RUMIKOの読書日記

2008年
カウンター設置 2003/02/11

 

12月14日(日)

「軍師 直江兼続」
星亮一 成美文庫 ¥562
来春の大河ドラマの主人公、とのことだが、軍師という立場上どうしてもインパクトがうすくなりがち。そういえば以前も武田信玄の軍師山本勘助の大河もあったっけ。現代に置き換えると規模縮小(減封)の憂き目にあってもリストラはしなかった、という経営手腕?は是非見習って欲しいところか?一見地味な直江を妻夫木君がやる、というだけで見よう、と思う私。


「勝間和代 成功を呼ぶ7つの法則」
マガジンハウス ¥1500
つい最近朝日新聞の広告に出てましたねー。本誌によると40歳で年収2500万超え、という格差社会で言う完全勝ち組のすごい経歴と朝日新聞のコラムでも人気の勝間さんの集大成本。インディ(自立、の意味反対語はウェンディだそうだ)になるためにパワフルに生きてきた人なんだなぁ、と感心しきり。数々のベストセラーと根強いファンを獲得しているカリスマの人気を探る一冊。じゃあ、50歳以降の人はどうすれば?という答えが漫画家槇村さとるさんとの対話かな?

12月8日(月)

「ユージニア」
恩田陸 角川文庫 ¥629
一度目に読んだときは構造が複雑でうまく味わえなかったと思う。しかも今回は金沢にも行った後なので(というか「ユージニア」を読んだから偶然金沢に行くことのなったのか?)成巽閣も目に浮かんでリアルに味わえた。盲目の少女がヒロインという点では正反対の結末だが「蒲公英草紙」につながる一冊。p236「それにしても、共同体って言うのは、一人でいる男には昔から本当に冷たいねぇ。」という部分は確かに現代の数々の事件を彷彿。


「螺鈿迷宮」上下
海堂尊 角川文庫 ¥476
「バチスタ」「ナイチンゲール」に続く医療ミステリー。たとえ原作の白鳥が小デブでもせりふの言い回しはTVの仲村トオルに置き換えて読んでいる私。そしてこの本でもまた「北を舞台に終末or安楽死医療の続編」を予感させるラスト。

12月1日(月)

「図書室の海」
恩田陸 新潮文庫 ¥476
2005年以来の再読。実は今文庫で恩田陸集めています。今は他の作品も読んでいるのでひとつ一つの作品とつなげて味わうことができてグリコな作品集。前回も書いたかもしれないがハウルの元?どっちが先?かと思える「オデッセイア」もロマンチックだがやはり一番映像が出来るのは「イサオ・オサリバンを探して」。あの頃はオダジョーがぴったりと思ったけど(もちろん今もいいけど)、今になると佐藤健クンもあり、かなぁー、と・・・


「林住期」
五木寛之 幻冬舎文庫 ¥495
50殻5歳の林住期こそが頑張った自分の黄金期、というテーマなのでわたしはこれからなのかと期待できるが、果たして?社会がその方向に向かっているのか?現実には50歳で仕事を辞め、どころかリストラにあい、とか働けど働けど、とかいう話ばっかりだが・・・私たちは多くを求めすぎているというのか?


「美女に幸あり」
林真理子 マガジンハウス文庫 ¥530
地位と名声を手にいれ、エステにダイエットにお買い物、お洒落にと猛進している林さんを誰が責められようか?むしろデビュー時代からの変貌振りに脱帽。美は努力で作られる!だからこそ女子の共感を呼んでいるのだろう。自分で自分を幸福に、とつくづく思う一冊。「林住期」のあとにこれを読む私の脈絡のなさも素敵?ってことで。

11月15日(土)

