RUMIKOの読書日記

2010年
カウンター設置 2003/02/11

 

12月26日(日)

たぶんこれで今年はラスト、だから一冊でもアップしちゃいました。皆様来年も良いお年を!

「木洩れ日に泳ぐ魚」
恩田陸 文春文庫 ¥590
たった一晩を語りつくす恩田さんならではの作品。「夜のピクニック」続、みたいな。愛し合ってはいけない生き別れになっていた双子の子兄妹、その別れの原因を作った父に生まれて初めて会った日に父は転落死?さてその死の真相は?最後の濃密な夜を明かして二人はそれぞれの明日を歩いてゆく、ってところも「夜ピク」に酷似。
p9、「夜に窓を開けていると、外と空気が繋がっていて不思議な胸騒ぎのする開放感がある。」は一人受験勉強をしていた夏の日を思い出す人が多いのではないか。
p86、「あの明るい緑、曇りのない幸福な緑は今でも目に焼きついている。あんな日は二度と来ない。あれは人生の春だった。」という思いもやはり20代独特のもの。
p280、「僕たちは、カメラを通して、未来の僕たちに笑いかける。歳月というフィルターを掛けた時、全てが幸福な記憶にまるように。」という部分も納得の名文。切り取られた舞台の一場面のような緊張感のある本作の解説が鴻上尚史、というところもうまい人選。

12月23日(木)

「利休にたずねよ」
山本兼一 PHP文芸文庫 ¥838
直木賞をもらったときに心引かれたので文庫化を待ち即買い。らすとで切腹するまでの利休がさまざまな茶室で茶を点て、よばれる。
終世話さなかった緑釉の香合を時の人々が手に入れたがる。利休が利休になってゆく様子も味わえる一冊。
秀吉を軽蔑しつつもその大きさに感服している利休、その秀吉がいよいよ天下を手中に収めるために機を待つ利休とのひとときを描ききっている部分が一番表題に近いかな?各短編の中では「白い手」「待つ」が緊張感があって秀逸。
名文はp182.「頭の中は冴えている。たとえ、悔いに満ちていようとも、今日という新しい一日が始まる。こころにどんな闇を抱えていても。どうせなら気持ちよく生きたい。」これって一期一会の心に通じませんか?


「ブラックペアン1988」上下
海堂尊 講談社文庫 ¥419
「ひかりの剣」で速水、清川の学生時代に出てきた若い頃の高階現病院長がいよいよ東城大に現れる作品。ペアンを体内に置いたのはミスか?を巡って伝説の外科医渡海にも光が当てられる。明るい道を行く高階医師の姿を追いかける一冊。巻末に「バチスタ」主演だった吉川光司と海堂氏との対談が良い。天才は明るい、という言葉を裏付けるようにp205の海堂さんの「一生歌ってスキップする人間がいてもいいかな」というのもあり、だと思う。それに応じた吉川君が「歳取って一番しんどいのは、モチベーションを上げること。上げたら上げたでキープすること。」は至言だ。

12月4日(土)

「夜行観覧車」
湊かなえ 双葉社 ¥1500
湊さんといえば「告白」が今年大ヒット、ということで映画化されたときのヒロイン松たか子さんが帯を書いており、夜行観覧車を家々の明かりにたとえ、「希望そのものだ」と核心をついた文章を寄せている。エリート一家の夫が妻に殺される、というセンセーショナルな内容を描きつつ、ラストp326でずばり「真相はただひとつ。悼む相手(父)も責める相手(母)も、なぐさめる相手(弟)も、みんな家族だ」と言い切って収束させていて湊さんらしいラスト。


「渋沢栄一 『明日の不安』を消すにはどうすればいいか?」
大下英治 三笠書房文庫 ¥571
同時代の岩崎弥太郎と一線を画したまま事業を起こし続けた渋沢から学ぶ、という一冊。読みやすいが伝記的な記述は学べるが文中に不安を消すにはどうすればいいのか?への解はないので、小タイトルを読んでいくほうが明解かも。

11月20日(土)

「私の看護ノート」
紙屋克子 医学書院 ¥1500
職場のK主任より借り。この場を借りて長めの感想を書きます。紙屋さんは実践者として、指導者として度々秋田にもいらしてくれている。職場からも関わりのある人が勉強会や講演会に出席して研鑽を積んでいる。この本の主旨は、やりがいのある現場の日々の記録であり、やりがいはあるのに離職者が多い職種への提言でもある。紙屋先生は「看護ができる条件と環境作りこそ有効な解決策である」としてp125.「保険・医療の領域で働く看護職には、一般企業で働く労働者とは異なる専門職としての職業倫理、労働観が存在することを理解しなければならない。」とした上で「看護師の離職は単に労働条件の厳しさや待遇の悪さだけに起因するものではない。専門職としてのプライドが保てるだけの待遇であるか、という点に、もっと注目した検討が行われるべきである。」と書いている点は介護の現場でも当てはまるようである。また、p150.「褥瘡の原因は、麻痺や栄養低下、不潔、浮腫などが挙げられるが、それは患者(介護の現場では利用者ということだろうby木村)の状態であり、原因は圧による血行障害」と言い切ってくれたところも私の中にすとんと落ちてわかりやすかった。

