本意な交際の末の育児ノイローゼ、の末の夫とのギクシャク、の末に子供の死、と書けばこの本の全体が語られてしまうが、そこに至るまでの20年近い「悪意」の底知れなさがラストで不気味に明かされるドキハラな一冊。それにつけても出産で突然「母」になることを求められる女とその後もキャリアの道を歩み続ける男の関係がいつの時代も続いているのが哀しくて・・・

4月20日(木)

「風のマジム」 原田マハ 講談社文庫 ¥590+税
本友Sさんより借り。最近の私たちの注目作家は伊坂幸太郎さんに加えてこのマハさん追加である。今回文庫化が続いたので「総理の夫」は木村が買うことに。真央ちゃんが26歳で引退発表をしたが、この本の主人公まじむちゃんも28歳派遣社員で社内ベンチャーにチャレンジ。周囲の温かい支えもあって企画を実現させて社長になる、という実話を基にしたマハさんワールド。沖縄というと海のイメージだが舞台の南大東島は風邪を感じる島のようで心がさらに開放される。次のステップにチャレンジ、というすごく心がわくわくする一冊。


「危険な食卓」 小池真理子 集英社文庫 ¥500+税
5歳までは魚中心、65歳過ぎたら肉中心、という健康ワードを胸に65歳を待ってるのが今の木村家の食卓だが、孫イベントの度に太ってゆく夫にも目を背けることができないのが我が家の今でもある。そしてこの短編集の最後の潔癖、ヘルシー志向の妻に共感と危機感を抱く自分もいたりして・・・だって健康に良いといわれるあれこれの食材を加えていくとすごい量になっていきますから。「姥捨ての街」という短編でデパートに老母を置き去りって現代版姥捨てあるある、だわー・・・

4月9日(日)

ぼーっとしてたらもう4月、ということではありません。珍しく娘が秋田に長期滞在、そのうちパソコン環境が変わり、実家の耐震問題で珍しく埼玉に長期滞在していて書けなかったのであります。だから今回すごい量です。

「双面の天使」 小池真理子 集英社文庫 ¥460+税
これも義妹から借り。誉田哲也さんとかにはまっていたせいか小池さんは少し上品なスリラーな印象。短編集だがタイトル作品も他の作品もラストで終わりでなくまだ次の事件が起きる気がするところがスリラー、かな?


「コーヒーもう一杯」 平安寿子 新潮社 ¥1400
これは秋田に遊びに来ていた娘から借り。母娘で平さんはファンです。最初共通の一冊は「くうねるところすむところ」です。
今回は珍しく単行本なので、そういう時は必ず「この時誰にはまっていたのか」を知るべく巻末の他の著者の広告を見るようにしている。うーん、2011、海堂尊、伊坂幸太郎さんたちの文庫本を追っかけていた頃だ。平さんて割とに文庫化が遅いのよね。
いつものタフなOL物の予定だったが、おや、今回の結末は少し違う、と思っていたら、33歳独身の私、p205「でも、これでいいのだ。自分のケツは自分で拭く。」と小気味良いセリフが戻ってきて胸をなでおろしたり。しかも人生の先輩である私たちにまで心強いお言葉p213「なら、失敗から学んだでしょう?その経験を生かしてちょうだい。」「二度と失敗しないぞ、って気負うこともないのよ。失敗しない人間なんて、いないんだから、っていうか、何かをすれば失敗のリスクはついてまわるものじゃない。(攻略)」こう言ってくれる大人が成長期にいたら、と思うよ、私の人生。


