RUMIKOの読書日記

2015年
カウンター設置 2003/02/11

 

11月30日(月)

「世の中で一番おいしいのはつまみ食いである」 平松洋子 文春文庫 ¥600+税
素材の良さを生かした料理の豪快さと繊細さがリズミカルな文体で描かれ、料理の楽しさが伝わってくる良書。レシピも載ってるのでもちろんマイレシピ帳に写させていただく。じゃこピーマン、いつもしょうゆ味だったけど今度は塩で作ってみようかな。


「不良妻権」 土屋賢二 文春文庫 ¥540
ご存知ユーモア哲学者ツチヤ氏の詭弁エッセイ集。いじめられっこキャラも定着してほくそ笑みながら一気読み。それでも奥さまとは会話があるからやはり仲が良いのが伝わる。

11月25日(水)

去年は二番目の孫出産手伝いで埼玉暮らし。上の孫のお世話に若夫婦への家事支援と毎日めまぐるしく、にぎやかに暮らしていた様子が5年日記に書かれてます。それから一年、一歳の誕生会には餅背負うどころか、左手にバナナ、右手で餅をつかんで歩いているから子供の成長はすごい。私も先週末行った高橋優君ライブの元気をもらって来年もパワフルにいかなくちゃ。孫と遊ぶだけではなくてライブでスタンディングできる体力を養わないとね。

ジャイロスコープ」 伊坂幸太郎 新潮文庫 ¥550
ちょうど「グラスホッパー」公開中です。蝉役の山田君の場面がジャニーズ王子様キャラらしからず良いです。原作とは又違う脚本の力ですごくうまくまとめてくれていて映画として楽しめます。脚本の力をすごく感じさせる作品になりました。そしてその流れで読む本作品、いや~、名短編です!タイトルと中身のリンク度が素晴らしい。最後の書き下ろし短編で今までの作品がゆるやかにまとまってゆくところがすごいのだ。一番好きだったのは「彗星さんたち」という新幹線清掃チームの話だが((以前NHKとかでも取り上げられていたんじゃないだろうか?8分で車内清掃とかいうスゴ技で)いつもの本友Sさん、Kさんばかりでなく誰彼に勧めたい今年の一冊。


「カシオペアの丘で」上下 重松清 講談社文庫 ¥各648 
元の職場のOCMさんが春に退職、そのまま本を引き継いでくれたYCMさんより借り。お貸ししていた本を引き取りに行ったら倍返し以上に大量の本を貸してくれたのであった。こんなとき本は本を呼ぶ、本は友を呼ぶ、を実感。
さぁ、久しぶりに読む重松作品。この本のテーマは「勇気」だな。作品の中でp243「俺たちがガキの頃に教わった勇気とは、未来に立ち向かう勇気だった。でも、俺は思う。おとなになったら、勇気はもう一つ加わる。過去とまっすぐに向き合う勇気だ。後ろを振り返るべきときには、きちんと振り返るという勇気だ。」この作品も登場人物が過去と向き合うために上下2巻を費やしている。
癌で死んでゆくシュンがp59「パパはおまえに遺産なんてのこしてやれないけど、名前っていうのは親から子供に贈る最初のプレゼントだから、これがパパの遺産なんだ。最高の遺産だぞ。」という言葉なんぞは本を読む習慣ていいぞ~、と若い人たちに言いたい。セカイノオワリの「プレゼント」まで心に響いてしまった。
朝ドラで炭鉱も舞台の一つになっているがこの本も北海道の炭鉱の町のお話で、炭鉱というものが良くも悪くも強い影響を与えている物語。

10月22日(木)

いやぁ、秋も深まりすぎて暖房器具が離せないほど。それでも芸術の秋、モネ展、21世紀美術館と楽しみました。家の中では孫服に続いて孫のリカちゃん服とメルちゃん服の発注を受けて手が止まりません。人形はサイズ変わらないし、パターン一つでバラエティに富んだ服が作れるので楽勝。というわけで読書進まず。

「私と踊って」 恩田陸 新潮文庫 ¥630
久しぶりの短編集である。が意外にもその中に後の恩田ワールドに発展する珠玉もあるから恩田さんのは短編集でも気が抜けないのだ。そして構成力ある力強い長編も好きだが短編にも必ず良いのがあって読み返す。なんとこれも3回読みしての感想。だってなんとあとがきに恩田さん自身の一作一作への心覚えが書いてあるのだ!タイトル作の芸術性もも好きだが、こうなってくると嗜好としか言えないくらいどうしても好みなのは、昔の短編集でも空気感がジブリ映画の「ハウル」に似て(どちらが影響を受けたのかは定かではないが)好きだった「街が動く」と似たテーマで更にスケールアップした「少女曼荼羅」の街や建物がごっとんと動く空間軸が大好きなのであった。以前「悪夢ちゃん」のドラマ化にもびっくりした恩田ワールドは映像化しにくいがこれもまた難しいだろうなぁと自分だけが頭の中で映像化してにんまり楽しめる作品。


「3652」 伊坂幸太郎 新潮文庫 ¥670
読みながらずーっとタイトルの意味を考えていたが、デビュー10周年×一年365日+うるう年2日分の合計、との事だそうで納得。エッセイ集&マイブームが満載なのでお住まいの仙台の事や震災の事なども描かれていて11月7日から公開の「グラスホッパー」への予習としても楽しく読み。

10月5日(月)

「ブルーマーダー」 誉田哲也 光文社文庫 ¥740
彼岸埼玉で読み。いやー、久しぶりに戻ってきた姫川シリーズ。もうすっかり竹内結子ちゃん、西島君、武田さんを頭で動かしながら一気読み。この本も大量殺人鬼の逮捕劇ではあるが、哀しくラストは誉田さんらしいユーモアもあり。で、でもいくら結子ちゃん、いや姫川が納得しても、西島君、いや菊田が移動後すぐ結婚するなんて・・・あまりにも現実にありそう・・・ってこの作品の中ではもちろん犯人訴追の中では些細な事のようにに描かれているが、ついついそちらを気にしてしまう私。