11月14日(日)

「初恋温泉」
吉田修一 集英社文庫 ¥429
いろいろなカップルが温泉に行って関係が変わってゆく短編集。タイトルは初恋の人と結婚できて仕事も成功した男性が突然別れを切り出され・・・という内容。この作品だけがちょっと理解不可能な部分を残し手いる「幸せを積み重ねても幸せになれるとは限らない」と言って妻が別れを宣言するのだ。


「光射す海」
鈴木光司 角川文庫 ¥590
解説を読まなければ恋愛ミステリーだったろう。遺伝子の恐怖が残酷に哀しく描かれているが、解説を読むと確かにこれは「シーズ・ザ・デイ」の系列であり、「リング」と「らせん」の間に書かれた「遺伝子」の物語ということである。側面で描かれる繊細な青年の立ち上がりの軌跡、p73「他人に関心のない人間は、自分にも関心を抱かない」という名格言、p237「精神疾患の治療において(中略)たったひとりでいい。愛する人間から無償の愛を受け続けられれば、もはや患者の病は病でなくなり、病院にいる意味は消え失せる」という文章も重要。さあ、重大な遺伝子の疑いは晴れた、ヒロインの踏み出す一歩は?


「白銀ジャック」
東野圭吾 実業之日本社文庫 ¥648
東野ワールドの中ではダイナミックでハッピーエンドな映画になりそうなエンタ。人間の暗闇を描く作品群とは一線を画してスピード感あふれる結末へ。

10月21日(木)

「ツチヤの口車」
土屋憲二 文春文庫 ¥467
笑い声をたててしまいそうないつもの名文?にご自分で書かれたというイラストには爆笑してしまうほどの迷画ぶり、そして解説藤巻健史、となれば面白くないはずが無い。お茶大学部長になられてからのエッセイ。


「少女には向かない職業」
庭一樹 創元推理文庫 ¥580
新聞書評でほめられていたので購入。犯人の一人が以前社会を驚かせたネットで毒薬を買って母親を殺そうとした女子高生を思い出すイメージ。主人公が暴力を受けていた義父が心臓発作を起こしたのを放置して死なせてから少しずつ心がパンクしそうに張り詰めてゆく様子で話が進んでゆく。
p109「故人の噂話は、たいていは美談だ。」というところは確かに。
そして中学の頃って結構誰でも「自分では無い誰か(もちろんたいていの場合「今の自分」よりランク上ですね)になりたい→家族の否定→自我の芽生え」って時期があったと思う。
主人公の告白では少女には向かない職業は殺人犯かもしれないが、「こんな自分のはずがない」と娘を疎ましく思い、いつまでも現実を生きることの出来ない母親を見ていると少女には向かないというか出来ない職業は主婦かもしれない。

10月12日(火)

「エゴイスト入門」
中島義道 新潮文庫 ¥438
いつもながら騒音に立ち向かい、自分の論にまっすぐ、ある意味強さは健在である。エゴイストはクレーマーなのか?哲学者はならず者なのか?ラスト2章の若者の自殺願望の章はご自分の体験を踏まえておりすごい。


「ひかりの剣」
海堂尊 文春文庫 ¥562
この本、海堂ワールドに意味あるかな〜、価値あるかな〜、と思いながら購入したが、あーら、バチスタ、ジェネラル、ジーンなど読んで無くてもこの一冊はスポーツ本として楽しめる。いや、ここからあちらに行くほうが楽しかったのかも。海堂ワールドで輝いている速水と清川の激しい学生時代のライバルの対決までが描かれていて楽しい一冊。あまりの面白さに本好き仲間に即貸し。


