RUMIKOの読書日記

2005年
カウンター設置 2003/02/11

 

12月29日(木)

「アッコちゃんの時代」
林真理子 新潮社 ¥1500
先に読んだ友人との会話「アッコちゃんの顔は思い浮かばないけど相手の男たちや奈美ちゃんのダンナって何となくわかるよね・・・」それを思い浮かべながら読みましょう。すると時代が甦る、かも。最後のページ「金と権力のある男たちは、空気や水を求めるように若く美しい女を求める」がこの本のすべてという感じ。「若く美しいアッコちゃんの時代」はやはり誰にとっても宝石かもね。これは林真理子さんの自分への思い入れか・・・?


「エキスペリエンツ7」
堺屋太一 日本経済新聞 ¥1900
読み応えのある厚さで、年末にゆっかり読みたい本の一冊です。「県庁の星」とも比べてみたら?という感じの一冊。今年の豪雪と道路の悪さに「この町にも来て!エキスペリエンツ7!」と叫びたいが別にウルトラシリーズではありません。ただこんな団塊の世代が秋田市内の小路の除雪や広小路を何とかしてくれたらなぁ・・・と他力本願的に読めてしまう商店街再生の物語。さて、では彼等団塊の世代は高齢化社会にイエスかノーか・・・?
たった2冊を読むのに20日以上もかかってしまった日常にごめんなさい。来年も良いお年を!

12月7日(水)

「二百年の子供」
大江健三郎 中央公論社 ¥1400
唯一のファンタジー、タイムトラベラーの話。11月8日付の日記「私という小説家の作り方」を読むとこのファンタジーが生まれるべくして生まれたのがわかる。大江さんの故郷?と土地の神話も舞台か?ラストで出て来る大江さんと思われるようなお父さんの心の危機がちょっとリアル。「永遠の仔」の表紙も手がけた舟越桂さんの挿絵が「永遠の仔」を思わせる。「永遠の仔」というタイトル自体もこのファンタジーに陰を落としていそうだし・・・


「頭をよくするちょっとした『習慣術』」
和田秀樹 祥伝社 ¥1333
つくづく雑食性?読書だと思う。平成13年発行のこの本はこれから始まる「ゆとり教育」に苦言を呈し、計算力だの詰め込み教育も悪くはない、と言っている点で平成17年の今となっては先見の明ありの一冊である。どうする?台形の面積・・・
朝日新聞でも書かれていた「行動療法」や、「習慣術」など今注目の内容がすでにここに書かれている。
メディアで騒がれる小中高生の自殺年間200人だが、現実には0歳から24歳までの若者の交通事故死2000人へも対策を、そして中高年より自殺しにくい世代だからこそ親はきちんとむきあって行動療法的アプローチを撮ることも大切(p190)はなるほどかもしれない。
p193、テストの点数が悪いと叱ることよりいい点を取ってきたときに「油断大敵、もっと頑張れ」などと言わず無心にほめてやらないと子供の伸びる気をなくす、というところは子育て中の人には要チェック個所かも。前半は大人対象の本ですが。

11月30日(水)

すごい、2週間でたったの2冊!じゃあ日記とは言えません・・・でも今回は結構興味を引く2冊を読みましたぜ!
「その日の前に」

重松清 文藝春秋 ¥1429
こんな話題の本を貸してくれるのはもちろんアンテナピピピのOさん、ありがとうの一冊です。こまちに乗せて連れて行きました。うちでも外でも要介護のヘルパーさんでも泣けるかな?と純粋度を試すような一冊かと思いきや、えーん、「その日」を迎えるのが40代の人々なんだもの、どんなシチュエーションでも哀しすぎて・・・夫もかなり・・・でした。これじゃあ「ALWAYS」を見たら・・・短編が集まって最後に大きな環になる。泣けるのはやはり自分の世代に重ねてしまうから?じゃあこの年齢をすごく過ぎた人なら?本当に「その日」を粛々と迎えるのはむずかしい。最近はお寺の方なんだけど3時のおやつを食べて「ひと休みする」と言って夕飯に家の人が呼びに入ったらもう亡くなっていた、というのが一番かな?これは功徳を積んだからか・・・?


「まわりみち極楽論」
玄侑宗久 朝日新聞社 ¥1400
そのあとでこの本だもの・・・私って煩悩だらけ?高校時代の友人Kさんにすすめられてリクエスト。読了に時間はかかったけどすぐ「ご用意」してくれたのはやはり玄侑さん人気か?サブタイトルが「人生の不安にこたえる」。「漠とした不安」で自殺してしまった芥川龍之介ならどう読むだろう?と思いつつ読み。
p156『合理性を重んじる社会になりすぎて泣くことの正当性が見当たらなくなってしまった。(中略)泣くという行為は「蒸泄」行為。』とは昔から言われるカタルシスですね。
p159(要約)『男は概念とか理想に縛られやすく、女性や子どもはもっと一次感情を大切にする。だから「女子供には勝てない」=「自然には勝てない」』って面白いですね。
その他いろいろな生きる力の極意をわかりやすく禅の心で語る一冊。

11月15日(火)

「アイズ」
鈴木光司 新潮社 ¥1400
思ったよりホラーでなく、「哀しい(この字が似合う)ホラー」という感じの短編集。読後感ですけど。「タクシー」のラストp202「こんなところで立ち止まってるわけにはいかない。」のタフさがいまどきの私にはすごく好感。


「50歳からのおしゃれ生活」
西村玲子 大和出版 ¥1300
こういう本を読むといつも散らかった部屋、慌しい毎日を猛省。じゃあ50歳(実は意外に近い・・・)になったらこうできるの?と思えばそれはきっと今までのセンスの積み重ねでしょ、と言われそうで。
ティータイムに読んでみたい一冊。


「巨匠の宿」
稲葉なおと 新潮社 ¥1800
世界的、一流と言われる(た)建築科が設計した宿を写真とエッセイで紹介。青森とか三朝町とか意外な場所に巨匠の名館あり。宣伝しないのはしなくても毎日満室なんだろう。必見の一冊。週刊新潮に連載されていた物。

11月8日(火)

「私という小説家の作り方」
大江健三郎 新潮社 ¥1400
ノーベル賞作家だから許される?このタイトル。7年も前に図書館に来たのにこんなに綺麗ということはビッグネームの割りに手にとられてない、ということ?
読んでいくと彼がいかに言葉=言霊を大切にしているか、また彼の文体がなんとなく翻訳物のように感じられるのは、p41「フランス語のテキスト あるいは英語の と日本語のそれ、そして自分(の言語)という三角形の場に生きている」というところから生まれたようだ。
p21「人生のコースを決めるのは、必ずしも事実ではなく、言葉なのだ。そして言葉の持つこの不思議な力のひとつの例が神話である。(中略)それは想像力である」


「パリジェンヌのおしゃれレッスン」
高橋克典 ダイヤモンド社 ¥1400
現実の自分は決してこうではない、こうできない、と思いつつ表紙のワンピースと靴、スカーフの色とデザインの組合せが素敵で思わず借り。中の写真も皆センスがよく、フランスのおしゃれの歴史の長さををつくづく感じさせられる充実の一冊。

10月30日(日)

「京のはんなり 江戸は粋」
石田かおり 祥伝社 ¥1300
これもまた良い本を貸してくださいましたね,O様!持ち運びにもほど良い大きさ、厚さなのであちこちに連れて行きました。しかも2度読み!もっともという文化の違いが化粧にも生活にも現れるんですね。自分をプロデュースするときの心のもち様、ということでしょうか。(ここで「野ブタをプロデュース」が浮かんだ人は見てますね!土曜日)


「年収300万円時代 日本人のための幸福論」
森永卓郎 カレル・ヴァン・ウォルフレン ダイヤモンド社 ¥1500
「年収00万・・」で一躍時の人となった森永氏と在日40年のオランダ生まれのジャーナリスト氏との対談。日本に最近発生していると言われる経済格差(勝ち組み、負け組みという言葉への批判も含め)、村上ファンドなどタイムリーな話題を展開しつつ、日本人の生活がオランダのようになればいい、とおっしゃる森永氏にカレル氏が厳しく迫る内容にも注目。両者の結論は「やりたいことがある」ことが幸福の道、ということで、ごもっとも。