三陸鉄道情熱復活物語 笑顔をつなぐ、ずっと・・・」 品川雅彦 三省堂 ¥1500
復興支援と言えばおこがましいが、去年三鉄に乗って望月社長のお話を伺う機会があった。写真に納まって頂く時「今頃来てすみません」と言ったら「それでも乗りに来てもらうと(宿泊代や食事、お土産など)周辺含めて一万円くらいは使ってくれるので充分支援になるんです」とおっしゃってくれた。その後一年以上が過ぎ、最近ふっと「もしかして一番すごいのは震災が起こったときに的確に列車を制御した運転士さんだったのかも」と夫に言ったらこの本を。現地にも行ったしお話も伺ってはいたが、改めて詳細を学ぶと、皆さんの復興への強い思いが伝わって来た。夫もあちこち付箋を付けたままにしてるが、p219で再開業のコメントで社長が「さあ、『ここまで』は完了。明日からは『ここから』が始まる。お涙ちょうだいの物語は今日までだ。明日からが勝負の始まりだ」と言ったコメントが大ヒットドラマ「あまちゃん」で夏ばっばが被災後に言った「いつまでも被災者になってしまうべ(前を向け)」と同じで強く響く。

9月6日(日)

たまっていた本が一週間で2冊はけ・・・と言う事はこの3冊は面白く、読みやすいことの証明。朝晩涼しくなり読書の秋の到来です。それにしても池井戸さん「民王」」ドラマ化ありがとう。いよいよラスト間近、毎回遠藤さん、菅田君に爆笑ほろりさせてもらってます。次のクールはなにか来るかな?ラストと言えば今日は「アンフェア」行けるかな?篠原さんの美の秘訣がヨガにあり、と番宣で見て自分もますますヨガにはまりそう・・・

「ワーキングホリデー」 坂木司 文春文庫 ¥620
読後すっきり!の楽しい一冊。「和菓子のアン」で知ってから日常ミステリーの人、と思ってたがこんなにテンポの良い重松さん+堂場さんみたいな家庭物書くんだなぁ、と感心しつつ読み。存在を初めて知らされた息子とのひと夏を描く。ぎごちなく繊細な交わりがほのぼの。でもあくまでテンポ良く。ホスト時代のお客様ナナちゃんが印象的なことを言う場面がいい。p249~ナナちゃんは主人公の大和に息子を甘やかせて上げて、と言う。ナナちゃんは働くのが大好きな両親に甘えた事がなかったから。お金には不自由しなかったが放っておかれて甘えた事がなかった(多分いわゆる駄々をこねない良い子ちゃんだった?)から。甘やかす事で「バカな子供になるかもしれない。皆に笑われるかもしれない。でも少なくとも不幸な子供にならないってことだけはあたしが保証できる」彼女の言葉は親でなくても子供の全部を受け入れてくれる大人の存在の大切さを言ってるんだと思う。今の家族って忙しそうだし。


「気分上々」 森絵都 角川文庫 ¥560+税
森さんの本は大抵本&映画友のSさんから借りるが珍しく自分で購入。短編集(しかも一作はたった3ページのショートショート!)だが矢張り秀逸なのは最後に掲載された文庫タイトルと同じ「気分上々」。父を亡くした男子中学生を細やかで明るく描いたところが現実的ですごく救われる一作。個人的に好きだったのは「プレノワール」ガレット大好きな自分にはその誕生に至る物語みたいで面白くラストの母親とのつながりが温かく、ガレッ誕生の地ブルターニュ地方の人と土地の様子もわかって楽しく読めた。

8月30日(日)

「狭小住宅」 新城耕 集英社文庫 ¥400
営業マンならこの程度は普通と言われれば返す言葉もないが、城繁幸さんの解説でp185「外国でも働きすぎて体を壊すビジネスマンはいるけれども、それは超一流のエリート限定であり、年収五百万円くらいのサラリーマンが過労死するのは日本だけである。」という文が現代日本の若者の悲哀の証明である。販売に結びつかなければ罵倒する上司に傷つきながら成長してゆく若者の姿を描いていて我が子がこうなら、と親ならハラハラしてしまう一冊。でもそこで残ってゆく主人公の姿が救いかな。


「ローマ法王に米を食べさせた男」 高野城鮮 講談社+α新書 ¥890
つくづく脚本の力ってすごいと思わせる。そうです、今ドラマになってる「ナポレオンの村」です。読みたいと思ってたらテレビ化の方が早く面白く見てます。実話です。過疎の村を救う、というよりこの人マーケティングがうまいんだなぁ・・・と感心しながら読める一冊。企画も大事だが行動はもっと大事よって基本か・・・それでもドラマは数人だが若者もいるし、以前四万十川周辺の地域起こし協力隊のドラマもやってたが、どちらも昨日行った秋田県内八木沢集落よりはずっと人が多いよ、と突っ込みながら読了。それにしてもここにも「奇跡のりんご」の木村さんの指導が入ってすごい。ものごとを進めるにあたっての官公庁の姿勢も現実的に描かれ非常に読みやすい一冊。でも一番素晴らしいのは高野さんをつぶそうとせずに後方支援してくれた池田課長だな。彼と高野さんのやり取りは是非読んで欲しい。良い人材を育てるのも使うのもそのひと(ここでは上司の池田さん)の器次第、ということね。神子原米の売り方が面白い(p108~)そしてp213高野さん宅(お寺ということか?作者の変わったお名前はお寺の跡継ぎだったんですね・・・)にも無農薬無肥で育っているビワの木が4本ある、というのを読んだらちょうど今年初めて収穫なった我が家のビワちゃんと一緒で嬉しかった。うちのビワちゃんも鉢入り娘?だし。

8月23日(日)

大曲花火帰りのRUMIKOです。今年は道路混雑に巻き込まれず12時前の帰還でラッキー。お盆埼玉ではこれまた何かに影響されて恩田陸さん「上と外」を読み返してました。久しぶりに会った娘Aに薦められて読んだ本の充実振りに合わない低価格にびっくりのRUMIKOでもありました。そしてもちろん話題の2作も!