「恋はさじ加減」
平安寿子 新潮文庫 ¥483
さじ加減、という塩梅がきっと恋には大切なのよ、と思わせる短編集。実は2006、7、31の読書日記に新刊本で借りた嬉しさをアップ、この頃平さんにはまってました。向田邦子さんと比していた。今読み返すと、年下に、おじさんに惹かれてゆく女心が得手不得手の食材とともに描かれる。奇しくも「悪人」を読んだ後では、同じく母親に去られておばあちゃんに育てられた修介なのに不幸の影がない(「悪人」の祐一は黙々と近所のお年寄りの面倒まで見て周りの人に気の毒がられているほど)理由はp283「お祖母ちゃんに可愛がられた。手塩にかけて十分に愛された。」と言っている。もちろん「悪人」の祐一のおばあちゃん(樹木希林)もかわいがっていたんだろうけど、もしかして同じ境遇の子供を育てるにあたり、捨てた母親のことはリセットしてしまう、あてつけのように頑張りを見せたり子供にあの女は、みたいなことを言ったり匂わせてしまう、という二つの育て方でその後も変わるかもしれないな、とふと思い。もちろんこれも即貸し。


「のぼうの城」
和田竜 小学館文庫 ¥457
単行本のときからインパクトある表紙が気になってはいた。それがわが出身埼玉の行田市忍城の話、しかも野村萬齋主演で映画化、だから文庫本化、というのでついに購入。忍城は知っていたが歴史に疎い私。というより26歳で秋田に来たので埼玉を勉強する時間がなかった、けど高校時代は郷土研究部、そういう話は嫌いではなく、ということでこれも何かの縁か引力か。石田光成とこーんな戦いをしていたとは知りませんでした。しかも成田氏が秀吉に行かされた烏山も親類がいたりして懐かしい町。面白い。なんか急に埼玉に誇りを持ったほど。

9月21日(火)

「悪人」上下
吉田修一 朝日文庫 ¥567
今年前半は本屋さんで一番目立った作品。話題の映画化で、先に映画見てからSさんに借りて読み。文庫本カバー持参すると割引になります。おかげさまで割引でした。ありがとう、Sさん。
映画は妻夫木、深津、岡田将生。
デートするはずだった女の子が岡田君(これまた悪ボンの役が合っていてさぁ。「告白」の岡田君よりいいはず)の車で行ってしまうのを見送ってから追いかける瞬間スパークする妻夫木君の激しい目は確かに新境地。映画では下巻が中心と言った感じの展開だったが、本では深く味わえる。本当の悪人は?でもやっぱり?
平凡な女子の日常を救うのはドラマだ、という使い古された言葉も彷彿とする。
妻夫木君扮する祐一が自分を捨てた母からお金をせびる件で「被害者は一人じゃいけない」という本の部分でも『母に捨てられた被害者の』祐一が、母に金をせびることで母も『息子に金をせびられる被害者』にすることで心の負担を減らしてやる、ってことね。ただこの『捨てられた』というのがトラウマになって満島ちゃんが簡単に岡田君の車に乗って行った姿にキレたんだろうな。


「35歳の幸福論」成熟社会を生きる12の戦術
藤原和博 幻冬舎 ¥1000
「人生の教科書『よのなか』」のちょしゃであり、民間人の中学校長、教育界のさだまさし、他さまざまな肩書きを持つ?藤原さんの「35歳の教科書」。アップルダイヤモンドを心に描いて歩もう、という話。いまや仕事・結婚・出産で迷うのは35歳ころかも。で参考になる一冊。もちろん仕事に油の乗ってきた男子にも。p136、結婚に関して「子供3人以上なら、左右を分けていた壁をぶち抜いて100平米以上の広さを確保した公営住宅に管理費だけで入居できる」とする、というのは極論だが子供手当てより政府の具体案って感じが出てるよねぇ。私的にもこれ以上賃金アップが望めないなら住環境などで補充するしかないかも、と思うので共感。

9月12日(日)

「ジーン・ワルツ」
海堂尊 新潮文庫 ¥476
菅野美穂ちゃんヒロインで映画化、というのがイメージぴったり(きりっとした視線が)の、代理母出産につながってゆく前哨戦の一冊。そうなの、誰だって50代の女性が娘の子を出産、というニュースには驚いたはず。読んでる途中で野田聖子議員の妊娠話題も出てきてビンゴでホットな話題で一気読み。「マドンナ・ヴェルデ」になってゆく前に前哨戦?「ひかりの剣」も購入。


「砂漠」
伊坂幸太郎 新潮文庫 ¥743
読み終わりたくない一冊。「ゴールデンスランバー」が容疑者となって追われる主人公が現実にも心理的にも大学時代とつながって救われる物語だが、この作品は大学時代に事件が起こるから主人公も学生5人。タイトルの「砂漠」は学生(子供)から踏み出してゆくべき社会を表していて、砂漠に一歩踏み出す勇気、というところが伊坂作品の共通項でもあるような。解説の吉田伸子さんは西島サイコ〜!!!と叫んでいるが、私的にはどうかなぁ・・・少し変わり者(ということで想像してください)に伊坂君がいい言葉を与えているかなぁ。269「俺を動かしているのは、俺の主観ですよ。」とかp488「俺は恵まれないことには慣れてますけどね、大学に入って、友達に恵まれましたよ。」とかのほろりの言葉にフラっときちゃんだろうなぁ。こういう人格をも認めて付き合えるようになるって言うのが知性ある大学生ってことでもあり。