10月25日(火)

「私の脳はなぜ虫が好きか?」
養老孟司 日経BP社 ¥1300
さすがに一般受けした「バカの壁」ほどにはなじみにくい内容だが虫好き昂じて標本を並べる施設昆虫館を作ってしまう熱の入れ用。ということは「バカの壁」出版は昆虫館を作るため?ちょうど閉幕した愛地球博の会場愛知県海上の森の5年前の様子が書いてありそんなところも興味深い。


「きょうの猫村さん 1」
ほしよりこ マガジンハウス ¥1143
こんな面白い本を貸してくれるのは図書館ではなく、もちろんOBAKOさんです!人気の「恋のマイアヒ」みたいなタッチの脱力系猫ちゃんが主人公のマンガ。タッチは脱力系でも骨惜しみせずに家政婦として?働く?(読んでみなけりゃわからない)猫ちゃんと家族、家政婦協会の仲間とのふれあいの物語、でいいんでしょうか?その1は。そしたら、やーん、そのあとで読んだこれまたOBAKOさんが一緒に貸してくれた「ダヴィンチ10月号」(しかも恩田陸を2倍楽しむ、だとか漫画とか嬉しい内容じゃん)に猫村さんの特集が・・・さすがアンテナぴぴぴ、と尊敬しきり。ちなみに前回の日記で紹介した太田垣晴子さんの漫画も掲載。もうひとつちなみに表紙の長澤まさみちゃんが手にしてるのは「わたしが・棄てた・女」ということで猫村さんとは内容がずれてしまったけど、このダヴィンチは私だったら保存本だね。

10月23日(日)

「会社の渡世」
山口瞳 河出書房新社 ¥1500
なぜ図書館の新刊、しかも2005初版なのだろう?と思いながら借り。しかも河出だし。そしたら未収録の文を集めたもの、ということで納得の会社訪問とその土地とのつながりを描いている新鮮な切り口あり。ちょっと口惜しいのはp174「東北本線の印象はどうであったか。『淋しい』の一語に尽きる」美しい風景の中に人がいない様子をそう形容したまま氏が亡くなってしまったこと。うーん。


「オンナノコのおたしなみ」
太田垣晴子 メディアファクトリー ¥1100
ソフトな上大岡トメ風なイラスト本と思って下さい。Hanakoの連載だったとあとがきにあったので納得。著者も若いので「おたしなみ」の内容も若者向け。すぐ読めます。

10月13日(木)

「遠藤周作へのワールド・トリップ」
上総英郎 パピルスあい ¥2800
たしか亡くなった方なのに2005新刊はなぜ?と思いつつ借り。上総さんの論文は学生時代卒論のために読んではいました。ちょうど前回の日記で「『妖しの民』と生まれきて」の一部が「わたしが 
棄てた 女」みたいだ、などと描いたから遠藤ワールドが近づいてきたのでしょうか・・・
代表作「沈黙」を中心に据えつつ、それ以後の作品論の展開を味わえる一冊。


「TVドラマが好きだった」
岡田惠和 岩波書店 ¥1400
岡田氏の「だった」ではなく私は今でも「TVドラマが好き」。岡田作品としてはやはり「イグアナの娘」「南くんの恋人」(最初のもの)「ちゅらさん」であろう。とここまで書くと気付く。本の良さもだがキャスティングもかなり重要ということね。
今までのTVドラマの名作、話題作について述べているので全てのドラマ好きの方にお薦めの一冊。
ふふふ、同感よ〜、と思ってたフレーズ、作者も思い入れがあったのね。p80「ちゅらさん」での菅野ちゃんのセリフ「嫌なら来るな、嫌ならいるな、嫌なら帰れ」「自分のマイナスを東京のせいにするんじゃないわよ」そういえば今クールの「あいのうた」も脚本は岡田氏、ヒロインは菅野ちゃんね。

10月5日(水)

「『妖しの民』と生まれきて」
笠原和夫 講談社 ¥1700
なかなか進まなかったのは「妖し」がついOさんご指導の「しゃばけ」シリーズと似た内容だと思って借りたが全然違っていたし、不勉強で著者も知らないので共感がもてなかったから。
でも戦後の混乱期を生き抜くところからはあっという間だった。形を変えた「わたしが 棄てた 女」のような感じ。戦後といわず青春とはいつでもこんな感じなのかも、とも思うようになってきたのは自分が林住期に移行中だから?


「愛情という名の支配」
信田さよ子 OH文庫 ¥505
帰省したときは都内に行く電車の中は読書タイム。のためにキオスクで買ってちょぼちょぼ読んでやっと読了。
でも今問題のACやアルコール依存症、共依存という家族関係の問題を解説したお値打ちの一冊。
幸せを見失ったり笑顔になれないときにどうぞ。もしかすると原因は・・・


「赤毛のアンの島で」
奥田実紀 東京書籍 ¥1500
モンゴメリーという作家を好きか、ということに関しては以前読んだ本で難しいお答え。ではアンという作品を好きか、ということではやはり「好き」ということでこの本も手にとってみました。え〜?東書で?という驚きもあり(どうしても数学の教科書、のイメージ)の滞在エッセイ。
「自信を持って変わらないもの」への尊敬をもてる一冊。

9月29日(木)

「日本買い」
中田亨 PHP研究所 ¥1400
この本を日記に掲載するのを忘れて「はじめて・・・」に行っちゃいました。というわけで今回はすぐ。今日優勝するかも、の阪神が村上ファンドのもとへ・・・と騒がれ、フジとホリエモンさんのところで世間にも一躍クローズアップの村上ファンド様もp24、p103に載ってます。
郵政民営化で誰が、どこが参入するのか、を知りたくて借りてみました。そういえば生保も薬もよねぇ・・・と気付く社名変更の数々。果たして小泉政権の目論む先は・・・?「もう売るものがこれしかないの・・・」なんて危ないセリフははかないでね。


「家守綺譚」
梨木香歩 新潮社 ¥1400
これを貸してくれたOさんは先日展示会をやった和紙人形と切り絵の作家でもあられる。だから、というわけでもないがすべて花(檸檬の実もあったが)の名前のタイトルの不思議物語を読むと、タイトルすべてに切り絵の花が浮かびそうな一冊。Oさんならではの選択ねぇ・・・と感心しきり。
p49「土耳古」って読めます?国名です。授業で使わせていただきました・・・ふふふ。

9月27日(火)

「なぜ女は出産すると賢くなるのか」
キャサリン・エリソン ソフトバンクパブリッシング ¥1600
『人は何を食べるかではなく、何に打ち込むかで、脳の様子が決まる』は母親に限ったことではなく、毎日の暮らしを大切にする姿勢だと考えさせられる。
現代は仕事(キャリア)も子育ても、と女性にプレッシャーのかかる時代だが、その一方で「閉ざされた子育て→虐待→学級崩壊→校内暴力」という側面も考えれば「子どもの今」を楽しめる社会こそが本当に心豊かな社会なのだ、と思う。
出産直後の生命そのものに直結する(おっぱいだ、おむつ交換だ、など)対応への素早い判断、子育てを通じての自己発見、マルチタスクへの対応能力の向上などなど、確かにうなづける効果が示された一冊。


「はじめてだったころ」
たかきなおこ 廣済堂出版 ¥952
巻末の言葉の概略『大人になっても、おばあちゃんになってもドキドキするたくさんの「はじめて」が待ってますように』というメッセージがとても嬉しい,作者のいろいろ「はじめて」物語。

9月20日(火)

「作家の食卓」
コロナ・ブックス編集部 平凡社 ¥1600
2005年発行の新刷なのに「作家」とは永井荷風であったり、内田百閧ナあったりする不思議な本。そしてわかったのは皆様意外に肉を食べていらっしゃる。特にすごいのは「石川淳」(この人の作品読んでいるかな?)夜にビフテキ3枚、朝にローストビーフ。この調子なら三島由紀夫の食卓ももすごかったろうな・・・


「おまけのこ」
畠中恵 新潮社 ¥1300
この本の新刊広告を朝日新聞で見てすぐOさんが思い浮かぶほど。いつもありがとう。この本連れて京都行ってきました。街中の観光客は相変わらずのにぎわいでしたが、一本小路を入るとこの本のような「しゃばけ」「あやかし」の空気漂う古都で味わうぜいたくさ。