「火花」 又吉直樹 文藝春秋 ¥970
芥川賞受賞作で話題沸騰ベストセラーをお得な文藝春秋で購入。だって羽田圭介君の作品も併載ですから。ちなみに羽田君は1985年生まれ、娘よりも一年後に生まれた人が芥川賞、の時代なんですね~。「火花」に関しては「僕」を取り巻く世界を描いてこういう形は芥川賞になるだろうな~、と思われる内容。僕と師匠の時間を書き進めながら少しずつ「僕」のコンビは売れ始め、でも解散し、神谷も・・・・と収拾をつけるのが大変だったんだろうなぁ、と思わせるラストを迎える。又吉君なら20歳のときこんな事を考えてたんだろうけど世の中の20歳ってこんなにものを考えているのかな?と思うほど(少なくともかなり昔に二十歳だった自分はこんなに考えてなかったなぁ・・・自分の矮小さを棚に上げて外の世界を広げたがってた気がする)自分の世界でぐるぐる回っていて独特な主人公が共感を呼んでのベストセラーなんだろうか。


「スクラップ・アンド・ビルド」 羽田圭介 文藝春秋 ¥970
高齢者の生、若者の生を対比させながら現実を切り取っていくが、介護というテーマを既にある子どもや嫁の視点でなく孫が関わっている(受診介助、入浴介助、孫がやってるってすごいことだよ!)部分に特化して描いている視点が新しく、死にたいという祖父、それを見て生きるための筋力トレーニングを始める孫というのが題名になっているのか?親世代は共働きが当然という現在、その父母が要介護状態になった場合、親は仕事を辞めずに社会に出る直前の孫が介護に携わるという例は実際に増えていると思うし、実の家族は結構親にはきつい言葉を投げるというのはあちこちで見ている。又吉君「火花」同様主人公の設定は作者と等身大のようだがどちらもラストは一歩踏み出す、というところが現在芥川賞らしいところか。読みやすさでは羽田君、というのも自分の現実に沿ってるからかも。閉塞感のある若者には又吉君なのかな。


「姉の結婚」 群ようこ 集英社文庫 ¥371
こんなに面白いのにこの値段って安すぎませんか?どうぞ試しに読んでみてください、珈琲一杯分ですよ、と見えない誰かにアピールしつつ、一作ごとに身につまされながら読了。しかも群さんは私たち世代の人だし、初刊が1995年頃だから、そうよ私の時代にどんぴしゃなのよ!「面白かった~!」と言って貸してくれたのが我が娘だから、彼女もきっと自分や家族と比べながら読んだに違いない。「思わず涙」と言ってたがどの作品だろう?矢張り結婚系か・・・?親子のせいか娘の貸してくれる本は「面白い」というときは必ず面白いし、上手に今の彼女に近いものが多いので気持ちを学ぶいいお手本にもなっている。私は巻頭の「ご祝儀袋」の若い夫婦があの頃の自分と重なっていていきなりの共感だった。その作品も年頃年頃の女子の姿と重なっていて笑えるけどガンバレと応援したくなるおすすめの一冊。

8月2日(日)

またまた一ヶ月のご無沙汰・・・この間月例埼玉往復こまちで読了分もあるのに次の本が終わらず・・・でもう一か月。11月封切りの「グラスホッパー」読み返してたんです!あぁ、今週は竿燈、東北の夏祭りも来ます。そして次の週はお盆。なんか今年は夏が短い気がするなぁ・・・

「無印良女」」 群ようこ 角川文庫 ¥480+税
1986年初出の文庫化である。本友Sさんから借りてこまちで読む。文庫化された頃の自分は恩田陸「ドミノ」「ユージニア」にはまっていて他の作家にまで手が回らなかったと思う。等身大エッセイで読みやすい。おそらく同じような世代であろう群さんがp22「マリコちゃんのしあわせ」で親友について「何年会わなくてもどんなに二人の環境が違おうとも心が通じる。私とマリコのつきあいは、かれこれ20年になる。」とあるが、私自身お互い3月生まれで毎年春に会う高校時代の友人とは、この度ついに娘のマンションで孫を見せながらのランチになり、友情40年を振り返る事になったのであった。という私事はさておき、お嬢様だったマリコちゃんが意外や結婚相手が×で出直すことになったが、それを温かく語る群さんの筆が嬉しい。


「異国のおじさんを伴う」 森絵都 文春文庫 ¥470+税
本友、シネ友のSさんより借り。うーん、この薄さでこの値段なら10円違いで「無印・・・」かな?などと失礼な事を考えながら、、そして森さん、短編は苦手かな~などとますます失礼な事を考えつつ読み進んでいったら、がーん!「母の北上」でヘルパー時代訪問していた女性を思い出して胸が一杯!その方も私たちが「Eさん部屋」と呼んでいたトイレと浴室向かいの3条ほどの窓の無い部屋に服以外の殆ど全てを入れて暮らしており、「この部屋が私のお城なんです」と新しいヘルパーさんが訪問するたびに案内してほほえんでいた。自分の好きな言葉を壁に貼ったりしてあって、昔の姑に仕えたお嫁さんて感じの人に取ってその通りなんだろうな、と思って眺めたものだった。申し送りのメモや買い置き、デイサービスの準備などが無くなっていると大抵Eさん部屋で発見できた。その当時の彼女の気持ちがもう少し頭がはっきりしている本作のお母さんの言葉で理解できたようで自分的に好きな作品。本作での名言はp161「二年前に父が逝って以来、母が一人住まいをしているこの2LDKの中でささやかな北上を遂げてきた事実には気づいていた。母は明らかに北へ、北へと舵を取っている。まるで本能的に死に床を求める獣みたいに。」ってどの人にも当てはまりそう。また、「クリスマスイブを三日後に控えた日曜の・・・」でも、もうクリスマスにお洒落も期待もしないぜ、的な年齢になったOLが、母子と間違われる90代近い老嬢と高齢男性が実はカップルであった事に気づいてもう一度クリスマス戦線?復帰?してゆく姿もいい。p54「三十代の身空で、クリスマスイブを三日後に控えた新宿伊勢丹の荒波に負けてはいられない。最後に笑うのは最後まで生きて求め続けた人間なのだと。」って我が娘や私に向けられたエールだと思いたい。人生棺桶のふたを閉めるまでわかんない。この薄さなのにこの長い感想を書かせた森さんはやはりすごいのかもね。