8月30日(月)

高齢の母に読ませるために購入の本たちでした。お盆に続き2回目の埼玉(詳細は掲示板でご覧ください)。2度の猛暑にぐったり。

「50歳から楽しい楽しい『一人時間』」
三津田富左子 三笠書房 ¥571
投書を続けてエッセイ集ができました、という90歳の方の本。ご主人を50歳で亡くされてからの一人暮らしを明るく前向きに楽しんで元気をもらえる一冊。将来を見つめ考えすぎて悲観せず、その日その日を精一杯生きることの大事さを教えてくれる。キーポイントは「いざというときに頼れる人がいるひとり暮らし」なのだ、やっぱり。


「老いを生きる暮らしの知恵」
南和子 ちくま文庫 ¥660
今回は母に買った本を2冊先読みってことで。上記の「50歳から・・・」の三笠書房は漢字が大きく読みやすかったが、こちらは60代に書いた「暮らしの老いじたく」に続くその後のシリーズ。作者70代後半、有料老人ホームに入居。三津田さんパワフル90代とは違い、夫より先に骨粗しょう症と腰痛になってしまって、家事や送迎を夫に頼みながら、という大変そうな暮らしだが、世の中の要介護の方のほとんどがこの南さんの暮らしだろうと思うので比較しながら読むのも一興。
p180.「グチ」を言わずに「弱音」を吐く(弱音を吐いて上手に手伝ってもらう)というのは賢い戦略だなぁ・・・と感心する。私の周りにあまりにもグチ上手の方が?多いので。グチは周りの人をいやな気持ちにさせるよね。


「贅沢を味わい、質素も楽しむ」
吉村葉子 三笠書房 ¥571
p5.「人生で何を重視して、何を捨てるか」という考え方や、日々の暮らしを賢く満喫する方法、とあるのが今の日本にマッチしているようだ。フランス女性の生き方を紹介しながら筆者のコンセプトが伝わってくる。
p130.広い部屋より居心地良い部屋、p226.お金がないことが不幸なのではない。お金が無いから悲しいと思うことが、不幸の始まり等々。ちなみにフランスは週35時間労働、出生率も高いぞ。

8月18日(水)

「家日和」
奥田英朗 集英社文庫 ¥476
メタボ精神科医伊良部が登場して笑わせてくれた「イン・ザ・プール」他のシリーズの作者だが、ほんわかとする今どき家族の物語。「サニーデイ」と「家においでよ」が良い。ネット、リストラ、シングルアゲイン、起業、在宅ワーク、ロハスって置き換えれば今風短編の完成。


「バイバイ、ブラックバード」
伊坂幸太郎 双葉社 ¥1400
文庫本でも700円する時代なら買ってしまうわ。7月19日にアップした畠中さんの文庫同様偶然この単行本も中拍子が空色なんです。主人公の星野君が元彼女5人に別れを言いに行く(しかもとてもあなたたちが負けるとは思えない女子を連れて・・・)、といってしまえば簡単なストーリーだが、らすとで開かされるタイトルの意味がさすがと思わせる伊坂作品。
p158、弱気になって逃げ腰だとかえって負けるから自分も母親が教えてくれたようにどんとぶつかろう、という星野君の結論こそがタイトルに通じるヒントかな。


「なわとび千夜一夜」
林真理子 文春文庫 ¥605
2005〜006年の週間文春エッセイということで帯には「事件を起こす女はたいてい太っている」とあり、林真須美、、畠山鈴香、進藤美香を取り上げそれでも結婚して子供がいる、と驚き、自分だってすれすれ、と告白しているところが林さんらしい一冊。


「論語と算盤」
渋沢栄一 ちくま新書 ¥760
偉人の出ないといわれているわがふるさと埼玉から生まれた実業の巨人渋沢栄一の74歳の著作を解説付きで。今年度大河ドラマで意気軒昂な岩崎弥太郎から「手を取り合って大きな富を独占しよう」と誘われたが自分ひとりが富むのでは不満で、事業を起こすことで日本を富ませたい、とあれ?竜馬じゃん、と思えるほどのお人柄で財閥を作らなかった潔さと強さに注目してほしい。
p188、親孝行できるように親の力で道をつける(親の意見を強要しない)という姿勢を見習いたい。竜馬がもう少し生きていて彼とつながって行ったらまた日本は面白くなったかも。だから歴史の不条理って面白いのかもしれないけれど。

8月17日(火)