「月の裏側」
恩田陸 幻冬舎文庫 ¥700
こちらのほうはMさんに借り。もちろんこの大作もこまち、のぞみで。「劫尽童女」以来すっかり恩田ワールドにはまった彼女は終に文庫を購入。そして彼女に貸している「光の帝国」「蒲公英草紙」。彼女も心にしまえたかしら?私はこれを密かに「布教」「感染」と呼んでいる。
偶然だが「おまけのこ」のしゃばけシリーズもこれも舞台は「掘割の町」という点で一致。しかし♪こちらの堀はこーわいぞ・・・

9月11日(日)

長らくお待たせいたしました。齊藤さんで手間取りました。今回は2冊とも長くなるので御了承ください。
「妹の本」
星一郎 大和書房 
若い頃は「弟がいるでしょ」と言われ続けていた私だが最近の仲良し友人を見回すとちょっと年上の女性が多い。「妹的役割」を享受しているので借り。
もし子育て中の方なら
p130出生順位で差別せず、p164、家族的価値というどの子にもあてはまる物指しを持って臨むというのは参考になるかも。そしてその物指しに沿うか、違う生き方をするかを子どもの成長に従ってゆだねる勇気を持つ、というのも覚悟がいるわね〜・・・
「どう育ってもいい」というのは子どもの立場にしてみたら親の愛情を疑うし、無関心なのかと思ってしまう、というところも近くに実例ありそうな・・・
更にもっと小さい子を育て中の人には「他人の価値観を尊重して初めて自分の価値観も認められる」という共同体感覚を養う大切さも読んで欲しい。公園デビューのシビアなヒントあり。


「天才がどんどん生まれてくる組織」
齊藤孝 新潮選書 ¥1100
売れっ子齊藤氏はゆる体操でCMにも出ているほど。
忍術からサッカー、宝塚,藩校と独特な教育力を持って高レベルを維持しつつ天才をも生む組織について考える。
p117、宝塚。舞台にはその人の生活までが映し出されてしまう。(中略)優れた舞台人を養成するだけでなく、完成された女性になることを理想とすることでスターになれなくても挫折することなく新しい生き方に向かって羽ばたけるようにする(アイデンティティの多重化)ことで力強さを獲得する。
p141、藩校。文武両道教育の武の面での身体づくりが長い人生を気力を充実させて生き抜く力を養う、という2点には大いに注目できる。
キーワードはp141「肚が練れている」でしょうか。

8月29日(月)

「○く、○く、○く(丸く、まるく、マルく)」
斎藤茂太 潮文社 ¥1200
このタイトルもまた禅の世界を思わせるような・・・「図書館に訊け!」に続き、がや広掲示板にもいらしてくださる絹子様より教えていただき借り。タイトルどおり、肩の力を抜きながら、一歩、また一歩、とそっと背中を押されているような一冊。負け上手こそ心のゆとりを生み出す生き上手などなどちょっと人生に疲れたときにリラックスさせてくれるかも。


「小さな手袋 珈琲挽き」
小沼丹 みすず書房 ¥2400
解説が庄野潤三だったからふらふらと借り。彼の推薦文だけで完結している。「小説もいいし、随筆もいいという作家はそんなにいない。(中略)何がそれほど惹きつけるのか.(中略)決してぐちをこぼさない男らしさだろうか.(中略)東西の文学,芸術から吸収して当人の気質に融け込ませてしまった教養の力だろうか」ってすごく男性なら言われたい褒め言葉ですよね。もちろん教養の部分は女性でも。1957年のものから入ってますが味わえます。

8月25日(木)

「大人の女はひとり上手」
中山庸子 主婦の友社 ¥1300
貸してくれた友人だってこんな本作りそうだなぁ、と思いながら読み。団塊の皆様に支持されていそうな月刊誌「ゆうゆう」に掲載されているエッセイだそうで。
確かにこの年齢になった女性は子どもからも親からも「ひととき」解放された「ひとり」を楽しみつつ本当の意味での自立を実現してゆくんだろうなぁ、と思う。ということで内容は主婦が対象のようである。そう、西村玲子さんを彷彿。


「明恵上人」
白洲正子 新潮社 ¥2700
前回の日記もだが最近一冊はこれ系の本が。
「深閑」の雰囲気が伝わってくる表紙と背表紙(と言っていいのか?見返し?)の美しい写真を見るだけでも心が洗われる。
白州さんの抑えた文体を味わいながら人としての明恵の深みを読もう。
p120、(明恵は)世間的な「仕事」とか「事業」と呼ばれるものは何一つ遺していない(中略)しいていえば彼が此世に遺したのは、人間的な魅力という、茫漠とした一事につきる。
白州さんの名文。

8月19日(金)

「ユージニア」
恩田陸 角川書店 ¥1700
2005年惜しくも直木賞を逃がした作品。確かに深みとか殺しの動機云々と選者の方々に言われるとね〜。だが賞に関しては恩田さん的には今さら、じゃない?多層的手法は今までの作品にもあるが、警察官の出る章がうまく内容の交通整理をしてくれている。頑張って読む一冊(ちょっとわかりにくく、長いという意味)恩田さんのキーワードは「夏」「少女」「薬」か?


「法然対明恵」
町田宗鳳 講談社選書メチエ ¥1500
日本人の宗教観として遠藤周作が出、明恵を高く評価する河合さんが出たりする。ただやはり読んでいくと宗教家の持つ特異性に熱狂するのって難しい。
明恵は臨床心理学的にも問題あるが宗教家としての評価は別、というところが本音だろう。


「アップルハウスビジネスストーリー」
たかはたけいこ 織研新聞社 ¥1600
まず寄贈というのにびっくり。そしてそのお店の支店が(2005、3月現在)湯沢市にあるので2度びっくり!
アクセサリーを店に置かせてもらうことから始まり、染めから作る天然素材のファッションブランドを立ち上げ、育ててゆく過程を教えてくれる一冊。「わかさ」に続き、また湯沢に行く楽しみが・・・

8月12日(金)

「実践!『元気禅』のすすめ」
玄侑宗久 樺島勝徳 宝島社 ¥1300
7月8日付け日記の「脳と魂」(玄侑さんと養老孟司さんとの対談集)に出ていたのでリクエスト。
いやー、この本はこういっていいのかわからないが、信仰と同じで受け入れてみよう、と思う人には心も身体も元気になれそうな一冊。自分の好奇心度をはかれる一冊ともいえる。
イライラを解消する動きやらトイレの所作,歩き方の所作など面白いページがいっぱい。
p100「希望が未来を左右する」というのはいいフレーズだと思う。


季刊「ふでばこ」2,3号 酣燈社 各¥1000
上の本でもあった「心のアンテナ」の高い友人から借り。いつもその本を選ぶセンスに感心しています。特に白い器、曲げわっぱの特集もよかった。3号以降に期待できるのは「家訓」というコーナーかな。紙質もすごく豪華。


「サルビア歳時記」
木村衣有子 ピエ・ブックス ¥1500
小さい本なのだけれど季節と色の組合せがすごく嬉しくなる日本の色の本。これまた上述の友人に借り。アンテナピピピ、なんだろうな。借りといてごめんだけど、p125福寿草の説明で「北国ではマンサクとも呼ばれ」は違うだろ!と突っ込んでしまったが、秋田に来て20年ほどの埼玉人なので自信はない。ピピピ様ほか北国の皆様、どう思う?