「架空の球を追う」 森絵都 文春文庫 ¥419+税
こちらも本&シネマ友のSさんより。今回の森さんの2冊は「伴う」「追う」と動詞タイトルなのでなんかポジティブな気分にさせられる2冊だった。タイトルの短編は今はやりのマザコンとは違った仲良し息子&ママの萌芽を描いたような作品だが、「でも」の2文字でたとえ息子がいなくても読者を妙に納得させてしまうところが秀逸。「ハチの巣騒動」の力みの無い若者や「あの角を過ぎたところに」のちょっとブラックなラストも味わえる薄くて充実のショートショート。

7月2日(木)

「鍵」 乃南アサ 講談社文庫 ¥505
大人の休日を共に楽しむ友人より。年に一度の解放感。エッセイなどは楽しんでいたが、2000年に代表作「凍える牙」を読んで以来。面白くて帰りのこまちで一気読みできたがやはりあとがきにある通り、単なるミステリーではなくて家族それぞれが親の死を超えて自分を発見し、自立してゆく物語。29歳、25歳、女子高生の兄妹ではまだ親の死を無念に思うし、母が障害のある妹に手厚くなるのを淋しい思いで見る兄、というのもうなずける。そんな兄の心に触れるとだからこそ子どもの心は大切にしないとね、とも思う。そしてこのたくさんの事件、やはり現実ではもっと早く通報してれば防げる事件もあったんじゃないかな?とも思う。ま、そうすると小説にならないからね。


「あなたの本」 誉田哲也 中公文庫 ¥580
宇宙人の話が出てくるし、短編集だし「星新一みたいだなぁ・・・」と思ったらなんと解説で誉田さんが人生初めて好きになった作家が「星新一」ということで納得!最初の作品「帰省」も妹の恋人を殺したのは妹か?姉か?と疑いながら読むうちにラストで!ピュアファンタジーな「天使のレシート」「見守る事しかできなくて」はそれこそピュアで好感。不条理さを嫌う人には難しい評価だが、この本を好きなあなたもきっといるはず。

6月17日(水)

まさか一か月近くも放置するとは!6月埼玉での法事出席、戻ってからのオープンガーデン三昧(3日連続で17軒)でやっと今週落ち着いて読書日記の下書きを見たらなんと!もうすぐ一ヶ月のブランク!読書仲間Sさんからの原田マハシリーズも含め、今回は長編も続いたから長く書けずもあったかな?いやいや、最近孫がはまってるリカちゃん服作りに熱中も一因かも。だってすぐできて可愛いので手が止まらないんだもん!

「でーれーガールズ」 原田マハ 祥伝社文庫
原田さんには珍しい女子物。高校時代と45歳の今をリンクさせて描くがラストで武美が・・・ってオチにしたのかい!って突っ込みたくなるが・・・私的には懐かしむより「でーれー」な女子高の部分を書いてほしかったかな。だって時分も女子高だったけど、あの時代ってほんとに皆が可能性を秘め、飛び立とうとする濃い毎日だったもんなぁ・・・私たちはよく「毎日がお祭り」って言ってたけど。漫画家になった鮎子がマルニのワンピを着るところは等身大で◎


「まぐだら屋のマリア」 原田マハ 幻冬舎文庫 ¥690+税
上記の本とこれはSさんより借り。先日読んだ女子高生友情物より読み応えのある一冊。登場人物がキリスト周辺の名前だが、唯一違う(もしかして弟子とかにいるのか?)克夫さんの存在がとても光っている。タイトルからしてマグダラのマリアでしょ?それぞれ過去を持つ者同士が心寄せ合って再生しようとする物語。重要な登場人物全てに母の存在があるのも特徴。p196「世界は、まったく自分たちとは無関係にまぶしい季節を迎えている。」という文章は遠藤周作の「沈黙」を想起。p218ネットや携帯だけでなくテレビや新聞さえも無い果ての町だからこそ「心を迷わせるいかなる情報も耳に入らないという不思議は、この場所に守られているという不思議でもあった」というところも納得。これって子ども時代がそうじゃん。子どもには情報は理解できないから母親とかが窓口に子どもを守っている、につながるようで。


「サウスバウンド」 奥田英朗 講談社文庫 ¥900+税 
まとめ買いしてたから気づかなかったが、これって文庫で900円だった?とびっくり。直木賞受賞後第一作で映画化もされていたのにごめんね、今頃で・・・である。帯に「我が家の父は変人なのか?勇者なのか?」とあり、ラストで成長してきた子ども達が親「を」温かく見守るになるのではあるが(たいていは親「が」子ども「を」見守んだけど)自分の信念を貫いて生きるのは自分だけならご自由に、だが家族という関係を作ってしまったらちょっと待て、と思ってしまうのはちょっと哀しいけど、庶民ゆえか?母性本能か?子どもが東京で学校に行ってる時はモンスターペアレントみたいだし。(p300周辺)小六の主人公二郎にもp308「おかあさんに、あんまりお金の心配をさせない方がいいと思う(後略)」と言われてるし。それでも姉の心の変化が一番面白く、後編沖縄での強烈な島の力も味わわせてくれる読みやすい一冊。これは南だからできるのかな?田舎ならどこでもできるのかな?と思いながら読み。