「ジェネラル・ルージュの伝説」
海堂尊 宝島社文庫 ¥552
「−凱旋」を読んだら買わずにいられなくなった一冊。天才速水誕生までや、速水その後を短編で。加えて作者のこれまでと海堂尊になってからの年表もおもしろい。5月29日アップの東野圭吾の「そのころボクらはアホでした」同様ユニークな作品。思えばこの二人のヒットはリンクしているのね。


「赤毛のアンに学ぶ幸福になる法」
茂木健一郎 講談社文庫 ¥476
「赤毛のアン」に夢中になって8巻まで揃えた他に番外編も実は持ってた!読んでた!という時代を持つ人御用達の一冊。そのくせモンゴメリーの悲惨な最期も疑問だった。自分がなぜあのシリーズにはまったか、そこから何を読み解くか?必読の一冊。p28で著者とアンとの出会いを「背表紙が呼んでいる」と表現したのがあらゆる本との出会いの瞬間を描写していて秀逸。p88、想像力の二面性にも言及。「行き過ぎて現実とのバランスが取れなくなる反面、つらい現実を乗り越える種になる。」

7月19日(月)

「リセット」
北村薫 新潮文庫 ¥590
死を迎えつつ魂の記憶はつながれてゆく、という「スキップ」「ターン」に続くときの物語三部作。最初はぎこちないスタートだが、ラストが感動の一冊。時代を超えて紡がれてゆくスケールの大きな作品。


「なるほどの対話」
河合隼雄 吉本ばなな 新潮文庫 ¥476
日本の今を語る対談集。若者が生きにくい現代を憂える一冊。やはり年の功?か、ばななさんがカウンセリングを受けているような包容力のある河合さんの受け答えに安心しながら読み進め。


「とっても不幸な幸運」

畠中恵 双葉文庫 ¥590
ほかの歴史ある○○文庫や△△文庫と違い、双葉文庫はカバーを取ってもカラフルで可愛いです。読んですぐ画像が浮かんだこの短編集は「しゃばけ」シリーズがTV化されたから誰かこの本も目を付けてくれないかな〜、と思うほど。やはりバーとかが舞台になるってことは個性的であることが期待されるから面白い。店長の娘さんの「のりこちゃん」は中一女子なのでイメージがわかないが、私がTV化するなら店長は反町、健也は佐藤健クンね〜、っていささか強引?

7月13日(火)

「ブラザーサン・シスタームーン」
恩田陸 河出書房新社 ¥1400
帯に「夜のピクニック」から4年、青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生!とある。ピクニック後4年、確かに今度の主人公女子1、男子2が大学の4年間を振り返ってそれぞれが語ってゆく作品。たぶん恩田さんの母校が舞台。ただ、「夜ピク」のような交錯感は無く、淡々と各自の4年間を振り返りつつ、共有された思い出がきらめく一冊。確かに本と映画と音楽、それさえあれば幸せって言えた時代は大学時代までだったなぁ・・・蛇が落ちてくるっていうのは何かの暗喩なのかが最後までわからず。奇しくも次にアップする「ターン」にも蛇が泳いでるんだけど・・・


「ターン」
北村薫 新潮文庫 ¥590
この人が直木賞をもらってベッキーさんシリーズを読まなかったら「スキップ」「ターン」「リセット」というオーディオ機器のようなタイトルの本は知らなかった。3作ともタイムトラベルっぽい本でこの「ターン」は柔らかなラブ浪漫。

6月20日(日)

[MAZE」
恩田陸 双葉社文庫 ¥524
2006年に読んでます、単行本で。そして今回は文庫になったので即購入。その解説で「現代のもっとも卓抜な夢の紡ぎ手」とあってあまりの的確さに言う事なし、です。おねぇ言葉のクールな主人公恵弥クン(おっと、40歳前後となっています)はこの後「クレオパトラの夢」にも登場。ここでは30代後半となっています。ってことで抱き合わせで買ったのでこれからこちらも読みましょう。謎解きの面白さを味わえる2冊。


「クレオパトラの夢」
恩田陸 双葉社文庫 ¥571
奇しくも2004、6、15の日記にアップしてます。そのころは平安寿子にはまっていたようです。そのときも主人公恵弥の個性に注目していたけど、はて、今映像化するとしたら誰がいるかな?って感じでちょっと対象が思い浮かばず残念。今回は「クレオパトラ」が何かわかっているので妹の死んだ恋人周辺の心理戦を味わって読み。