一ヶ月のご無沙汰は利用者様の利用者さんの作品集?新聞の切り抜き帳を読んでいたからでした。今回は医療関係の情報で参考にはなりましたが・・・

「その人、独身?」
酒井順子 講談社文庫 ¥590
「負け犬」という言葉を流行らせた30代以上、独身子無し女性の日常を描く爆笑エッセイ。歳を取るにしたがって20代の頃とは男性を評価する視点が違ってくるというのは独身じゃなかろうとわかるわぁっていう感じ。いまや年頃となってしまった娘二人は「こんな本タイトルの買って嫌味〜?」と怒りつつ、しっかり読んでいたようで。


「魔王」
伊坂幸太郎 講談社文庫 ¥619
政治を柱に不思議な力を持つに到った兄弟がゆっくり歩いてゆく物語。不思議な力、東北といえば共通するのは恩田陸。前回読んだ「ゴールデンスランバー」同様青年ぽい語り口に浸りながらあっという間に読了。
共感できるというのか偶然私も掲示板に書いたなぁと思ったのはp55パソコンの中に知識はある、という若い部下に「その場ですぐ対処できる奴が本物なんだよ。」と言い切る上司のひとこと。
前半の「魔王」での兄の死に方が脳出血かなぁ、と思いながら後半に進んだらビンゴだが、主人公が若くして死んで一幕終了、弟に引き継がれてゆく、という形も面白い。犬養はこのあとどうなるのか?と思いつつこの後に余韻を残す。

10月19日(日)

「ナイチンゲールの沈黙」上下
海堂尊 宝島社 ¥473
話題をさらった「チーム・バチスタの栄光」の作者の2作目。奇しくも読んでる間にTVで「チーム・バチスタ・・・」が始まり・・・。白鳥役を仲村トオルがやっているけれど「華麗なる一族」に続いてちょいワル国家官僚のイメージということかしら?「ナイチンゲール・・・」も変人だけど有能な?個性派集団が事件を解決の方向へ収束しつつ、人間ドラマとしても美しく仕上げている。最後のほうで明かされる善に隠された巨悪が次作以降への期待感を膨らませる。

10月11日(土)

さすがに残業時間が問題になって今月は早く帰ろう月間になりました。事務仕事より訪問で早い、遅い時間が多かった9月でしたのに。

「千里眼の復讐」
松岡圭祐 角川文庫 ¥743
久しぶりに手にした岬美由紀の千里眼シリーズ。スケールの大きい戦いがたった一日のことであったことに読み終えて驚きつつ、変わらぬスピード感にひきこまれてあっという間に読了。主人公が少しずつたくましく自信をつけていく様子もシリーズを読む楽しさ。


「バラ垣」
          太陽印刷 
個人句集なので氏名は伏せさせていただく。以前友人のお姑さんが出版された句集をお送りいただき、ご夫婦のたびのむつまじさとアクティブさにうらやましい老後を感じたが、こちらはずっと秋田にお住まいの方のゆったりした心象風景が時に激しいものも感じられて味わい深い句集とエッセイ集である。自費出版ということだったが、ご本人曰く「人生になにか形になるものを残そうと思って句集を出すことにしたけど、この句を作ったときが人生一番充実していたような気がしたからこの句をタイトルにしたの」とのことで自分もこういうことを考えていかなくてはと、思わず襟を正す私。「虎落笛」って読めますか?秋田ならではの冬の強風の表現だそうです。25年住んでいて初めて知った言葉でした。こういう地域ならではの言葉を大切にしたいものだ。


「ひとかげ」
よしもとばなな 幻冬舎文庫 ¥457
ばななさん得意の「心に傷を持ちながらひっそりと生きる人々の再生の物語」ただしこれはご本人も最初に述べている通り「とかげ」のリメイク版。しかも「とかげ」も併載だから比較しながら読む楽しみもあるだろう。もちろんこの薄さで似た内容の文庫を出すなよ!と突っ込む方もあるだろうが・・・使い古された言葉だがp21「子供は未来だ」という言葉が一番好き。

9月27日(土)

義父の死後、仕事に復帰してからますますの忙しさ。7時前に帰ること数日、突っ走ってきました。読書も進まず、バタン、キューで朝が来ていました。この間読み終えたのはわずか2冊!