5月20日(水)

「しょうがない女」 平安寿子 中公文庫 ¥680
GWに読み終わるかと思って埼玉に持参、でも優先順位の関係で今まで。友人の会社でパートをする主人公の日々を追う。平さんはもう少し若い女性を描くと生き生きと動かせるとも思うが、中年の女性は現実と重なりすぎて小説感が減ってしまうのも致し方ない。私たちの現実もちっともドラマチックではないものね。顧客クレーム、パート仲間、友人の女社長のグチや怒りを受け止めながらラストでの爆弾発言ができるところで初めて現実から離れてスッとした。その一方で現実はこうじゃないんだよなぁ・・・という一抹の寂しさも否めず。


「人生を励ます『この一言』」 秋庭道博 プレジデント社 ¥1236
こちらはホリデー本友さんよりいただき。半ページで故事から政治家、経営者の一言を平易に説明。こちらも実家に持参して母の一人時間の一助にするつもり。


「朝に効くスープ 夜に効くスープ」 浜内千波 日本文芸社 ¥1260
こちらも本友さんより。これは価値ある一冊でこの値段とは!実は娘Aに初めて買ってやった初心者向け料理本は浜内さんの本でした~。しかも今年のバースデープレゼントに娘Bからバーミックスのプレゼント、なので即読み、付箋し、レシピ長に記載。娘Aにあげよう、と思った一冊。ちょうど5月9日の朝日新聞beにもスープレシピが掲載であまりにもタイムリー!それを書いた料理研究家の方はスープで10キロダイエット、とあったので」切抜きを娘Aの宅急便にもしのばせ、レトルトスープを大量に送ったばかり。

5月8日(金)

「メイ牛山のもっと長寿の食卓」 メイ牛山 エピデンスグループ情報センター出版局 
1990年頃に80歳で「長寿の食卓」を出したそうである。めでたいことに2002、91歳で「もっと長寿の食卓を出版」説得力あり、の一冊。食欲も元気もありでお羨ましい限りのお姿である。p163で「私の予想では、今後二十年の間にものすごく病人が増えるはずです。食に不信感をともなう事故も増えてくるでしょう」と書いてあるのは慧眼である。でもメイさんは「でも、それは、いわば旧時代の文化が破壊される時期でもあるのだろうと思います。」と付け足してあるところは現在に通じていてさすが。P20でメイさんが飲んでるという水道水をミネラルウォーターにするために使っている太陽石って昔実家でもやってたなぁ、と思い出す。大切なのは続けることかもね。多分実家ではいつの間にか庭に捨ててたんだろう。こちらも本友さんより。実家に置いて母に読んでもらう事に。見習ってアスパラ生で食べてみたがちょっと無理だったのは新鮮さの問題?でもナッツや干しブドウは簡単に真似できそう。


「つい誰かに話したくなる雑学の本」 日本社 ¥864
こちらも本友さんから。移動の電車や飛行機、病院での順番待ち等、時間つぶしに気軽に楽しめる。こういう本が一冊あると結構鉄板。雑学なのでどこから読んでも大丈夫だし。ということでこちらも実家に。

4月23日(木)

「ロスト・ケア」 葉真中顕 光文社文庫 ¥680+税
文庫化になった帯がすごい。新人賞受賞、刊行時から話題沸騰!圧巻のデビュー作対に文庫化!等々。そしてミステリーではありつつ現代の問題を描いている点では舞台が斬新。結構最後までだまされてたけど、映像化するとかt難にトリックが見破られそう。タイトルに通じる犯人の考えの殺す=ロストすることで彼らと彼らの家族を救う=ケア、これも介護の一端、と言い切る強さがすごい。一番の驚きはラスト近くでさりげなく明かされる登場人物の年齢だが、「犯罪(クライム)」と「罪(シン)」の違いを堂々と宣言する犯人に無力感を抱く検事の苦悩もリアル。施設名や政策など本だとは思っていてもついついニュースな話題と重ねてしまう。特にp108~p110.。そして似た犯罪も実在したような・・・


「しない生活」 小池龍之介 幻冬舎新書 ¥780+税
朝日新聞に2011~去年まで連載のエッセイ。自分よりも娘たちに近い年齢の著者だが、この静けさは東大だから?僧侶だから?「しない」って何をしないのか?と思いつつ一般向けの座禅指導、執筆などご本人は忙しそうに活躍していらっしゃる。おそらくこれは若者に向けて書かれた心を鎮めるためのエッセイなのだと思う。面白いのは殺生をしない為に蚊やシロアリを殺せない著者と周囲の人々との軋轢。自分の正義の為に周囲に我慢を強いたり不快にさせたりするのってどうよ?とも思うけどね。ご本人もp203で「宗教というものの恐ろしい点は、我ながらこうしていつの間にか『正しいことを貫くのは良い事だ』と思い込み他人を苦しめる原理主義者になってしまいやすいことです。」と自戒している。

4月1日(水)

「けむたい後輩」 柚木麻子 幻冬舎文庫 ¥580+税
柚木さんを注目し、実はこっそり立ち読みしてた「ランチのアッコちゃん」これもひとつの先輩、後輩物語でもあるのだけれど、本作は女子大時代から卒業後までの更に若い先輩後輩物語。そして知りませんでした、矢田ちゃん好きで見ていた「嘆きの美女」も柚木さんだったのね・・・柚木さんは若い女性の一面を切り取るのがうまい。先輩としてあがめられる栞子ちゃんみたいな子はいそうだが(特にあがめるほうの真実子ちゃんみたいな地方出身者から見たらハマっ子なんてまぶしすぎる!)あがめているうちにひょいひょいとステージアップしていく真実子ちゃんのほうの物語は少し非現実的かな?と。それでもラストで栞子ちゃんにきっぱり!はこちらも大いに溜飲が下がって、真実ちゃんいいぞ!と思いながらあっという間に読了。思えば制服の高校生から私服になる大学時代ってさなぎが蝶に変わるようなもの。うちの大学は特に可愛い子が多かったから確かに同性ながらお洒落女子をまぶしく見たことがあったなぁ、と輝いた時代を懐かしむ。