8月8日(月)

「ミスキャスト」
林真理子 講談社 ¥1400
たぶん恋愛小説を書こう、という意図だったのだろう。渡り上手で不倫を重ねる男の姿を描くが今回は林さんの持ち味の女性のしたたかさとかやるせなさがなくてちょっと平板。でもその不倫や情事の繰り返しは「ミスキャスト」だからという言い訳はちょっと面白い。


「図書館に訊け!」
井上真琴 ちくま新書 ¥740
やっと読み終わりました!このタイトルはつまるところレファレンスの復権、ということである。恩田陸さんではないが静かな海の底のような学校の図書室から知の宝庫としての学校図書館へのアグレッシブな転換を熱く語る一冊。そういえば図書館学でやりました、レファレンス。実例としての?(創作か?)利用者とのやり取りのページが面白い。

7月29日(金)

「空色水曜日」
谷村志穂 角川書店 ¥1400
出版社が面白い。「角川書店」ではなく、「角川書店 北海道」。伊藤美咲ちゃん主演で映画化された「海猫」もこの人の作品だったのね。
読んでいると秋田と同じ北国なのに北海道の空はこんなに綺麗なの?と思ってしまう。筆の力ねぇ。


「台所哲学」
内田玲子 玄同社 ¥2428
はやりの「うおつか流」台所エコロジー(=節約)ネタかと思いきや格調高く親の正しい姿を語った一冊。「まずは自分の姿勢を正せ」ということか。

7月21日(木)

「日本はじっこ自滅旅」
鴨志田穣 講談社 ¥1500
これって自費出版なの?と裏を見るとなんと講談社。日本の突端を旅するお話だが、一歩間違えると旅するホームレスの文章。(しかも作者は入院先からあとがきを書いているし)でも借りてしまったのは旅の最後に秋田があって、男鹿半島、湯沢、川反となじみの土地が出ていて、しかも秋田で再生のパワーをもらった、というフレーズが嬉しかったから。食でも旅でも日本最後の聖地となるか?秋田。


「なるほどの対話」
河合隼雄 よしもとばなな NHK出版 
どちらも人の心について考えたり書いたりする人だけに、深まってゆく互いの心理状態と会話の中身にぐんぐんひきつけられて読了。ばななさんは「小説家であること」のかなり難しい位置にいるんじゃないかな?と思っていた最初の方のページだったが、回を重ねるごとに「小説家でいること」の決意が見えてきて、ある綿でカウンセリングの本のようだった。特にすごく共感を持って読めたのは2ヶ所。p156、自分の経験を次の世代に継承することを捨てすぎた現代(それはp157、社会的訓練のなさ、につながる)とp258あたりからの「家の守り」について。

7月18日(月)

「しろのあお」
上大岡トメ 飛鳥新社 ¥1200
「キッパリ!」のてんこぶポーズそのままのしゃきっとしたマンガ。そうそうたしかに「力一杯!」「あとさき考えず」に過ごしていた自分や子どもの小学生の頃を思い出すと、「キッパリ!」毎日を生きていたわ。ちょうど読んだ時期が今だから、うきうきした夏休み直前や、夏休み最初のだらりーんとした午前中を思い出した・・・


「脳と魂」
養老孟司 玄侑宗久 筑摩書房 ¥1600
その後にこの本だから雑食と言うか雑読というか・・・養老さん、ついにここまで来たか!という感じの本。科学や生命を追求していくと宗教の領域にも踏み込む、ということか?やはりここで正しい方向へ行けない人は危ない人になるわね・・・養老さんの最新の言葉や考えではあるけれど。
p149安楽死に関わっているオランダの医師に10年後どうなったか興味を持って会ってみたらすごく年を取っていた、という言葉にドキリ。

7月11日(月)

「座右の諭吉」
齊藤孝 光文社文庫 ¥700
「声に出して読みたい日本語」が大ヒットして(結構利用社宅にもありましたよ!)たしか秋田にも公演にいらした明大教授の齊藤センセイのご本である。でも秋田から明治に行く人はいても教育学部は少ないだろうな、などと思いながら読了。
2冊の恩田陸の味わいに続きこの本も「今年おすすめの一冊」である。なぜなら諭吉の人となりが初めてわかり、私的にはすごい共感を覚えたから。今年後半、そしてこれからの心のスタンスが「諭吉してるか、してないか」になりそうな価値ある¥700。


「ダーリンは外国人」1、2
小泉左多里 メディアファクトリー 各¥880
外国人と暮らす毎日の小さなオドロキを漫画で書いた(著者は漫画家)2冊。2人のほのぼのとした日常が温か・・・「外国人だからいい、悪い」のではなく「その人の人柄がいい、悪い」というのはわかっちゃいるけどなかなか、だよね。

7月6日(水)

「ジーコイズム」
ジーコ 小学館 ¥1400
いつもW杯が近づくとこういうの読んじゃうんだよね・・・トルシエのときも。ということでジーコの描く代表の戦い方と自分の生い立ち。表紙のわりに選手たちについてのコメントはほとんどなく、でもブラジルサッカーについても興味深く読める一冊!いざドイツの舞台へ!


「『気持ちのよい人』と言われる人の共通点」
斎藤茂太 新潮社 ¥1238
朝日新聞で紹介されていたので借り。では「気持ちのよい人」とは。p17「相手の心を柔らかく解きほぐし、伸びやかにする人である」とのっけにいきなり書いてあるけど、「人に対するとき和やかで穏かである」(これもp17)という春の陽だまりのような人になるのは本当に大変でっせ〜、と考えさせられる一冊。でもなるのは難しくてもそれに向かって努力することはできるよね。

7月2日(土)

「深い河」
遠藤周作 講談社 ¥1900
5月25日付けの日記にもある通り「遠藤周作その人生と『沈黙』の真実」を読んだので再読。初期の作品「わたしが 棄てた 女」「おバカさん」を思えば遠藤文学のたどり着いたところ、といえる一冊。あの頃は「あがめる神」から「寄り添う神」への表現法を模索していた感じだが、ここでは「一人一人の心にある神」の存在こそがイエスが転生したしるし、というメッセージが読み取れる。思想性がうまく練りこまれたタイトルどおり深い一冊である。


「わかりやすい茶の湯の文化」
谷晃 淡交社 ¥1600
外国人(ドイツ人)向け講義録の出版化、ということで、茶の湯の歴史について、思想について、型について平易に語ってくれて初心者にも良い一冊。

6月27日(月)

「蒲公英草紙」
恩田陸 集英社 ¥1400
大事に大事に読んだのについにラストが来てしまった、と切ない一冊。今回は保存版として購入。「光の帝国」の『大きな引きだし』へとつながる恩田ワールドを満喫。常野のお話を味わえる人だけが心に「しまえる」物語。と1回読んで書いてみる。しかし2回読むと「光の帝国」の登場人物全てについてこうした物語ができるよなぁ・・・と感心。だってたぶん聡子さまと廣隆様は『2つの茶碗』につながってゆくかもしれないし、と思ってつながりを比べながら読むと更に面白い。そして峰子ちゃんは、たぶん・・・


「きもの草子」
田中優子 淡交社 ¥1800
偶然「そうし」が続きましたがこちらは「草子」です。蒲公英のほうは峰子ちゃんのエッセイ、という形だが、エッセイということではこれもまたゆっくり味わえる一冊。作者所有の着物の写真も美しい。着物の持つ「生命」を味わう心が嬉しい一冊である。

6月23日(木)

「故郷の廃家」
饗庭孝男 新潮社 ¥1800
学生時代の授業を思い出して購入。東京を離れ関西の大学にお勤めの間に阪神大震災にも遭われたらしい。文芸評論家の描く私歴史。どの人間にも通じる故郷の思いを静かに描いたところが帯の「児玉清氏絶賛」になるのだろう。講義に出ていた友人達にも教えたい一冊。


「最澄と空海」
梅原猛 小学館文庫 ¥638
日本の仏教史だけでなく精神史の中でも大きな流れを作った天台最澄と真言空海の人と思想を読み解く一冊。梅原氏の新解釈p316「円的人間最澄と楕円的人間空海」という類型論も人間を考える点で面白い視点である。
へぇ・・・と思ったのはp319、空海の父佐伯氏は蝦夷征伐に功労があって讃岐国に配されたがもともとは山の民である為血縁的には蝦夷と関係のある民であろうし、母方も物部氏の枝族とあるのを読んで東北とも親近感。

6月18日(土)

「檸檬のころ」
豊島ミホ 幻冬舎 ¥1400
作者は秋田出身、1982生まれ。貸してくれたOさんが「これってもしかするとうちの地元のことかも、って思うところ多々あり」と言ってたくらい石坂洋二郎作品の現代版風。タイトルの字体の硬質さが主人公の立っている時代を表しているみたい。登場人物がうっすらとつながってゆく短編集。私は「金子商店」が好きです。県南にほんとにあったりして、この店。


「住まいの礼節」
中山繁信 学芸出版社 ¥1800
家を建てる心構えを学ぶ一冊。ここでのテーマは中庭の提案、だろうか。限られた敷地にいかに賢い空間を演出できるか。そして地域とのコミュニティの復活も今後の課題としている。