「あきた昔がたり」
かわら版編集所 ¥1500
作者は守秘義務です。現在90代の人が描く昔々の秋田界隈。仕事柄訪れる辺りもあり馴染み深いのはそうとう昔ワールドに入っている?ということ?昔の町名もまた良し。


「年下の女友だち」
林真理子 集英社文庫 ¥457
職種は違うが林さんのこと?かと思われる主人公の周りに集まる年下女子とのガールズトーク集。どの子もセレブなのが林さんのお友だちらしく、でもちょっぴり哀しいところがこれまたらしくて面白い一冊。

9月3日(水)

「失敗学の法則」
畑村洋太郎 文春文庫 ¥467
いくら「黄昏の百合の骨」を再読していたから、と言ってもお盆休みにこれ一冊とは寂しい。柳田邦雄氏が解説を書いていたのもびっくりしたが、柳田氏も「この国の失敗の本質」という似たような本を書いていたからなのね。結論はたぶん「失敗を生かす」ことなのだ。


「察知力」
中村俊輔 幻冬舎新書 ¥740
新規の利用者さんに「会った人の数だけ人生は豊かになる、いい仕事してるねぇ・・・」と励まされた?!俊輔の本を読んでいると「可愛い子には旅だ、やっぱり」「他人の釜の飯ってことだ」とつくづく思う。ま、いくら旅しても「気づく力」がない人には進歩は望めないけど。おっとそうか「気づく力」を養うってことが「察知力」か!どんな環境でも自分を活かす、ということについて語る俊輔の本はやはりベストセラーの価値あり!

8月10日(日)

「こころげそう」
畠中恵 光文社 
しゃばけシリーズの作者の恋物語、といえば貸してくださるのは当然Oさん。27日の3冊もすべて借り。この作品にも人ならぬものが登場して・・・幼なじみのもどかしい関係を丁寧に繊細に描きながら将来を考えてそれぞれ成長してゆく江戸時代の小市民(いつもの世もこうでなければならないんだろうが・・・)の日常を味わえる一冊。


「悩む力」 
姜尚中 集英社新書 ¥680
クロワッサンとかに出ていた頃から頭のいい顔ってこんな感じ、と思っていたが最近TVでもよく拝見するなぁと思ったらこの本が売れていたんですね。さすが姜さん、ただぼお〜っと悩むんでなく、悩むのにも力が必要とは!漱石やウェーバーを例にしながら現代人の閉塞性について言及。漱石のこんな読み方も面白い。そしてこの本を読みながら自分ももはや姜さんの側の世代だ〜、と実感。p166は過激な老人論だがすごぴぞここまで言い切るのは。そして仕事柄これは書けない、私には・・・でも共感できる部分、『かつては老人の持っている力は社会の暴走の歯止めになる(たぶん争いはやめろ、とか人を殺すね、いじめるな、とか働くこと、親孝行とか規範的なことだと思う)が今は違う(老人自ら犯罪者になってしまっている、というところだと思う)」という現象にはやはりうなづいてしまう。

7月27日(日)

「Reーborn」
伊坂幸太郎 豊嶋ミホ 瀬尾まいこ他 実業之日本社 ¥1400
サブタイトルは「はじまりの一歩」帯にあるのは出会いと出発。7人の作家のアンソロジー。Oさんから借り。おそらくOさんは豊嶋ミホにアンテナピピピ、だったはず。
わたしは最新伊坂さん。味わおうと思うと出てくる良い言葉たち。
p241「昔、俺の親父が言ってたのを思い出すぜ。『子ども作るのより、友達作るほうがはるかに難しい』ってな。」
p253「過去のことばっかり見てるの、意味ないですよ。車だって、ずっとバックミラーばかり見てたら、危ないじゃないですか。(中略)来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ。」
p269「自分の身体についてるはずの、見えないレバーをドライブに入れてみた。」うーん、どれも頑張れ自分って時に響くなぁ・・・