「賢く生きるより 辛抱強いバカになれ」 稲盛和夫 山中伸弥 朝日新聞出版 ¥1300+税
京都賞30周年記念対談、ということである。山中さんも2004年に研究助成金をもらっていた、との縁のようで。稲盛さんが秋田で講演会をしたときに聞きにいったがさすがの人気で会場は企業人や筆記具片手の若者集団で満員だった。あのお年でいまだ人のため、会社のために奔走していらっしゃる稲盛さんに頭が下がった。でもやる気に年齢は関係ないのね。真のリーダーとは後に続く者に未来図を示せる人、という言葉は子育てにも通じて大切な指針。すごいのはp225~山中さんの柔道の先生が病を得て70歳で亡くなるのだが、その3ヶ月前に会った山中さんに「レジリエンス」という言葉を教えてくれた事。そんな状態でもまだ人に伝える言葉を人は持っているのだ。レジリエンスとはつらい出来事があったときに、しなやかに適応して生き延びる力のこと。そしてそれは鍛えることができる、としがいってくれた、という場面。自分の余命いくばくも無いのに腐らず人に感謝する力を持つ先生の姿が素晴らしく、感謝する心は稲盛さんの利他の心にも通じる、とおっしゃっていて勉強になった。

3月24日(火)

「ダイイング・アイ」 東野圭吾 光文社文庫 ¥667+税
死ぬときに見た風景は網膜に焼きつく(ので殺人犯が検挙できる)というパターンのドラマがあったりするが真偽のほどはともかく、この本はその逆バージョン。今わの際の被害者の目が加害者の心を蝕み、その後の人生を狂わせて行く、という作品。因果応報、天網恢恢素にしてして洩らさず、ということわざそのものである。ストーリーの構成がうまいので最後まで飽きさせないのはさすが東野さん。秋田に嫁いで30ン年、娘出産後から友達になりずーっと共に頑張ってきたね~、と今懐かしく振り返られるようになったママ友Tさんより借り。お互い3月生まれ、又一つ年を重ねながら友情に感謝。


「コンカツ?」 石田衣良 文春文庫 ¥560+税 
娘より借り。石田さんの「シューカツ!」(私たち世代には就活でなく終活に見えてしまう・・・)ではなくこちらを買ったところがリアルすぎ。ルームシェアする4人の女子が幸せ求めて合コン、お見合いパーティその他あらゆる出会いを積極的に活用するエネルギーが楽しくて一気読み。面白いのは婚活中の智香の親が60歳を過ぎて乳の浮気が原因で離婚、そしてその後母にも恋人が・・・・元気な60歳にとまどい、結婚そのものにも疑問を感じる智香、でも勧め進め!と娘を思い浮かべながら読み進む。そんな4人のラストは?彼女達の素敵なところは生き生きと働いて仕事に誇りを持ちお洒落をして自分に磨きをかけて堂々と自分の足で幸せをつかみに行くから。他の人生を歩む友人との対比を加えつつ、迷いながらも自分の足で立つ事の大切さが彼女達を輝かせている。偉いよ、と4人の女性に言ってあげたい親心。


「整体かれんだー 旬な身体になる」 片山洋次郎 文春文庫 ¥570+税
ホリデー仲間のMさんより借り。入会時、もともと好きなダンス系に熱中するのはわかっていたが、まさかこんなにはまるとは!というのがヨガの暮らす。Mさんも柔軟で見習わなくてはと思っているが、貸してくれたこの本はなんと理路整然と身体の仕組みと季節の影響が書いてありこりゃあ買って実践しなきゃ、荘よついでに娘の分も・・・と心に誓うRUMIKO。あまりの良さにメモ片手に読み続けた一冊。人間の体はすごい!侮るなかれ身体の声!

3月15日(月)

いやぁ、怠慢怠慢怠慢です。秋田にいました、読んでました。読むだけ読んで放置。反省。

「今日も ていねいに。」 松浦弥太郎 PHP ¥1300+税
こちらも本友さんから借りた嬉しい一冊。帯には「よく働き、よく暮らすための実用集」とあるが、本書が勧めている「よく働き」はがむしゃらに働くのではなく、自分のペースを守って「良く」働くということで今の風潮に合っているかも。2009.11.26にも読んでいるが当時も気に入ったのは自分のペースを保った暮らしぶり。ただそれが出来るためにはどんな組織でもトップに立つ事、もしくは自営業になることなのかな?それにつけても2009は伊坂君追っかけだったなぁ・・・「グラスホッパー」も今頃だが映画化。見に行くだろうなぁ・・・


「雨ニモマケズ」の人生ノート」 本多信一 大和出版 ¥1350
こちらも本友さんより借り。私も中学の頃「雨ニモマケズ」壁に貼ってたなぁ・・・進路は決めてたけど多分生き方について考えてたんだろうなぁ・・・あの当時から好きだったフレーズは「サムサノナツハオロオロアルキ」自然の前になすすべのない人間の現実を感じてたのかなぁ・・・中小企業診断士をしながら週3日無料で人生相談にのる著者が賢治の行き方をひもとく。そしたらビンゴ、先日初めて賢治の香り漂う花巻にお泊り。町のあちこちに賢治のフレーズが目に付いてさすが、と思った。要再訪。