「蜜蜂と遠雷」 恩田陸 幻冬舎 ¥1800
直木賞受賞おめでとうございます!でも私にしてみれば今更、です!とっくに!です!
この中の音楽の一曲も耳に鳴ってこないほどの音楽素人なのに、充分、充分楽しめました。いやむしろ久しぶりにページが進みすぎ、あぁ、終わらないで!と思うほどの一気読み度。白岡ではこれ一冊で十分過ごせる、と思っていたのに。
やっともらった直木賞。私たちには今更ですが、これを機に読んでみようかな?と思った方にこの厚さで2段組みは拒否感強いか?と心配になりますが、ご安心、文体的にも構成的にも読みやすいので大丈夫!
ということは¥1800はお得!
ちなみに本書は木村的な、個人的な感想を言わせていただければ、大好きな「常野物語」の流れだと思います。
ラストで塵君が「ねえ、先生」と呼びかけるところも常野の姉弟の弟君のセリフにあったじゃありませんか!(好きすぎて思い込みだったらすみません)
最初の頃恩田さんが描いた常野シリーズでは記憶でしたが、本作ではそれを音楽に展開、でもこの感じ、ほかの作品にもあります。たしかバイオリンだったかな?その後の恩田作品では不思議な能力ゆえに事件に巻き込まれたり、解決したりとミステリーやホラー仕立てでも堪能していましたが、本作はもう少しクリアな感じ。
ここでも恩田さんが展開しているけど、p476「生物でもなんでも、進化というのは爆発的に起きるらしい。(中略)徐々に、ではなく、同時期にすべて出揃うのだ。」という能力の開花を一番感じるのはスポーツの世界の100メートル走とかフィギュアの4回転とかいう辺りかもしれない。この言葉も雨を見ながら女子高生たちが話していた作品があったような。p477「音楽。それはたぶん、人間を他の生物とは異なる霊的な存在に進化させるために人間と一緒に生まれ落ちてきて、一緒に進化してきたのだ。」って伊坂幸太郎君の作品みたい。p490「本来、人間は自然の音の中に音楽を聴いていた。」そうです、もともとは音符なんてなくても人は歌を歌っていたんですものね。p490「その聞き取ったものが譜面となり曲となる。だが風間塵の場合、曲を自然の方に『還元』しているのだ。」
あー、今まで陸さんファンで良かった、今までの作品も読んでて良かった!と大きくため息をついた瞬間であった。
内包されているそれぞれの自然の音を外へ開放するのが塵の役目、というところが彼の存在理由なのね。そして本作こそどの読者にもわかりやすく書かれた恩田さんの集大成的な作品。今のところ今年の一番!


「ガソリン生活」 伊坂幸太郎 朝日文庫 ¥780+税
この本、正月か孫誕生会埼玉で買い溜めしたけど重くて持ち帰れず、置いていった本たちの中の一冊。しかもその荷物を老母が床の奥に片づけてあったのを発見、忘れてたらまた買ってしまってたかも。しかも初版限定でカバーの裏に書き下ろしショートショートもありラッキー。朝日新聞連載中は時々読み忘れていたが通して読むと得意の巻き込まれ型のミステリー。仙台が舞台なので、伊坂君得意の「ゴールデンスランバー」を彷彿させる展開。今回は10年後の望月家が描かれていて読後ますます幸福感がUPで平易な一冊。そう、ゴールデンスランバーでもラストは何年かあと、映画では今やすっかり売れっ子になった滝藤君に竹内裕子ちゃんの娘が「大変よくできました」の花丸スタンプを押すラストだったなぁ。


「総理の夫」 原田マハ 実業之日本社文庫¥639+税
爆発的なヒットとなった「本日はお日柄も良く」の展開編のようにさっそうと登場する女性総理。しかもあとがきが安倍昭恵さんとなれば読まずにゃいられない。それにつけても「蜜蜂ー」にしても本作にしてもセレブな環境でないと表舞台には立てないのだなぁ、ともつくづく思ったりして。女性総理のスマート感もだが夫の家力もかなり影響力を持ってるし。どうなる本日の秋田県知事選と市長選。


「無花果とムーン」 桜庭一樹 角川文庫 ¥640
映像的には「ET」や「いま会いにいきます」日本文化的には「厄年」や「忌明け」をイメージすれば良いでしょうか?いや古事記の黄泉平坂的な?と考えながら読んでいったらあとがきで「能の複式夢幻能」の形式、とのことで、桜庭さんの華麗な文体にはぴったりだと思う。作品の中心である「お兄ちゃん」と月夜の関係も読者はすぐにわかってしまうが、せつないほどのラストの表現力もロマンチックなタイトルもいかにも桜庭さんらしい作品。

3月8日(水)

昨日は誕生日、でも夫はお泊り、なので寂しく、いやありがたく友人からいただいたシフォンケーキと桜餅で一人スイーツバースディ。スマホならここでハートマークの句読点になるところ。血糖値上がるわ~。

「プリズム」 百田尚樹 幻冬舎 ¥690+税
これも義妹から借りた文庫本の一冊。へぇ、百田さんてこんな作品も書くのか?と思いながら読み。自分が心惹かれた男は誰なのか?という不思議な、でもある意味根源的な内容の本。だって実際自分が親や子供、ましてやパートナーの全てを理解してるかって思えば無理ですから。多重人格者が愛を覚え、人格統合に至る、と書くと平板な解説になってしまうが、現実だったらそりゃあ大変な恋です。何せ彼の中には5人の人格があるのですから。しかもじゃあ5人全てを愛せるか?と言うとそれは人間無理な話で。(でも元は12人いたらしい設定だから更にすごい!)ただ考え方によっては恋は盲目とも言うくらいだから、恋に落ちてさえしまえば自分が見たい面しか相手のことを見なかったり(自分の都合のいいように彼のことを解釈する、ということですね)、相手も全てを他人に見せてるわけではない、という意味では現実にも重なる部分があるかもね。多重とまでは行かなくても人は多面体、と思えばいいかも、の一冊。