「八日目の蝉」
角田光代 中央公論社 ¥1600
うーん、さすが角田光代。タイトルだけでもなんか興味をそそるし。ラストに希望が・・・と安心して読めた一冊。生きてゆくことの前向き感を語らせるならこの人。


「感じることば」
黒川伊保子 筑摩書房 ¥1600
(株)感性リサーチ代表取締役、脳とことばの研究、語感と人間の意識の関係の発見、感性アナリスト、って何?何?何?と思いながら読了。ただ、初めのところで著者自ら、言葉は美しい祈りである、とあるのがこれって言霊ってことなのかも、と何となく納得しつつ。
p46「『ウレシイ』と『タノシイ』は時間軸の違いがある(長いスパンが嬉しい、刹那的なのが楽しい)p59「『スキ』と『アイシテル』も同様(好きは今、愛しているは今日も明日も)」という分析が明解でさすが。

7月13日(日)

「ゴールデンスランバー」
伊坂幸太郎 新潮社 ¥1600
ご存知今年の本屋大賞。そして先日ご本人は直木賞ノミネート辞退で話題に。仙台が舞台というので購入。先に夫が一日で読破。ということで内容がわかるというもの。時間の流れがスランバー(まどろむ人、ということだそうだ)よろしく前後しているので一気読みとはいかなかったが、、昔はモラトリアムと言う言葉があったように、学生時代そのものが「ゴールデンスランバー」だったかもしれない。メッセージのやり取りなど凝った趣向がこらされ、明るい読後感の一冊。読んでからじわじわ良さが効いてくる一冊、という意味で恩田陸「夜ピク」に通じるかも。


「恐怖の報酬」
恩田陸 講談社文庫 ¥571
すさまじい飛行機恐怖症の恩田さんがイギリスへ飛んだ!そして彼の地でふくらませるイメージがあの作品のベースに・・・などと楽しく読める一冊。麒麟、アサヒ、オリオンビール工場見学紀行も面白い。


「Puzzle」
恩田陸 祥伝社文庫 ¥381
推理短編集。主人公の黒田志土、関根春は検事で友人同士。関根春って「6番目の小夜子」の秋の身内?感電死というのはたしか・・・などと考えながらあっという間に読了。

6月29日(日)

「コラム絵巻」
中野翠 毎日新聞社 ¥1238
サンデー毎日に20年掲載されたコラムの単行本化。さすが20年ともなると、へぇ、あの時代はこんなことが話題だったっけ?と改めてなつかしんだりして。自分も今や日常品となってしまった携帯だがp76(1996年)電話に追いかけられる感じが嫌、というところは居所をいつもつかまれていそうな管理社会が嫌、と最近まで携帯を持たなかった自分に似ていて共感。


「小説以外」
恩田陸 新潮文庫 ¥590
ジュンク堂効果か?ついつい恩田陸の本を探して店内を徘徊している私だが、侮れずひらのやさんにはどの出版社でもまとめて作家別に置いてあったのである。ということでこれはひらのやさんでまとめ買いした一冊。帯に「本に愛され、本を愛する作家の秘密に迫る解体全書!」とある通り、ファンにはたまらない一冊。気になる作品たちの誕生のきっかけ、興味あるものたち等がお宝のように放出。新古書店と古本屋とのイメージの違いや、マルチ才能と格差社会、幸せな読書への言及も興味深いが「場所の力」が作品を書くきっかけにもなる、というのを読んで納得。


「吉沢久子の簡単生活」
吉沢久子 海竜社 ¥1400
ケチ、しみったれ、という言葉も秋田ではしんぼう、現代ではエコ、と進化している今、地球のために一冊どうぞ、という本。

6月14日(土)

「リッツカールトンで学んだ仕事で一番大事なこと」
林田正光 あさ出版 ¥1400
接客に限らず社会で生きてゆくうえで大切なのはリーダーシップと人脈作り、ということを語った一冊。「出来ない」「駄目です」と言わずに代案を出すことで先方に満足を与える、というテクニックはどんな場面でも応用できそう。