「あたらしい あたりまえ。」 松浦弥太郎 PHP ¥1200 
こちらも本友さんより借り。「今日も・・・」の姉妹作のような内容で好感。だからもちろん「よく暮らす」ことがテーマ。p36で「どちらか迷ったらしんどい道を選ぶ」というのは奇しくも自分と似た考え方で共感。そしてp41「どこへも出かけなくてもわくわくできる(中略)日常の真ん中、近いところにわくわくを見つける名人になれば、いつのまにか退屈なんて、どこかに消え去っていく」という部分は、以前へるぱーをしていた時に俳句を趣味にしていた方が複数いらして皆さん口を揃えて「旅行とかできなくなっても小さな日常に感動の種を見つけられる」と言っていて非常に学ばされたことにつながる。確かに年を取るにつれて行動範囲や友人などが減ってくるけどどれを受け入れて尚生きよ、という先人の教えだと思う。


「木暮荘物語」 三浦しおん 祥伝社文庫 ¥600+税
こちらはドラマ&映画&伊坂同好会2人秋田支部の同胞Sさんより借り。築ン十年のボロアパートを舞台に住民達や周囲の人のエピソードを描く。日常を描くと三浦さんはうまい!そして、そして娘が中学の頃からの15年の謎が解決!それは「柱の実り」の章でトリマーが主役の作中でp95「ボルゾイなんて牛みたいな巨大な犬」という行。当時住んでいたところ周辺で巨大な犬が飼い主に連れられて散歩しているのを見るたび子ども達が「牛犬がいた!」と喜んでいたがそうあれはボルゾイという種類だったのねぇ・・・巨躯の割りに大人しそうだったので見るのが嬉しそうだったのが懐かしい


「強運の持ち主」 瀬尾まい子 文春文庫 ¥500+税
占い師がヒロイン、という面白い設定なので私も占ってもらいたいなぁ、などと思いつつ読み。これもSさんより借り。ちなみにヨガ教室の先生は手相を見てくれるがやはりきちんと見てもらうのは怖いかも。ちなみに私は強運の持ち主か?はわからないが娘の旦那さんには冗談で「敵に回すと怖いよ~」と言っている。30年以上連れ添った夫の本音を聞きたいところ。楽しいのは「最後」を予知できる武田君のパート。かれはカップルが分かれるとか、死とかリストラとかもうすぐこの局面は終わり、というのが見えるらしい。そして彼を占ったルイーズさんの言葉が良い。p199「終わりは時々やって来て、でもずっと続いてく。それを、繰り返すたびにちょっとずつ幸せが増えていく感じかな」言われたら嬉しいかも。そしてタイトルと同名の最終章。どん底運になっていきそうなパートナーを心配しつつ、彼の悪運期を引っ張り上げる自分や周りの人の力を信じてゆくラストは更に力強くておすすめの一冊。

2月17日(火)

「キネマの神様」 原田マハ 文春文庫 ¥620+税
こちらもSさんから借りて年越しながら読んだ一冊。「本日はお日柄もよく」や名著「楽園のカンヴァス」と既読の原田作品に続いてすごいよ、原田さん!面白すぎるしヒロインのお父さん羨ましすぎる!大好きな趣味が報われて生きがいになってゆく様子がテンポ良く描かれている一方で「映友」編集部の筋の通った仕事ぶりも小気味良くて共感。今年最初の一冊がこれでこの一年に弾みがつくかな。


「邂逅の森」 熊谷達也 文春文庫 ¥714
阿仁マタギの世界が舞台、とのことで直木賞受賞直後から気になっていたのでようやく購入。主人公は鉱山にも入るのでそこでの話も興味深い。主人公が阿仁を追われて高山に入り、そこもまた出て新生活を始めて一家を構えて狩猟を再開、ついにはマタギを辞めるかの決断に至るまでの山での暮らしを骨太に描いた作品。人も自然の一部であることをわからせてくれる特異な一冊。邂逅とはしばらくあわなかった人などに偶然巡り合うこと、重要な出会い、だそうだがここでは猟の対象になる獣達も山の神が宿ったものとも考えられ、又山の神に導かれて狩猟を完遂できる、などの表現もあり、マタギの仕事そのものを表わしているようで良い題名だと思った。


「いつまでも、をんな」 丹生谷真実 主婦と生活社 ¥1500
エレガンスを学ぶフィニッシングスクール主催者の方の本でこちらも今年最初の本友さんより借り。立ち居振る舞いもなかなか身につかないのが悩みだけれど、心の持ちようで気持ちにゆとりが生まれると自然と笑顔が保たれる、という著者の主張を歴史上の人物や皇室の方を例にして平易に描いた一冊。孫が生まれた事だし、自分を省みて立ち居振る舞いに気をつけないと、ヨーグルトの蓋をぺろりとなめる子どもになっちゃう、と思う木村でありました。今年の目標、孫がヨーグルトの蓋をなめずにきれいにできる、ですから(笑)


「黒い羽」 誉田哲也 光文社文庫 ¥640
光文社でもいきなり文庫である。私たち庶民にはありがたいなー。タイトルで気づくべきでした。これがこの後読む人へのヒントです。そして彼の別の作品であります、似た話「月光」です。姉が身を呈して妹を守る。でも本作にはラストに光が見えて一気読みの甲斐があろうってもの。恩田陸さんの作品のように進化について描かれているのでちょっとこ部分はどうしても哀しくなる。帯にあるとおりすぐ読んじゃう一冊。


「泣くな道真」 澤田瞳子 集英社文庫 ¥520+税 
澤田さんの作品を読むのは初めてである。でも買う前からこの作品は注目していてきっとこの本は面白いに違いないと思っていた。そして案の定!左遷された道真が左遷先で息子を亡くし、不自由な生活をしつつもプライドを回復してゆく様子をお世話係に任命された官僚や周囲の人間とともに時にはユーモラスにも描かれており¥520では申し訳ない秀逸な一冊。作者に寄れば道真が流された大宰府の実質的なトップの大弐は秋田美人の歌人小野小町の伯父、とのことでなんと小町が大宰府に・・・・なんで都人の小町が秋田で生まれ、亡くなったのか県南の史跡に興味を持っていたがこの小説で解決させていただいた感じ。小町の父であり、出羽に任じていた良美のことも知りたくなったから読書は面白い。ついでに言うなら解説で天平版「官僚たちの夏」と称されている「孤鷹の天」も読みたくなった。そしてそしてその道真さんに導かれたかのように今回娘親子を送っていった埼玉行きで梅祭りの始まった湯島天神に行ったのであった。特に我が家に受験生がいたわけではなく、娘達の高校受験以来のお参りだったが前日NHKでやってたせいか?すごい人出でびっくり!