「間違われた女」 小池真理子 祥伝社文庫 ¥619+税
これもまた義妹から借りのシリーズ。しかも百田作品に続いて「女」に執着する男の心は病んでる。こちらは解説で小池さん曰く「パラノイア」である。ストーカーにもなる。でもそんな男に恋をする女の子もできたのにその子は別の狂気の男に殺され・・・・ここが一番哀しいシーン。でも「間違われた女」は恐怖心を募らせながらもホノルルに出張してる間に全て解決したし。どうなってゆくのかな?友人とそのおっととのからみは?と思いながら読んでいくと違ったラストで、ま、作者としたらこういう解決なのかな?とちょっぴり拍子抜けのラストであった。でも現実にもあるある、みたいなところもあるからすごく怖い話かも。

2月27日(月)

「クワトロ・ラガッツィ」上下 若桑みどり 集英社文庫 各¥860+税
すごい時間をかけて読んだ2冊!自分をほめたい!
紹介でも「グローバリゼーションという言葉が日本人の話題になるはるか昔の信長の時代の天正少年使節団派遣までのいきさつと現地での様子や帰国後の苦難を描く大作」とあるが、著者の方が亡くなってから読んでるので残念。
刊行当時に何か著者の言葉があったかもしれないのに。
上巻の終わりに船出するまでの九州の政治、勢力図と初めて日本に上陸した宣教師達の貿易を含めた布教戦略をずーっと書いてるので忍耐。
でもそこは遠藤周作を卒論にした身にはどストライクゾーンですから。
p134では貴族階級出身者の多かったイエズス会は来日しても権力階級と接触、フランシスコ会は民衆寄りで根本から布教の方法が違っていたこと、当時の布教方針が自分達の宗教にその国の人々を合わせようとした、どちらかというと支配的方針であったことが分かり良かった。
そして作者は「日本人は日本の国で長い間生きてきて、そこで彼らと初めて出会った。出会いがすばらしいものになるのは、それが出会って新しいものが生まれることであって、片方がいっぽうに同化されることではない」と書いているのが印象的。
この後で来日し、使節団を結成、派遣した大立者イエズス会ヴァリニャーノ巡察師もp187「布教と言うものは、人間の心と心の出会いだということを知っていた、つまりはほんとうの宣教師だった、ということを感じさせる。宣教師というのは心の教師でなければならないのである。相手の心に会いに行くには相手の身になって考えることが必要だ。そのために相手を理解しなければならないし、相手が住んでいる世界に自分も住まなければならない。高い位置から一方的に押しつけては、従わせることはできるかもしれないが、心に会うことはできず、ほんとうの教育はできない。」と感じている。
そして更に「日本の礼儀作法」という著作でp247「国は異なり、風習は異なる。つまるところ、われわれの風習もまたヨーロッパという小さな地域に合わせてできたものにすぎないではないか。」と書いている。


ふーっ、上巻だけでこんなに長い感想なので恒例埼玉の時に読んだ軽めの唯川恵さんはさんじゃいます。


「ヴァニティ」 唯川恵 光文社文庫 ¥640+税
義妹から借りた山ほどの文庫の中の一冊。和訳すると「虚栄」ってタイトルなんですって。女性達が恋や仕事に走り続ける日常にふと陥る心の隙間を描いた中、短編集。読んでるとちょうど娘と重なる年齢のヒロインの物語もあってほろりや共感やくすり。


「クワトロ・ラガッツイ」 若桑みどり 集英社文庫 ¥860+税
やっと読み終わりました~!
しかも読んでいる最中に公開された遠藤周作の「沈黙」の登場人物も本作で触れられている。
ポルトガル人、スペイン人の布教者のあまりの多さに会派と人名をメモしながらの読書ってすごい。
p220周辺で利休、高山右近とキリスト教の関係が触れられているが、和敬静寂とキリシタンの心等思いがけぬ展開が新鮮だった。
p290周辺の26聖人殉教、歴史の教科書では表面的な学びでしかなかったが、宗教、貿易、イエズス会とフランシスコ会との関係も新しい学びになった。高校時代にこの本を読んでいたら安土桃山時代を別の視点で深く学べたかもしれない。
p392でも描かれている高山右近の追放の部分も彼の姿がすごく立派に描かれ勉強になった。羨望と期待に送り出された4人の少年使節も青年になって戻った時には迫害の時代に入っているとは生まれる時代を選ぶ事はできないとは人間全ての宿命だが悲しいものである。


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