「死神の精度」
伊坂幸太郎 文春文庫 ¥524
音楽がエネルギーともいえる死神の姿が「この島には音楽がない」ことに気づく「オーデュボンの祈り」に通じていると思う。死神千葉を中心に6編の短編の中になんと「重力ピエロ」の春クン?と思われる男子も出ているから気を抜けません。(「旅路を死神」p227)
最後の作品に「恋愛で死神」の50年後が描かれているからうまい!と思わず拍手したくなるほど。しかも早々とp10で「死ぬのが怖い」という登場人物に「生まれてくる前のことを覚えているのか?」「怖かったか?痛かったか?」と追及し、「死ぬのはそういうことだろ?」と言い切るのはスタートとしても主題としても秀逸。確かに私たち死をおびえるけど生まれてきたときのことだって痛いかかゆいかわからなかったもんね


「田舎町のリストランテ、頑張る」
アル・ケッチャーノ奥田政行 マガジンハウス ¥1500
四月に鶴岡に行ったとき実は探してみた。去年の秋集まった友人の一人が岩手から新潟の実家に帰る途中にあるんだ、ということでも話題にのぼった。ということで満を持すって形で購入。そしたら山形に竹の子掘りに行くという友人が今年の鶴岡産の竹の子をくれた!読めば読むほど秋田の食材だって負けてないど〜、秋田のシェフも頑張れ〜と叫びたくなる。その差は発信力?


「朝日のようにさわやかに」
恩田陸 新潮文庫 ¥552
短編集「図書室の海」に比べると浪漫よりは創造性が前面に出たバラエティあふれる14作品。最初の作品は「麦の海・・・」や「黄昏の・・・」の番外編なので舞台が鮮やかに浮かび上がる。改めて味わうとこの学園のある場所がどうもアナザーヒル付近を思わせる厚みがあり(p13)また「冷凍みかん」もしばしば出てくる逸話。またエピソードで恩田さんが秋田にいたころ見た展覧会の絵のこともあり、本当にその絵を描いた子供がどうなっているのか知りたい。だってそれは実存している子供なのだから。誰なんだろうね・・・

6月6日(日)

「第2の青春」
講談社編 講談社 ¥1800
10歳ぐらい年上の方から貰い。2001年発行だからその人が50歳ぐらいのときに手に取ったんだろうなぁ、と想像しながら読み。そういえば99歳で亡くなった義祖母に「おばあさんはおじいさんが亡くなってから(70歳過ぎてだけど好きなところに行ったり食べたり、自由に暮らしたから)青春だったね」と皆で話したのを思い出す。10年前の筆者達が今も元気だと安心するが、「あぁ、当時はこんな(今の)自分を想像してなかっただろうなぁ」と思う人もいて複雑。p21河合隼雄さんの上司の心得で若者に一歩踏み込む大切さ、p24本当に苦しいときは神サマがちゃんと助けてくれはる。病気になって本当に苦しくなったら、頃合を見て神サマがあの世に送ってくれる。(中略)昔だったら何も考えずに家業を継いだり、百姓をやったりして、自分で一生懸命にやっていたらそれでよかった(中略)今はわれわれは情報が増えて便利になった分だけ、苦しみも増えている。p103森永卓郎「団塊の世代は、親をみる最後の世代で、子どもに見捨てられる最初の世代だと言われている」あたりはなるほど〜と思いながら読み。50人ほどの著者の披露する50代を味わう一冊。

5月29日(土)

「あの頃ぼくらはアホでした」
東野圭吾 集英社文庫 ¥552
なんと帯には「40代の方必読、生き方フェア」とある中の一冊なのであーる!同年生まれの東野さんだから確かにあの頃のあんたもアホでしたね、と言われればその通り・・・テレビっ子という言葉は私のためにもある。金子修介映画監督との巻末対談でストーリーを映像に直して記憶、書いているときにも頭に映像を作る(p292)というところは大いに共感。50代になって読むとこれが現代版「狐狸庵閑話」のようで。本好きの方に即貸しの一冊でした。


「思考の整理学」
外山滋比古 ちくま文庫 ¥520
2年連続東大・京大で一番売れた本と帯にあったので購入したのであろう夫から借りて読み。でもしばらくして著者を見たら外山さん、あれ?じゃあこれって昔の?と思ったら1983年。こういうのが今頃貴重がられるのか〜?と現代の学生に驚き。物を考えるのに一途だけではない発想のヒントをわかりやすく解説しているのが受けているようだ。やはりちょっと昔かなぁ、と思うのは百科事典とかコンピューター(パソコンじゃなくて)というフレーズかなぁ・・・

5月21日(金)

「告白」
かなえ 双葉社文庫 ¥619
面白い!と一気読みできた久しぶりの一冊。映画化もされたし。犯人は早々とわかっているのでその周囲の人々の告白も含めて色々な感想が持てる。映画化で岡田将生君が熱血教師(本人は善意なのかもしれないがで悪い方向に持っていってしまう)というのはもっと年上の暑苦しい30代、のイメージだったからちょっと?と思ったが、松たかこもママ役かぁ・・・とイメージをふくらませながら、きりっとした目線で「犯人は○○です」と静かに言われたら迫力だろう。ラストの復讐の仕方もすごいぞ〜