「偏差値よりも挨拶を」
廣川州伸 東京書籍 ¥1400
学力テスト日本一の秋田やM高校などの未履修問題にも触れながら社会人としてやってゆくための子育てについて語った一冊。「キッザニア」についても興味津々。

5月31日(土)

「前世の記憶」
高橋克彦 文芸春秋 ¥1400
脳には防衛本能のための消去作用がある,といわれているがこの部分をついた一冊。思い出すと恐怖ににわぁ〜っと叫んでしまうような記憶、余りの恐怖に忘れなければ生きてゆけない記憶の数々が短編として描かれる。この防衛本能の対極にあるのは現代の流行「依存」だと思う。これが無いと生きてゆけない、私がいないとこの人は駄目になる(と思うことで相手に依存)など・・・


「ジェームス三木のドラマと人生」
ジェームス三木 社会評論社 ¥1800
うっ、この薄さで¥1800か、と驚きの一冊だがいい話満載。わらび座公演「菜の花の沖」(今は坊ちゃんの脚本も書いてますね)のヒットご褒美としてゆぽぽに招待された話など盛り込まれたエッセイ集。
家族の形をp17「私の考える理想的な家庭とは家にいれば窮屈で出て行きたくなり、外へ出ればなつかしくて帰りたくなるような場所である」としているのは非常にわかりやすいたとえだと思う。
また、p23「青春はトンネルに似ている。くぐり抜けるまでは何も見えない。時が過ぎて、ふと振り返り、ああ、あれが青春だったのかと気づく」なんてそのまんま誰かが言いそうな台詞になっているからすごい。

5月25日(日)

「た・か・く・ら」
嘉門達夫 扶桑社 ¥1300
50歳を迎えると、知人たちの親でなく本人や夫の訃報に接するようにもなってきた。サバイバルゲームに年代に入ってきたとつくづく思う。
同世代の友人から本人の深刻な病名や余命を打ち明けられたとき、私たちはそれとどのように向き合うのか?
嘉門達夫はにぎやかなイベントにした。でもそれは怖いものから目をそらしているような痛々しさも醸し出している。当然ラストは友人の死という結末だがそのあっけなさ(その場に居合わせない、という意味で)も人生ということか。


「やがて目覚めない朝が来る」
大島真須美 ポプラ社 ¥1400
奇しくも死を取り扱った作品を連続で読み。しかも利用者さんの訃報も今週あり。こちらは父の死によって同居することになった姑であり、元女優「蕗さん」との日常を描いた作品。
p112、『まるで二人(蕗さんと主人公の母)を強く結びつけるために父が逝ってしまったかのように。』というところにも表れている。そして当然蕗さんの世代が一人ずつこの世を去ってゆくのだがその人らしい最期の最後に蕗さんの死が訪れる。認知症が進み感性が失われてゆく様子がちょうど置かれている状況と似ていて他の作家の作品よりリアルである。


「二つの月の記憶」
岸田今日子 講談社 ¥1500
さすが岸田さん、詩的なタイトルだわ〜、と感心しながら読んだ短編集。そう、二つの月って水面に映る月ですね。それぞれの作品の文体が柔らかく、女性が主人公ってぴったりの一冊。元気な女性というより、やはり月のような感じのひそやかな女性が主人公のものですね。

5月18日(日)

「手のひらの仕事
奥山淳志 岩手日報社 ¥1700
北東北の匠の技を伝える逸品たちを写真とコラムで描いた美しい一冊。思わず「ほし〜!」と叫んでしまいそうな丁寧な仕事の数々。秋田代表は角館樺細工、大館まげわっぱ、イタヤ細工、湯沢凧、銀線細工。


「阿久悠のいた時代」
篠田正浩・齋藤慎爾 柏書房 ¥2200
追悼アンゾロジーである。一時代を築いた作詞家の存在感の大きさ、小説家としての新たな資質が今甦る一冊。