6月15日(水)

「毛づくろいする鳥のように」
辰巳芳子 中谷健 集英社 ¥2800
今ではスープのカリスマ辰巳さんと、由布院観光のかりすまで亀の井別荘主人の中谷さんの写真のあるでよ、のジョイントエッセイ。美しい風景、丁寧な食生活や暮らし振りは熱い心に支えられ。盆地、温泉・・・大館も由布院みたいにならないかしら・・・?とぼーっと遠い目。


「夕凪の時 桜の国」
こうの史代 双葉社 ¥800
いつも鋭いアンテナを張ってるOさんに借り。平成16年文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞、朝日新聞社紙上で2週にわたって絶賛、と帯にまで絶賛が。ということでこれはマンガなのであるが、抒情的な小説の香りを放っていて深い味わいの一冊として紹介。忘れ去られてゆく戦後に静かなメッセージ。

6月13日(月)

「劫尽童女」
恩田陸 光文社 ¥1500
特別な能力をもった主人公がどのように世界と折り合いをつけてゆくのかなぁ、と思って読んでいったが、さすが「つよい」作家恩田さんの真骨頂を展開してくれる一冊。これで恩田さんにはまった友人もいる。もちろん次のステップに?お貸ししたのは「6番目の小夜子」


「アンデス・シャーマンとの対話」
実松克義 現代書館 ¥2300
『アンデス宇宙観』という帯にふらふらと借りてしまいました。なんで図書館にこんな本が新刊で並んでいるのでしょう?やはり誰か興味ある人がリクエスト?読み進むと高橋克彦氏の「柩」シリーズになってゆきます。それにしてもアンデスにインカ以前あったという文明の高度さは・・・?それってどう解明されるのでしょう?

6月4日(土)

「ロミオとロミオは永遠に」
恩田陸 早川書房 ¥1800
とうとう最後までタイトルの意味はわからぬまま。でもわかったのは「きっと恩田さん『ポーの一族』(萩尾望都)知ってる、もしくは読んでた組ね」ということ。
高校生たちの「大脱走」だが「ネバーランド」系エンタでもある。


「夏の名残の薔薇」
恩田陸 文藝春秋 ¥1857
各章中にはさまれる劇中劇のような文章の意義が理解出来ぬままラスト。でもこの本のおかげで上述「ロミオ・・・」で書いた「恩田さんと萩尾望都」の謎が実証できた重要な一冊(p377)。恩田さんの歴史?を知りたければこの一冊をお薦め。なぜなら杉江さんの的確な作品論となんと!秋田にも住んだことがある!(本人談p374)う−ん、だからあの作品たち・・・と強い感動。
p371の杉江さんのまとめ「恩だが心がけているのは、洗練された小説、柔和な時の流れる小説なのだろう。生の現実はあまりにも重く、生硬である。だが物語とは、もっと柔らかいものだろう。」だから今の私には恩田陸なのかも。ちなみに装丁は京極夏彦氏。

5月30日(月)

「いつも旅のなか」
角田光代 アクセスパブリッシング ¥1500
直木賞をとると言うことはこんな本も出せる、と言うことなのね・・・と思う。小説のほうが角田さんの持ち味かな、タイあたりの話になるとバリのよしもとばななみたいだし。でも20代の貧乏旅行の癖がいくつになってもぬぐえないことを反省し、年齢にふさわしい旅を目指すあたり(それは周囲から浮いていることに気付いたり、前と同じ場所に行ってもなんか楽しくないときに気付くそうだ)が親しめる。旅を「純粋趣味」と言い切るところは小説家らしい言葉で素敵。角田さんいわく「純粋、というのはつまり、何の役にも立たなくとも、あるいは損をしたって、好きでいることをやめられない」こと。ま、趣味はどれもそうといえばそうだけど。


「象と耳鳴り」
恩田陸 祥伝社 ¥1700
TVのシリーズにしたらいけそうな、でも視聴率を考えたら民放よりも手堅くNHK、という感想でイメージがわいて頂けるでしょうか。主人公の退職判事は児玉清さん、37歳息子はうーん、藤木君や中居クンじゃちょっと若すぎ?反町なら嬉しいけどナカムラトオルもいいなぁ・・・と想像がふくらむ短編集。あとがきでビックリ主人公は「六番目の小夜子」の関根パパだったのねぇ・・・「新・D坂の殺人事件」も団子坂でなく道玄坂、というところが今風。p29「好奇心を失った瞬間から人は少しずつ死んでゆく」は40代にはぐさり。30代でも、かな?いやいや。それにつけても窪塚クンの復帰映画「同じ月を見ている」は私にとっては恩田陸さんの名キャッチフレーズ。商標登録?しておけばよかったのにねぇ・・・

5月25日(水)

「まひるの月を追いかけて」
恩田陸 文藝春秋 ¥1600
「夜のピクニック」(2004年)につながる暗示のようなタイトルと異母兄妹という関係を読み解く一冊。ここまで恩田陸を何冊も読むとこんなことまで味わえるから一興。そして奈良という具体的な地名と恩田さんには珍しい場所(結構東北を思わせる場所が多くないですか?)が選ばれたことは「禁じられた楽園」も彷彿。今回は出番の少ない男の主人公だが、p213「童話や民話はほとんどが『喪失』がテーマ(白雪姫、赤頭巾)、そして『再生、復活』を遂げる」というところは文学論としてもなるほど。
それにつながるが「生きてゆくって何かを失ってゆくことですもんね(中略)失ったものを少しずつお金に置き換えていくでしょう。視力が衰えれば眼鏡を買うし(後略)」も感心しきりの人生論。


「遠藤周作 その人生と『沈黙』の真実」
山根道公 朝文社 ¥6000
自分が「沈黙」を読んでいた頃と何か変わった真実が出てくるのか?となかなか進まず、ぐるぐると同じと頃を回っている感じで読み通しては見たものの(自分の能力の衰えは棚に上げ?)「真実」とは「沈黙」のタイトルが構想では「日向の匂い」であったこと、そしてそのことから探る「沈黙」の神、というところだろう。「沈黙」ではキリスト教を「父なる神」から「母なる神」に変えたことが大きく取り上げられたが「日向の匂い」こそ少年遠藤が母を感じた瞬間だったのではないか、というあたりだろう。
それより何より驚いたのはこの本が¥6000!ということ。いつもの癖で思わず¥1600と入力しそうになっちゃったわ!(恩田陸さんが¥1600だったし!)

5月17日(火)

「ドミノ」
恩田陸 角川書店 ¥1400
どうしても彼女の作品は一気読みしてしまうので嬉しく困る。
構成力の高さを誇る彼女の真骨頂という感じで登場人物の多さと複雑さを味わえる一冊。
今まで読んだ中で初めて大笑いしてしまうようなところが3ヶ所(p130、p254、p292)以上はきっと見つかるエンタメ作品。まさか恩田さんがねぇ・・・


「図書室の海」
恩田陸 新潮社 ¥1400
まるで卒論でも書くかのように続けざまに読む恩田陸。これは短編集。でも驚く鳴かれ!この中に「夜のピクニック」の原型が(「ピクニックの準備」)。そして「6番目の小夜子」の番外編(「図書室の海」)。そしてなぜか「ハウルの動く城」恋はないわよ、や「ラピュタ」を思わせるのは「オデュッセイア」。ということを知りながら読むとかなり重要な一冊です。「イサオ・オサリバンを探して」なんて映画化したら「ローレライ」風じゃん。21歳の設定は微妙だけどイサオの役は妻夫木君かオダジョーで・・・


「Q&A」
恩田陸 幻冬舎 ¥1700
犯人なき大量殺人?最初は口の重い語り口だが読み進むうちに恐怖が高まるホラー系。インタビュアーと回答者(こちらは被害者でもある)の複雑な関係も不気味。新しい形の小説でじわじわと怖がりましょう・・・


「食の堕落と日本人」
小泉武夫 東洋経済新報社 ¥1500
貸してくれた方のイメージとしては珍しい一冊かも。発酵、醸造の専門家が日本の食の知恵を披露しつつ、農林水産業の復活を熱く語る一冊。でもこれは本当に大切なことを語っていると思う。