「人柱はミイラと出会う」
石持浅海 新潮文庫 ¥476
人柱、黒衣、お歯黒、厄年など日本独特と思われる昔の題材を現代にまで形を変えても連綿と続く題材としてミステリーを組み立てる斬新さに脱帽。素朴に質問を発る女子留学生を登場させてうまく説明しつつ解決させていく面白い一冊。

5月8日(土)

「イノセントゲリラの祝祭」
海堂尊 宝島社文庫 ¥476
ただ今TVで「ジェネラルルージュの凱旋」をやっているので購入。本作では田口センセの口をはさむ場面はあまりなく、白鳥でさえ脇役になるほどの学生時代の友人の猛々しい論戦。ただここでも今までと一緒に取り上げられているのは死因究明のための画像診断。確かに解剖というのは医療解剖と行政解剖という2種類があるからですね。ここではひたすら官僚の足の引っ張り合いや出世のコース取りとかが描かれている。さて白鳥の行く末は・・・?今後?


「フィッシュストーリー」
伊坂幸太郎 新潮文庫 ¥514
4つの短編集。表題はその一つ。映画にもなってます。この一曲が地球を変える。「ラッシュライフ」の黒澤が登場する「サクリファイス」や「ポテチ」のほかに「重力ピエロ」と重なる部分があったり、といつものように今までの作品とリンクしあっているエンタな一冊。でもいつもまた前の作品を復習してしまうんだよね・・・あまりにも伊坂作品読みすぎていて・・・

4月22日(木)

「小布施まちづくりの奇跡」
川向正人 新潮新書 ¥720
それでなくても行ってみたい小布施の町が人々をひきつける訳を教えてくれる。町をデザインすることの大切さを見せつけてくれる一冊。同じ栗の名産地なら秋田の西木村だってあるんだけどなぁ・・・と思いつつ読み。


「あなたにもできる悪いこと」
平安寿子 講談社文庫 ¥581
文庫本のカバーの女の子の顔がいいぞーマッチを擦って「おじちゃん・・・」とジト目。やばい仕事に片足突っ込んでいる自称フリー営業マンが女と手を組んでトラブルコーディネーター(解決して詐欺るんだけどね)・・・なんて二人が憎めないのは、巻末の池上冬樹さんの解説にもあるが「キャラ立ちと語りの巧みさ」があるからだろう。そして「私は。人間は他人によってしか世界が開かれないし、他人と出会うことでしか成長できないと思っている」(ここは社会に出る子供たちに送りたいすごくいい言葉だ)という平さんのモットーがこの作品にも注がれていて爽快。


「予知夢」
東野圭吾 文春文庫 ¥505
四月から東野さんの新番組「新参者」がTBSで始まるから、ではないけど今さら読んだガリレオシリーズ。科学で解明してゆくオカルティックな事件の数々の短編集。だが、最終作のラストの女の子だけはもしかすると・・・?

4月9日(金)

「着物の悦び」
林真理子 光文社文庫 ¥570
タイトルの悦がはまっていてすごい。確かに喜び、というより、着物を前にして「悦に入る」林さんが目に浮かんで相応しいと思うから。林さんに限らず誰だって気に入った着物が届いたらうきうきしてしまうに違いないから。着物に関わらず林さんは自分の力で欲しいものをアグレッシブに手に入れてゆくから小気味いい。私のような着物をわからない人にも楽しめる一冊。


「異端児トルシエ」
ジャン・フィリップ・コアント 宇田川里 吉村葉子訳 角川書店 ¥1700
なぜ岡田ジャパンの今年にトルシエ?と思われるでしょうがいただいたから、です。それでもワールドカップに臨む代表のハートとか伝わってくるものはあるのでタイムリーだと思います。読んで思い出せばあのホットさは日本人にはないよなぁ・・・しかもどの国に行っても自分の流儀を通すためにほえまくっているからすごい!異常性格とまで言われたりしているがそれについては読んでから評価ってことで。

3月28日(日)

一ヶ月以上も書かないうちにようやく「「近代日本の女性史」12巻も読み終えることが出来ました。母の実家野町が舞台となっている女性や秋田の本荘が舞台となっている女性の話を利用者さんにするとさすがあの時代の方たちはリアルタイムでわかっているから時代を感じます。