「黒と茶の幻想」上下
恩田陸 講談社文庫 各¥619
舞台が日常的な場所であることが多い恩田作品の中、(Y島となってはいるが)珍しく屋久島が舞台。40歳目前の男女二組が屋久島で集う、という「夜のピクニック」20年後版、のような作品。いや、「黒と茶・・・」の初出が2001年だからこちらが先で「夜ピク」ができたのか。p177「おまえだって一緒に旅してるんだぜ。」というせりふがそのまま「夜ピク」につながってゆくじゃありませんか!
解説でも触れているように「麦の海に沈む果実」の寄宿校にいた「憂理」がエキセントリックに成長してここではキーマンになっている。
一番のテーマは、自分の持つ森(まだ気づくことのない、見つけられていない自分自身、ということか)を歩いてゆく、ということのメタファー化だと思う。深い一冊である。


「東北の巨樹・巨木」
日野東 葛西英明 無明舎 ¥1890
いきなり表紙が三春の滝桜である。風にそよぐ桜の枝が滝さながらに耳に届くような空の青さと風の気配。
以外にイチョウの巨樹が多いのね東北、と思いながらページをめくるとさすが福島は桜。
4月19,20日に行った福島でも県内の桜を携帯で写している福島人がいたし。最古のリンゴやマザーツリーも木になる青森だが秋田の和賀山塊もきっと、もっと・・・

4月21日(月)

「つきあいベタでいいんです」
平野恵理子 講談社 ¥1500
「きもの大好き!」の著者のため最初から共感を持って読み。シンプルな語り口とイラストで和みの一冊。忙しがらず丁寧に暮らす、って今一番ぜいたくなことかも。


「ひさしぶりにさようなら」
大道珠貴 講談社 ¥1400
家族というある意味閉じられた人間関係のぐずぐずでれでれした部分を描いた部分を描いた2つの作品集。劇的に変わる日常なんて無い、と実感してしまう一冊。


「引出物」
小山織 マガジンハウス ¥1500
「日本のクラシックの中から引出物にふさわしいものを提案」とあるとおり、美しい写真と照会文が嬉しい一冊。その巻頭を飾ったのが何と!秋田川連塗りの日の出盆。秋田の文化の面目躍如!


「乙女なげやり」
三浦しおん 太田出版 ¥1400
乙女という言葉となげやりという言葉をつなげたタイトルだけで内容が想像できる爆笑エッセイ。所々に呼んでみたくなる漫画や本が出ておりそちらも興味深く一気読み。ドラマの噂も面白し。

4月12日(土)

「ピアニシモ・ピアニシモ」
辻仁成 文芸春秋 ¥1571
前回読書日記「ナイトメア」に続いてしまった「心の闇」シリーズ。「ナイトメア」は20代から30代が主人公だったが、これは10代。そして校正は現代版古事記といったところ。デビュー作が「ピアニシモ」だったからミポリンと結婚してパパになった視点で新たに書いた、というところか?自分を含め親になるってやはりすごいことだと思うから。


「さよなら、そしてこんにちは」
原浩 光文社 ¥1500
これもまた3月28日日記の「明日の記憶」の作者の本である。こちらのほうをリクエストしており。読んでいくと、へぇ、こんな作風なんだ、重松清みたい、と思いつつ読了。主婦を含め様々な職種の皆さまの悲喜こもごもの奮戦?を描いた短編集。お坊さんのクリスマス、「マリークリスマス」が面白い。

4月6日(日)

「ドラママチ」
角田光代 文芸春秋 ¥1286
「マチ」が「町」でなく「待ち」なのだ、とわかったのは目次を見てから。もうすっかり「ドラマチックな町」なのかと思って借りている私。あらゆることを「待つ」ヒロインたちの踏み出せない一歩、踏み出す一歩を描いた短編集。喫茶店と駅が効果的に使われている。喫茶店は一人で行くときはブレイクタイムだが人と行く(特に異性だったりすると)ときは向かい合って話せることが条件であろう。喫茶店で携帯や雑誌を互いで見てるんじゃうちにいるときと変わらないからネェ。表紙がクラフトエヴイング商会で、何かを待っている女性の後姿のシンプルさがいかにも、でいい。