2月5日(木)

アナ雪にはまった3歳になる孫が雪で遊びたくて産休中のママと3ヶ月になる第二子を連れて来てます。市内は例年になく雪が少なく近くの雄物川河川敷でのソリもやれてませんが、第二子の世話に追われるママに淋しい思いをしているのかお姉ちゃんはべったりばーばに。2階で生活しているので抱っこしたり手をつないだりの階段の上り下りだけでも良い運動。真面目に子育てすればジムに行くより安上がりかも?

「『いい家』の本」 宮脇檀 PHP ¥1238
ロングセラーである。娘が建築を生業にするきっかけを作った懐かしい大切な本でもある。もちろん最初に私が買って娘が大学時代に下宿先にもって行き、就職するとき引越しのため実家に置いてあったのを再読。うちのは1998年のもの。建築家でありながら文章力もある人第一号だと当時感心していた。昨年「大人の休日」で訪れた奈良井の町並みのことがすでに語られていて改めて感心。自分の暮らし、旅、住まいの歴史を背景に日本人と家との関係を平易に読み解く一冊。


「美しき凶器」 東野圭吾 光文社 ¥571+税
いつも一気読みする東野作品は「一気読み」の他に「映像化」も常套句だが、今回のヒロイン190センチ超えのアスリートはなかなか当てはまる女優さんはいないだろう。しかも日本人じゃないし。最後の復讐の相手は(たとえ逮捕され、社会的地位を失っても)生き残り、殺人犯となってしまったヒロインの方が事件解決のために射殺というのは哀しい結末だが、淡々と獲物を狙うヒロインのスピードに溢れた姿が見事でさえある。ちなみにこの本、今年最初の「本は友を呼ぶ」である。新屋図書館で行われたブックリサイクルに行ったら時既に遅く整理券は出払ってしまい本は貰えず戻ったのだが、その時先に来ていたジムで会うと挨拶をする人が後日わざわざ貸してくれたものの一冊。ありがたい。

1月7日(水)

今年もよろしくお願いいたします。正月埼玉は車で行きました。ので実家の不用品も持ち帰り、こちらで捨てました。ごみ捨ても高齢者には分別、搬入が大変になってきますね。ここをまめにやらないとあっという間にごみ屋敷。帰省の旅に片付けです。こちらからも荷物持ち込めるのでおせちも黒豆その他冷凍しておいて少しは余裕か、正月の朝一人珈琲タイムを持てました。今年は少しゆっくり暮らせるのかな?

「カラフル」 森絵都 文春文庫 ¥505+税
これもSさんから借り。初めての森さんだが、これが文庫化された頃の私は、と読書日記を振り返ると奥田英朗さんに目覚めた頃だったようで、文庫紹介にも「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」がある。生きる、ということについて静かな主張の込められた作品で、若い人が読んだら心に響くんじゃないかと思う。「ぼく」の死の真相があかされる前にひろかとの会話でとてもわかりやすく人生を語ってくれている(p184~p187)そしてここがタイトルの理由なんだなぁ、と思い心が穏やかになれる。ラストでプラプラが「小林真。しぶとく生きろ」っていう場面があるが、それぞれの名前を入れて若者に言ってあげたい。


「風に舞い上がるビニールシート」 森絵都 文春文庫 ¥543+税
本友Sさんのおかげで楽しませてもらった昨年後半だったが、原田マハさんに続いて森さんも新鮮。
本作は大切もしくは愛着のあるもののために懸命に生きる人を描いた短編集。この本で直木賞貰ってます。
スイーツ、犬、仏像などなど。他の作品を読んでいた人には「鐘の音」は異色で、私個人としては舞台設定を含め、井上靖を思い出すタッチ。
好きなのは「ジェネレーションX」で名言がいくつも出て来る。
p232「結局バトンがうまく渡せないんだろうな」「バトン?」「人間いつまでも人から注目されて、自分中心に生きられるわけじゃないだろう。いつかはその座を退いて、もっと若い人間に注目してやる側にまわるべきときが来る」・・・うんうんその通り。自分は渡す側に潔く移りたいといつも思っているけど還暦も近くなると自分いついてはそんなバトン待ってなくても走り出しちゃうもんね~。(・・・以下留美子)(中略)「でもたまにいるだろう、まだ自分が主役のつもりでいるキャスターが。現役選手のレポートよりも自分のアピールばっかに力入れてる奴」
10年後に野球をやるために集まろうと当時のメンバーの調整をする代理の若手謝罪マンが主人公に言う。p249「でも俺たち、いつまでもそういうバカでいたいなって十年前に話してたんっすよ。(中略)今よりも大事なもんが増えて、責任も足かせも、いろんなものが増えてるだろうけど、でも十年のうちでたった一日、みんなと草野球できないような人生はごめんだよな」28歳のせりふだが、ふと去年の大学テニスサークルの夏合宿を思い出した。


「水底フェスタ」 辻村深月 文春文庫 ¥600 
閉鎖的な村を舞台に起こる悲劇。しかし2011単行本になり、2014文庫化にあたっての解説で「オメラス」について書かれていた事の方にもドッキリ!そうです私もはまってましたTBSドラマ「MOZU」そこに出てきました「オメロス」確かに本作も「オメロス」的なものを多く含みながら静かに沈んでいる。そしてそうです、もっとおどろおどろしく描けば「獄門島」「八ツ墓村」になってしまうところを「夏フェス」が救ってます。


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