5月5日(木)

「a piece of cake」
吉田浩美 筑摩書房 ¥1600
Aの書体が延々と並んでいるかと思うとショートショートがある不思議な本だが一番は誤字の標本箱。誤ったおかげで?ぶんしょうがめちゃくちゃ面白くなった(例 おはるさんのつもりがおさるさん、とか)だけでなく、その標本26時を並べ替えるとしゃれた文ができあがるところが圧巻。


「サラリーマン、やめました」
田澤拓也 小学館 ¥1400
人生捨てたもんじゃない、何しても食ってゆける、とタフな気分にさせてくれる一冊。52人の転機と「それから」を興味深くたどれる一冊。


「蛇行する川のほとり」1〜3
恩田陸 中央公論社 ¥476
逆算ではないが偶然「夜のピクニック」のあとでこれをやっと読了したので(1,2は随分前に読んでいました)、先に書かれたこの本と「夜・・・」との共通点やベースを随所に感じながら読めた。トラウマが紡ぐ新しい物語、ということか。だいたい恩田陸作品に多いのだが、1、高校生であること。2、美しく完璧、という感じの登場人物が出てくる。3、秘密の共有とそれが心の成長のステップとなること。4、親子関係の複雑さ、などなど。

5月2日(月)

「建築がまちを変える」
日経BP社 ¥1800
15人の建築組織トップからの提言。個人が好き勝手に家やビルを建てるのではなく、「街の景観」として建築を考えよう、という本。たしかに日本全国。
p82、「町」を捨てて「街」に出よう(高齢になって坂道や雪など生活に不便になってきたら市街地に)ということらしい。「町に住む」のと「街に暮らす」のは違う、というのも面白い比較の仕方。確かに最近の秋田市のマンションラッシュはそれか?以外に地方からの高齢の方がお住まいと聞く。
p134、建築を教育の中に取り上げることで文化意識も高めよう、という発想にも共感。


「手からこころへ」
辰巳芳子 海竜社 ¥1800
料理という手先を使うものを心の意識まで高める、という一冊。丁寧な日本の暮らしに浸りたい休日に読んでだしなど取ってみるのも一興。ちょっと深めた料理のこつもメモリたい。


「夜のピクニック」
恩田陸 新潮社 ¥1600
ご存知今年の本屋大賞。娘の通っていた高校もナイトウォークが名物だったらしいが入学とともになくなったのが非常に残念だったので「北高夜間歩行」という設定にびっくり。初めてこの本で恩田陸に触れた人は青春小説として清々しく、なつかしく読めるであろう。その香りは「六番目の小夜子」から変わっていない。たった一晩の出来事を鮮やかに構造的に切り取れる筆力を存分に味わおう。
読みとおした人にだけ胸にぐっとくるセリフ
p316、「みんなで、夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。」
p338「何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ」
どちらも詩の一節のようでしょう?
余談になるが恩田さんつながりの「禁じられた楽園」。今回始めて行ったお台場のある建物の天井、ここから展開したのか?と思われるような人工的な禍々しさ。店ばかりそぞろ歩いている人は気付かないだろうなぁ・・・

4月26日(火)

「橋のない川 住井すゑの生涯」
北条常久 風涛社 ¥1800
友人に借り。著者は聖霊の先生だそうで(すみません、秋田の高校出てないもので)。そして「橋のない川」も全部読んでいないのに記録映画「百歳の人間宣言」は見ました。この本でも住井さんの熱い思いは伝わってきました。


「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」上下
J・K・ローリング 静山社 ¥4000
日記にタイトルを書いていて思いました。不死鳥じゃなくて不死身ならシリウスは死ななかったな・・・遅くなりました。でも一週間でこれと上の本ですから。こまちで上巻を読めてのがスピードアップでしたね。熱しやすく冷めやすい日本人らしくそろそろ売れ行きに陰りが?といわれたこのシリーズも5巻目。ストーリーの運びは今までのと同じです。当たり前です,ここでハリーが死んじゃったら終わっちゃいますから。今回は成長してゆく友人たちとハリーのパパと友人達の物語が深みを与えてくれています。

4月17日(日)

「天才の創り方」
川島隆太 講談社インターナショナル ¥1400
読み進んでいったら,やーん、2003「脳を鍛える大人の音読ドリル」「同計算ドリル」の作者じゃん。読書の大切さを熱く語ってくれたのは嬉しいけど最近の私はじゃあ天才か?ろいうとむしろ・・・
p172 二日酔いの時に脳の写真を撮ると脳が縮んでいることがわかります。(中略)飲酒をする人たちというのは前頭前野の神経細胞が死にやすい。というところにドキッとするのはWHO?これだけで十分現実は小説よりホラー。


「初めての歌舞伎」
五十川晶子 池田書店 ¥1300
いかにも今年の私にふさわしい一冊。6月は薪能もあるし。あまりのわかりやすさに自分でも買ってしまいました。読んでいると以外に歌舞伎のストーリーって源氏物が多いので今やってる「義経」と比べながら読み進んだりしてすごく時間がかかった。もし歌舞伎に行く人がいたらお薦めの一冊。

4月10日(日)

「イケズの構造」
入江敦彦 新潮社 ¥1100
「ビンゴ!」日記に書こうと思ったら今日付けの魁新聞にて紹介。「甘えの構造」みたいなタイトルである。他の県人には怖〜い「イケズ」な京都人の心性を大いに擁護?し、掘り下げた一冊。
p153、互いの気持ちに自信があり遠慮がいらない関係だからイケズが出る、というところあたりが恋愛の妙も学ばせてくれる高等技術なのかもしれへんね。「ふーん、いいこと、今日も飲み会・・・?」というのもいやみじゃなくてイケズやねん。(笑)
痛快なイケズp132「結婚をアテモン(くじのこと)みたいなもんやという人がいるけど、そら大間違いや。なんでて、アテモンにはアタリがあるもん」


「モードの方程式」
中野香織 新潮社 ¥1300
構造といい方程式といいなんか小難しそうな題だけど。ファッション考現学、という帯にそそられて借り。考現学とは考古学のもじり。現代の社会現象を調べ、その真相をとらえること(by新解さん)ファッションの様々なシーンを歴史からひもとくコラム集。さすが日経新聞、作者も東大卒の服飾史家、というだけで内容の格調高さが感じられよう。うんちく、というより結構専門的。

4月4日(月)

「70歳からのひとり暮らし」
遠藤順子 祥伝社 ¥1400
遠藤周作氏の「友を偲ぶ」を読んだから、というわけではないだろうが図書館に行ったら偶然新刊であったので(これも遠藤氏ではないが神のお導きか?)借りて一気読み。
先に亡くなった御主人には気の毒だがやっぱり「生きるが勝ち」だね、この元気さ。
ちょっと落ち込んでる人にパワーをもらえる言葉を発見。p174「他人と過去は変えられないけど、未来と自分は変えられる」よっしゃー!


「シンプル・ビューティー」
川原亜矢子 幻冬舎 ¥1400
「キッチン」で映画デビューしたときはよしもとばななの本があまりにも鮮烈で映画とは違うな、と思ったものだがその頃から透明感のある美しさは変わらず。だからこそこのエッセイ集は説得力があるお薦めの一冊。


「哲学の東北」
中沢新一 青土社 ¥1800
読書日記には書けないけど東北に住んで20年ずっと思っていたことがずばり書いてあるのは読んだ人のお楽しみ(気付かなきゃ意味ないけど)
宮沢賢治の人と作品を語りながら東北の大地の息吹を考えてゆくダイナミックな一冊。
p17、賢二と南方熊楠の共通点が「イギリスの風景」という指摘にはびっくり!
p25「始原的なものと最先端のものを結びつけられる才能がいつも北のほうにある(中略)北の才能はアヴァンギャルドに最適」というのも未来に期待。
p125の物語論もすごい。

3月27日(日)

「陰陽師の原像」
岩波書房 沖浦和光 ¥2200
第一章が阿部清明ブームをめぐって、だったので借り。だが時代が下るにつれて陰陽師ばかりでない漂泊の民についての言及になってゆく。読んでゆくと結局陰陽師の歴史、というより民族論としての印象が強い一冊。