「ナイトメア」
小倉千加子 岩波書店 ¥1500
心理学者による心の迷路の物語。50代に突入した今は現実を生きることは当たり前の日常だが、20代は暗中模索、30代は芥川龍之介という感じか。現代の様々な青年事件の源が描かれているような文章がp80「ナイトメアは、母にただ自分の頭で物を考える人間になってほしかった。公平に子どもを愛してほしかった。世間の価値観で子どもを見る弱さを克服してほしかった。」とあるが結局親の弱さ、もろさが子どもに鏡のようにうつってしまったのが現代なのかもなぁ、と思う一冊。ちなみに「ナイトメア」は「悪夢」

3月28日(金)

「NOTHING」
中場利一 光文社 ¥1600
いろいろな事情を背負った主人公や友人を心のふれあいというキーワードでそっとつないでゆくご存知中場の純情短編集。


「麦の穂に沈む果実」
恩田陸 講談社文庫 ¥714
「黄昏の百合の骨」の導入編とも言う一冊。「黄昏・・・」の主人公の理瀬が自分の過去を取り戻す物語。そのまま映像化できそな学園ストーリー。


「夏の名残りの薔薇」
恩田陸 文春文庫 ¥590
読んでいるうちに真実は「ある」ものでなく「作られる」ものであり、一体誰が殺されたのか・などなど頭がぐるぐる回るような一冊。ラストさえも信じられなくなりそうななんかいミステリー。


「明日の記憶」
荻原浩 光文社 ¥1500
この人の別の本をリクエストしたが図書館の本棚にこれがあったので借り。映画でもそれをテレビでもやったので今さらって感じなんだけどさ。映画を観た友人たちは一様に「自分や旦那がこうなるかと思うと怖くて見てられなかった」と言っていた一冊。でもこの主人公はそれほどキレることなく穏やかに進行していっている(時間の問題でなく症状が)方だと思う、現実よりも。でもラストでたった一日で奥さんを忘れてしまうところはいかにも崩壊である。アリセプト、果たして・・・?

3月13日(木)

「黄昏の百合の骨」
恩田陸 講談社文庫 ¥648
「骨」というところが最後まで謎だったがどうしてもラストまで読んでしまって朝5時半まで寝過ごしてしまった一冊。関連のあるという「麦の海に沈む果実」も読んで恩田ワールドに浸りたい。主人公の理瀬の抱えたものやこれからも興味津々の一冊。


「円朝芝居噺  夫婦幽霊」
辻原登 講談社 ¥1700
久しぶりに行った図書館。落語版スラムダンクと思って見ている(草々君は桜木よ、四草は三井)あさのTV小説「ちりとてちん」に影響されて?借り。円朝の落語にかけた殺人事件の顛末を探ってゆく一冊。高島易断とか出てきて今の時代にもつながってるところがある時代長編。

2月26日(火)

「小学五年生」
重松清 文芸春秋 ¥1400
そうです、確かに子育てで思春期入口のこの時期の繊細さが親離れの一歩、とも言われます。自分で考え始める時期、自分らしさが発現する時期ということなのでしょう。さまざまな5年生の目を通して描かれる大人の世界が重松ワールド。Oさんに借り。読むのが遅くなってすみません。


「東京・地震・たんぽぽ」
豊島ミホ 集英社 ¥1300
これもOさんから借り。「檸檬の頃」が映画化された秋田出身の作家です。「檸檬の頃」は発見したOさんがいかにも秋田県南の風景、と言っていたが、これは東京が舞台。しかも大震災。不思議なのはこれだけ大地震なのに建物崩壊が中心で津波がないこと。連作風な部分もある短編集だが、幼児を失って自分はなんとかメールで救出された若いママの旦那は地震直後でも「家に戻るのは(奥さんの愚痴や怒りが)うざい」から職場に居残るほうを選ぶというところは今どきな感じ。ま、うちも夫は仕事柄地震が起きても家には帰らないもんね、と言っているが。グループホームでも罹災場面が出てきてこちらは自分か?などと思いながら読み。一作だけ本人が死んでしまう「だっこ」が切ない。