「センチメンタルサバイバル」
平安寿子 角川文庫 ¥590
2006.5.25あたりの読書日記で新刊で借りた感想が載ってます。その頃は40代、今回は50代になっての感想です。あの頃平さんの作品を読むと主人公の心に沿って元気をもらっていたが、今回主人公は悩みながらもフリーター。その母52歳というとどうしても共感はそちらサイドになっている自分・・・p261「ゆっくり海外旅行でも・・・」と言った独身の妹に「あんたその程度でストレス消えるの?」と言ったままのその後の言葉がうっうっ・・・って感じですよ、世の中のミドルママ。


「町長選挙」
奥田英郎 文春文庫 ¥505
「インザプール」「空中ブランコ」と併せて伊良部シリーズ。筆(いやパソコンか!)に勢いが乗ったせいか、ついにここでは湯治話題をさらっていた「ナベ○ネ」「ホリ○モン」「黒○瞳さん」と思われる方たちが患者さんか?と思いながら読むから面白さにスパイス。


「思い出を切りぬくとき」
萩尾望都 河出文庫 ¥570
高校から大学時代、萩尾さん・くらもちふさこさん・槇村さとるさんが私の3トップだった。よしもとばななさん・恩田陸さん・私の共通点?は萩尾さん好きってとこ、なんちゃって・・・でもきっと萩尾さん好きか嫌いって物語が好きか嫌いに通じる影響があると思う。自分的にはそんな偉大な萩尾さんの珍しいエッセイ集。ちなみに私の漫画好きは娘Aにすっかり受け継がれています。

2月13日(土)

「『頭がいい』とは文脈力である」
斎藤孝 角川文庫 ¥476
「頭がよく」なる、というより、意欲的になり、鬱屈から解放される、というイメージがわかりやすいかも。p200〜201の自分の中に閉じてゆかず自分を開放!ってとこかな?


「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」
遥洋子 筑摩書房 ¥1400
2000年、いまから10年前の本である。そして昔図書館で借りて読んだ、かも。10年たつと上野さんの雰囲気も少し変わってきた気がする。膨大な文献、苦難のゼミを乗り越え、学問を究める面白さが描かれる力作。学問の面白さ、知ってる人はいつでも大学に戻りたいって思っているはず。好きな学問をする喜びがなつかしい。

いやぁ、読んだ、読んだ。おせちを作っては読み、食材の買出しに言っては読み・・・2000年も10年目!今年もよろしくお願いします。

1月9日(土)

「夢見る黄金地球儀」
海堂尊 創元推理文庫 ¥610
「チームバチスタ」の舞台桜宮市で起きる黄金強奪事件実行までのあれこれ。なつかしい「ふるさと創生一億円」そんな言葉もあったわネェ・・・そうそう定額給付金なんて言葉もあったわネェ・・・「ナイチンゲール・・・」の小夜さんと瑞人君が登場。だが今回の主人公は最先端の技術を持つ超個性的な親と田口先生を思い出すような息子。盗みの現場のTV撮影のクライマックスが大爆笑の一冊。私としては「深海7000」とか出てくると「日本沈没」を思い出しちゃうけど。でもエンタですから。


「旅に夢見る」
吉永小百合 講談社 ¥1600
正月だから、というわけではないだろうが偶然「夢」だの、「旅(地球儀も旅情を誘うでしょ?)」だのキーワードが似ているものが続きました。なんか春から縁起がいいかも。いただき物のエッセイ集。写真も随所にはさまれ、まさに「大人の休日」を地で行く感じの小百合様のご本。


「SOSの猿」
伊坂幸太郎 中公新社 ¥1500
映画にするなら眞人君は佐藤健君だ!と思いながら読了。それにしても伊坂作品はすごい早さで映画化されているからこの作品ももしかすると、かもね。昨年映画で見た「重力ピエロ」(これは岡田将生君が主役)に通じる暴力と救いの物語。そして重なるようにストーカーを紡ぎながら一気に結末まで収束してゆく力量はいつもの伊坂さんらしい手法。猿クンが言った(p248)「救われるでしょ?物語を想像するのは、救いにもなるんです。」が全編のテーマにつながってゆく。


「KYOのお言葉」
入江敦彦 文春文庫 ¥667
可愛い写真で都の言葉の裏、いや真実を解説。ここでも酒井順子さんの「都と京」は名著と力説(p258)されていて嬉しい。MY京都地図に気になる店を記入して読了。


1999年の日記 2000年の日記 2001年の日記 2002年の日記 2003年の日記
2004年の日記 2005年の日記 2006年の日記 2007年の日記 2008年の日記
2009年の日記 2010年の日記 2011年の日記 2012年の日記 2013年の日記
2014年の日記 2015年の日記 2016年の日記 2017年の日記 2018年の日記
2019年の日記 2020年の日記 2021年の日記 2022年の日記