「ゲストハウスに住もう!」
今一生 晶文社 ¥1600
業者にすれば新築でなく、既存の量や民家をリフォームして賃貸できるし、借りる側とすれば礼敷金、保証人不用で低家賃、という双方にうまい関係で都会で流行っているのもわかると勉強になる一冊だった。ただし借りる側には「自己責任」という厳しい「自由」が伴うのを見逃すべからず、が現実のようだ。

3月22日(火)

「緑の性格」
チチ松村 新潮社 ¥1000
CM音楽などでも流れているゴンチチの一人。身近な自然は本当はとてもミステリアス、ということかな?ちょうど魁新聞にも同じように書かれていたけどp40「これは人のためにやっている」という人はウソつきである。何故なら、人とため(為)を合体させると偽という字になるから、は名言ですよね。


「しあわせ眼鏡」
河合隼雄 海鳴社 ¥1400
緒方直青という方のカバー、本文イラストが良いです。河合さんというだけでフラフラと手にとってしまったが、読むほどに現代について、人間について立ち止まって考えたくなるいつもの語り口。でも今回のこの2冊、タイトルを見ただけでも「この人和みたいのね」と潜在意識を考えたくなる選択。

3月18日(金)

「なんにもうまくいかないわ」
平安寿子 徳間書店 ¥1500
最新刊である。帯がスゴイ。「子なしシングルの負け犬も四十過ぎたらオオカミだ!」うーん、あるある、いるいる嫌いになれないヒロイン。そして主婦にとっても面白いのは「亭主差し上げます」世の中の主婦よ、損な離婚はするな!と言ってくれてる内容。でも我慢しな、とは言ってないから。いつも元気をもらう平さんらしい一冊に仕上がってます。


「友を偲ぶ」
遠藤周作編 光文社 ¥619
出てきた人物が分かる人には充実の一冊である。
「友を偲ぶ」というタイトルだけでもこの歳になるとずんと来る。しかも遠藤周作編でありながら、文庫になってから彼自身も安岡氏に偲ばれてしまう時間の流れが悲しい。
ちょっと涙が出そうになるのはp272植草甚一を偲んだ丸谷才一の言葉で「しばらくのあひだ、さようなら。どこかの町の古本屋でばったり出合つて、いつしょにコーヒーを飲むことになるその日まで」これを声に出して読むとうるうる。でもこの弔辞は解説の嵐山光三郎によれば甘いらしいが、友なら感じるところもあると思われる。
p160池波正太郎への司馬遼太郎の弔辞の中で、東京オリンピック前後から「江戸」は「東京」になってしまったが、池波さんはそれを惜しんで昭和43年「鬼平犯科帳」で江戸を描き始めた、という分析は新発見だった。

3月13日(日)

「知りたがりやの猫」
林真理子 新潮社 ¥1300
女性への温かな視線とほのかなエールをどの作品にも感じられ、うまくなったなぁとつくづく感じる短編集。
特に「年賀状」は現代ならありうる、もし身に覚えのある方はかなりぞーっとする話で素敵。


「桶屋一代江戸を復元する」
三浦宏 聞き書き小田豊二 筑摩書房 ¥1900
貸してくれた方は仕事につながるんだろうなぁ・・・と思いながら読み。江戸の街並み、生活道具を10分の1の縮尺で再現した写真入り。最初それを知らずに眺め、あれ、でもなんか作ったっぽい、と思ったら桶屋さんが本業の三浦さんが丹精こめて作ったこれまた職人芸なんだぁ、と感心。「職人」という響きがこの方に限り頼もしい。会話体のテンポのよさと精巧な建具などを楽しく味わえる一冊。

3月9日(水)

「おうちとおでかけ」
廣瀬裕子 文藝春秋 ¥1095
こんなエッセイ出したらいいなぁ、そしてこんな暮らしができたらいいなぁ、としみじみ味わえる一冊。大きさも持ち運びにいいし。でも、ま、ここまで似た好みを書いてくれるなら味わう側にいてもいいか、と思う私。


「フランス芸術紀行」
饗庭孝男 NHK出版 ¥1500
5年目の読書日記でようやく紹介できるこの一冊。というより、この人の一冊。南山大学にいらしてからはしばらく文芸評論の出版物も目に入らなかったが(自分が不勉強なのかも)ようやく!と言う感じで新刊を図書館で見つけて迷わず借りて学生時代にタイムスリップ。
フランスは行ったことないので村々の景色は具体的には思い浮かべられないのだが、遠藤周作からの仏文学、ゴッホ、モネなどの絵画から生き生きと立ち上がるものがある。何よりも味わい深いのは抑えられた独特の饗庭文体。一般の人の興味もひいてくれたらなぁ・・・
p30の「泉の上に教会が作られた」というあたりは「竜の柩」などを思い出すけど。
個人的に今後の見たいもん「ニコラ・ド・スタール」という画家。

3月5日(土)

「エコノミカル・パレス」
角田光代 講談社 ¥1400
この本では直木賞はなかったかな、やはり。手法の面白さでは2004.6.20「トリップ」かしら。ちょっと映画「東京タワー」している一冊。それぞれの身勝手さと終点のなさがかえって今なのかも。最後の若者の残酷さが頼もしいほどに小気味いい一冊。


「汝みずからを笑え」
土屋賢二 文藝春秋 ¥1381
週刊文春でもお馴染みの哲学者、ツチヤセンセーのユーモアエッセイ。9割は笑って読めるが一部に生きるための奥義がタイトルどおりに書かれている。そこを見つける楽しみを味わって欲しい一冊。

2月25日(金)

「陸奥・出羽 斯波・最上一族」
七宮A三 新人物往来社 ¥2800
「リクエストしたのがご用意」電話に努力してなんとか読んでいったけど、東北の歴史に疎いせいか登場人物に今一つ感情移入が出来ないまま読了。「天を衝く」を読んだときのようでした。それでも秋田の由緒ある人々のことが歴史的にわかった。これに¥2800はちょっとびっくり!図書館値段。(RUMIKO造語 図書館なら借りるが自分は買わない、買えない)


「暮らしを変えた道 50選」
共同通信社編 ダイヤモンド社 ¥1600
読み終わると四国や九州が多かったのに気付く。四国の道が遅れていたのか?四国の人々にやる気があるのか、四国に注目と期待が集まっているのか?秋田も秋田自動車道がローソンを連れてきた、と思う。

2月20日(日)

「花の家事ごよみ」
吉沢久子 じゃこめてぃ出版 ¥1300
お借りしていた本です、やっと読み終えました。1年の家事の目安を花や木々を見ながら暮らしてゆこう、と言うエッセイ集。これは農耕民族の日本人らしい賢い暮らしでもあるのよね。p134「無芸大食」と言うフレーズ、親近感は私だけ?


「妖怪学新考」
小松和彦 小学館 ¥2300
以前お借りしてすごく面白かった畠中恵さんの若旦那シリーズ「ねこのばば」「ぬしさまへ」に影響されてつい手に・・・新考というところは?だが、妖怪の誕生の歴史が分かった感じ。
2002.10.29の日記に書いた「新耳袋」の元になったのだろうか「耳袋」(江戸南町奉行も勤めた旗本の根岸鎮衛)の幽霊譚も載っている。(p108)
最後のまとめでp247こんなに文明が進んだ現代でも妖怪が好まれるのは「不思議」を人々が求めているからでそれが科学の進歩にもつながる、というところが「新考」かな?

2月14日(月)

「わかば」上下
尾西兼一 ポプラ社 ¥各1400
今のNHK朝の連続ドラマです。図書館にあったので借りてしまいました。さて亜紀ちゃんと山岡さんはこれから?田中裕子演ずる詩子さんと内藤剛志さん演ずる木下さんはこれから・・・?ふふふ、知ってる自分。


「森の中の海」上下

宮本輝 光文社文庫 ¥各698
「わかば」も阪神大震災からの心の再生が大きなテーマになっているが友人Mさんに借りたこの本も偶然阪神大震災で図らずも夫の不倫を知り、罹災、離婚へと平穏なヒロインの人生が大きく変わってしまう大長編。周囲の人々とのつながりも丁寧に描きながら深い森や巨樹に癒されていく人々の心を辿っていくと改めて自然の力に圧倒される。
残念なのは下巻のカバーのあらすじ紹介でキーワードになるはずの「水指し」を「水差し」と誤植?してしまったこと。全然違うものやん!斬り!