2月19日(火)

「『出来る人』の極意」
齊藤孝 マガジンハウス ¥1300
「¥1300なら安すぎ!と思いつつ味わい読み。大人気齊藤センセの「声に出して読みたい日本語」のマニュアル本、というところかな。人生の成功者になるのは話し方、というのは何度も引用する「感じの良い人になりなさい」と言った金八先生の卒業シーンのようです。p262では「ナンバ走り」も出てくるし。自分的に共感の一冊。


「新 風に吹かれて」
五木寛之 講談社 ¥1500
週刊現代連載の最新エッセイ。当たり前だけど五木さんの老いをかみしめながら読み。偉いわ〜、あんなに車好きでエッセイでも沢山書いてるのに最近は専らタクシー利用になっていて。最近の道路は初心者マークより高齢者マークの運転の方が多く怖かったりして、が秋田の現状。


「峠  上中下」
司馬遼太郎 新潮文庫 ¥各590くらい
齋藤センセの本だったかしら?「国家の品格」藤原正彦センセの本だったかしら?まさか「美しい国へ」のアベシン?この手の人たちの誰かが男の生き方として「峠」をお薦め、女性も必読の書、とか書いてあったのを夫に言ったら嬉々として購入、正月の埼玉で読んでました。で、この本で一ヶ月。残念ながら河井継之助を知らなかったので今ひとつ感情移入できぬまま一ヶ月以上かかって読了。何度も夫に「これってほんとに男の生き方として参考になってるんだよね?女性の行き方って影薄い奥さんのこと?」などと聞きながら読了。ふう・・・幕末の北越戦争の長岡藩のトップになった人の話。トップに上り詰めるまでは坂本竜馬っぽいと思っていたが結局武士として死んでしまった。消化不良で終わった感じだったが解説で「竜馬が行く」の次に書かれたのがこの本ということで納得。最後までわからなかったのが(きっと男性なら共感するのだろうか?)闘わず降伏すれば藩が県の形になったとしても知事(県令?)とかになって政治経済的理想を遂げられたのでは?という点。このことはp347でも『無駄ないくさだった。(中略)(負けた)この敗北は継之助の人間としての敗北であろう」と表現している。タイトルは演歌さながら人生の「峠」かしら?と思っていたがp426越後から会津への退却の峠だったらしく、「八十里こしぬけ武士の越す峠」と継之助自らが詠んでいた。

1月6日(日)

「顔に降りかかる雨」
桐野夏生 講談社 
93年の江戸川乱歩賞である。女流ハードボイルド作家誕生、との一冊だがやはり後年の名作「OUT」の人間描写には及ばない。結末のあっけない解決が強引かな?と思いつつそこまで楽しく読める「年末にどうぞ」の一冊(時間があるとき一気読みできます、ということです)


「江戸の職人 その「技」と「粋」な暮らし」
鈴木章生 青春出版社 ¥667
江戸文化の担い手であったが歴史に名を残すことなく作品だけ残して消えていった職人衆の暮らしぶりと心意気を味わう一冊。わかりやすく楽しく江戸を理解できるお勧めの一冊。


「世紀末思い出し笑い」
林真理子 文芸春秋 ¥1190
ご存知週刊文春のエッセイ集。1999出版だから確かに世紀末。今読むとp189、秋田での日本文化デザイン会議で内館さんとこまちに乗って秋田入りしたときの美しさや(そう、このシーンはそのままこまちのスタート時のCMに通じる)、p222で1998出版の「強運な女になる」について書いており懐かしい一冊。ちなみに「強運・・・」の読書日記は読書日記は2007.2.20をご参照下さい。


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