「4時のおやつ」
杉浦日向子 新潮社 ¥1300
1章はすべて会話体でうまいもんを紹介。でもこのかたちは老舗のゆったり感が出ないような気がする。なつかしい味を辿る一冊。辿りたくても出版された時点で既に閉店している店も多く、それは大切な物を失っていることにならないだろうか・・・

2月10日(木)

「グッド ルッキング ライフ」
津田晴美 TOTO出版 ¥1524
TOTO出版の本は藤森照信氏の「美術館三昧」以来である。
新宿にあるコンランショップに夫と行ったとき同じ建物(というかコンランショップが入っている)のOZONEセンターで津田さんの展示コーナーがあったのを思い出した。OZONE関係の人だったのね。それなら暮らしのセンスアップというのもわかるわかる。そこも結構若いカップルがインテリアだったり家の相談や形録見に来ていたから。
サブタイトルの「いい感じ生活をしている人の43の行動」は言い換えれば「生きる為に集中力を発揮」している人ということなのかも。


「ありがとうございません」
檀ふみ 日本経済新聞社 ¥1200
40代の檀さんの文として素直に読んでいたが、なんと30代の文章であったことにびっくり!なんと落ち着いた内容。ちょっとおっちょこちょいで、でも人柄に出るのはきちんと感、というところが読んでいても気分いい。

2月4日(金)

「銀の皿に金の林檎を」
大道珠貴 双葉社 ¥1200
♪銀の糸と金の針でも私の心は繕えない・・・昔読んだくらもちふさこのマンガにあった歌詞です。きっとなにかの歌の一部なんでしょうね。それを思い出したほど鮮やかなタイトル。
2003「しょっぱいドライブ」で芥川賞受賞(こちらの読書日記には2004.10.19に登場)。壮絶な10代、祈りの30代をあっさりと描きつつじっくりと味わえる。若者の意識の中ではすでにもう高齢化社会というのはそろそろ幻想になりつつあるのか?と感じるほど。


「脳力のレッスン」
寺島実郎 岩波書店 ¥2000
自分で判断する力を養え、と言うテーマだが、本の大半を割いてアメリカ信仰から目覚めよ、と専門的に説いているので読み進むのが大変だった一冊。
ちなみに「脳力」という言葉は南方熊楠が使っていた言葉だとか。今日の朝日新聞の斎藤孝の「日本語トーク術」にも書かれていたわ。
寺島氏に寄れば脳力の衰えはTV、パソコンの発達によるバーチャルリアリティの普及による一種の退化で、生の人間とのふれあい、ぶつかりあいにまさるレッスンはない、と展開している。

1月29日(土)

「夫婦の一日」
遠藤周作 新潮社 ¥1200
学生の頃おじさんだった遠藤周作の作品も今読むと「中年のくたびれた男(作者)」の心情がそのまま自分たちに当てはまってくるから「本は世につれ」なのだろう。遠藤氏最後の純文学短編である。


「101歳の人生をきく」
中川牧三 河合隼雄 講談社 ¥1500
長生きする、ということは(覚えてさえいれば)それだけで歴史の生き証人になる、ということである。ただ、一冊の本にするためにまとめていくのは聞き手の力量も大いに関係あり?
p197「人間というものは、片方に音楽、片方に文字というものをもっている」p198「音楽は五感に感じる」というところは根源的な所をついている。

1月22日(土)

「秩父事件」
秩父事件研究顕彰協議会 新日本出版社 ¥1619
秋田の図書館にこれがあった、ということはずばり映画「草の乱」のおかげね、きっと。でも埼玉出身のわたしでさえよくわからなかった秩父事件のことがわかってラッキーな一冊になった。


「ふにゃふにゃになった日本人」
マークス寿子 草思社 ¥1500
この人の毅然とした日本人批判はいつも、ごもっとも、と共感しつつ読む。結局イギリス型子育てが自分に合っていたからかも(すでに子どもは成人)。家庭でのしつけの大切さと影響力の大きさを心しながら読みたい一冊。子育て中の人に持ち炉の進め。でもこうなったら孫に生かそう、しつけの心。「老人は生活を楽しむだけでいいのか」というきつーい一章もあるのでそちらも中高年にお薦めかもしれません。

1月14日(金)

「ねこのばば」
畠中恵 新潮社 ¥1300
こんな面白い本もあったのね!と貸してくれた方にまたまた感謝!いくらでも続きができてアニメにもなりそうな「妖(あやかし)」シリーズ江戸版。陰陽師よりは身近な不思議の世界。商いストーリーの展開が軽くて読みやすい一冊。


「ぬしさまへ」
畠中恵 新潮社 ¥1300
これもまた「妖」シリーズ。洋風に作ると恩田陸「ライオンハート」になるのがこの中の短編「仁吉の思い人」。どちらも時を超えて続く「ネバーエンディングラブストーリー」「ねこのばば」同様ちょっと病弱な若旦那の鷹揚さがかわいいんですねぇ。

1月6日(木)

「心の深みへ」
河合隼雄 柳田邦男 講談社 ¥1500
年の初めに河合さん、である。対談集だが読み進むと、柳田さんは懺悔しながら今を生き、河合さんからのカウンセリングを受けている感あり。
p7で柳田氏が河合さんを評する「平易な言葉で柔らかく話すのだが、核心を突いている。聞いていると、気持ちがほぐされてくるのと同時に,時代と人間を見る眼が整理されてくる」ところが私も河合さんを読む理由かも。
嬉しくもp202「高度成長の恩恵にもあずからず、バブルにも乗れずに取り残されてきた東北には,一番大事なものが温存されている。(中略)これからの日本の文化の発信地は東北」さぁ、東北の宝を探そう。


「生きがいについて」
神谷美恵子 みすず書房 ¥1500
なんと娘のレポート課題図書。もしも若者に生きがいを考えさせる為に読ませるならこれは神の問題も出てくるのでおなじ¥1500なら「心の深みへ」だなぁ。
生きがいを見つけることより、生きがいを失ったときの立ち直るすべは話を聞いてくれる人がいること、これ医者が病気を見るのなら、看護の方の基本だと思う。そして高齢者の増えた現代、お年よりの嘆きは「生きがい」である。自分の楽しみを追求するだけでは幸せそうだが生きがいにはならないらしく、「今日もまた目が開いてしまった」と思うのは哀しい現実。


「幸田文の箪笥の引き出し」
青木玉 新潮社 ¥2200
折り紙の先生に借り。娘にこれほど影響力のある母、というのもすごいものである。ずっと母のほうを見て生きる姿は一見理想のような厳しいような。
着物語りの一作ごとに差し込まれている着物の写真が美しい。


「底のない袋」
青木玉 講談社 ¥1500
これもまた折り紙の先生ありがとう。古きよき時代の「小石川の家=日本」を描くエッセイ。p115「おこげがおいしい」お釜を洗う人は誰?と言うところを読むと「焼き魚はおいしい」けど自分たちは使ってもいないロースター(しかも電気,ガスの2台のことも!)を洗うのは嫁、というどこかの実例のよう。またp142「生きているのも芸のうち」芸ある人ならそれでもいいけどね、と新春見てきた歌舞伎の世界を思い出す。客席に車椅子でいらした高齢のお方、それを押すのはなんときちんと着物を着た女性、ってすごい現実離れが素敵。


「新選組、敗れざる武士達」
山川健一 ダイヤモンド社 ¥1400
また読んでしまった!内容は想像つくのに〜、という感じ。歴史の中では葬り去られた新撰(選)組が崩れてもなお次の時代に残す熱い情熱の中身を考える。
意外に目を引いた老中安部正弘の先見性とあっけない死の謎。
ほう、と思ったのはp28、「20歳になる前に女性に人気があったかどうか、ということは男の人格形成にとって大切な一つの要因になる。(中略)土方、高杉、坂本竜馬、いずれも生命体としての自分に自信を持てるので大人になってから後ろを振り向くことなく突っ走る過激さを発揮する場合が多い。」そして20歳前のリベンジが男にとって結婚なのね、きっと。そこで自信を持つ事で社会への足がかりにもするのかも。って少し昨今の女児等への犯罪を見ていると思ってしまう。


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