RUMIKOの読書日記

2004年
カウンター設置 2003/02/11

 

12月25日(土)

「哀愁的東京」
重松清 光文社 ¥1500
構成の良い作品で「哀しい絵本」という印象。一冊の絵本を軸にその作者である主人公と関わる人たちの生と死が哀しく絡まりあう。実在のスターたちも思い浮かぶようなところが目立つのでそんな読み方も一興。
私的にはp160「本が人を呼ぶっていうの、あるんですよ。」のせりふをいつも実感。
最後のタイトル短編で東京の象徴の東京タワーが出てくるシーンは♪スマップしている


「大人のエレガンス・マナー全書」
別冊Grazia 講談社 ¥1200
その年でこの本読むのか〜?と思う人がいたらその人の成長は止まってます。日々勉強,生涯学習です。


「誰か」
宮部みゆき 実業之日本社 ¥1524
「本が人を呼ぶ」どころか「本が本を呼ぶ」実例。なぜならこの本の主人公は編集者だから。ちょっとどっきりですね。
今や小説は「永遠の仔」以来どんな展開を見せるのか、が各作家の個性にはなっているものの、子供時代の秘密(トラウマといってもいいのか?)が一つの主流になりつつある。それが大人になって及ぼす力の恐ろしさを描く作品が多い、
この登場人物の姉妹も間違えば人格障害すれすれのラインを歩いている。
この作品のテーマは「口」(言葉)だと思う。「毒の口」「石の口」が与える影響を現実の人々にあてはめたりしながら読めてしまう一冊。いるいる、こんな人・・・

12月15日(水)

「中島敦の遍歴」
勝又浩 筑摩書房 ¥
その短い作家生活と独自の完結した世界でファンの多い中島敦の作家,作品論。
障害を通して彼を覆う「狼疾」と,祖父で久喜市に住んでいたと言う樵山の影響が興味深かった。
p24、転居を繰り返した中島の幼少期は各地でカルチャーショックを受けるよりむしろ,特定の母体文化を持たないと言う特徴になる、というのも面白い視点だな,と思った。


「犬婿入り」
多和田葉子 講談社 ¥1300
一気に読める面白さではあったが、ではどう理解するのかと言う段になるとあまりにシュールで、かといってエンタメでもホラーでもなくコメントし難いのはこちらが心理学に疎いからかも。物語性のある2編。

12月5日(日)

「マイ・ライフ」
綾戸智絵 幻冬舎 ¥1429
本人そのままの明るい自伝のラストで初のバケーションにNYへ飛んだ日付が2001,9,11.この日にビルの近くにもいなくて飛行機にも乗ってない、でも上空にはいた!ということが既に強運。でもこの本をよむと強運などという失礼な言葉より運=縁かも、と思うホットな一冊。


「白蓮れんれん」
林真理子 中央公論 
前にも日記に載せてたらごめんなさい。これで林さんは「売れっ子作家」から「女流作家」になったと思う渾身の一冊。小説としてならもと「悶々」と書くようなところも手紙と言う形を取って抑えた書き方をしている。白蓮さんに疎い私には歌人としての側面も知りたかった。


「時の光の中で  劇団四季主催者の戦後史」
浅利慶太 文藝春秋
プロデューサーという仕事のあれこれ,そこで出会った時代の花形との交流を描いてとても興味深く読めた一冊。
佐藤栄作ってこんな人なの?とか石原慎太郎が作家から政治家になっていく様が面白い。立ち上げた苦労話は面白いのに大御所になってしまった最近(終わりのほう)は創でもないのはやはり仕方がないか・・・

11月24日(水)

「『出会い』の不思議」
河合隼雄 創元社 ¥1600
学生でなくなると仕事のやり方を教わることはあっても生きることを教えてもらうことは減る一方である。そんな中で河合さんの本はいつも何かを与えてくれる。
それにつけてもp140陶芸家故加藤唐九郎「世の中っていうのはいくら真面目にやっても誰も真面目を認めやしない。いくら何をやっとっても,結局自分のやりたいことをやったほうが勝ちなんだと思った。」というところは、なんか、だよね、かもね、と思うときもある・・・あーあ。
そしてこのたび紀宮様ご婚約にわく日本だが、皇后様が子どもが読書することについてp155「自分の中にしっかりとした根を持ち,喜びと想像の強い翼を持ち、痛みを伴う愛を知るために」意義があるとおっしゃっているのは子育てママに教えたいこと。


「お金と英語の非常識な関係」上下
神田昌典 フォレスト出版 核¥1300
いわゆるHOW TO物なので興味ない人には×。チェックするのは日本が景気回復するのは団塊ジュニアが消費ピークになる2008年だそうだが、さて?しかしそれを2020年以降も保つカギは少子化を救う移民とは・・・それで今・・・


「リーラ」
玄侑宗久 新潮社 ¥1400
初めて玄侑氏の本を読む。主役(だと思う)は亡くなっているのだが、残された人たちが思い出を紡ぎながら思い出すことが成仏していないからか?と考え始めて意外なラストへと展開。南の島で癒されてゆく(実は落とした魂を戻し、姉は成仏する)主人公の弟と島出身の恋人が頼もしくたくましく生命力を取り戻すところがいい。

11月15日(月)

「キャンティ物語」
野地秩嘉 幻冬舎 ¥1600
1994年発行,10年前である。もし本屋に並んでいても「何故今キャンティなの?」という感じで手にしなかったであろう。しかし今年はTVでやった。ユーミンも出ていた。知る人ぞ知る特集物。ご自分も見ていた、というMさんに借り。
あとがきの「子どもの心をもった大人達と大人の心をもった子ども達の店」というのが一番ぴったりくる表現なのだろう。なかなかそういう場所ってないけどね。


「三島由紀夫論」
藤田寛 せせらぎ出版 ¥1680
偶然だが彼が自決したのは11月だったのねぇ・・・(25日)主に「豊穣の海」を題材に三島の葛藤に迫る本。作家として生きることより人間するのはむずかしいのか?「豊穣の海」は最初に出たときすごいタイトルだと思った。「春の雪」「奔馬」もいいタイトルだと思った本たち。今の人たちにはわからないけど。

11月7日(日)

「この人、午後のもてなし」
上坂冬子 講談社 ¥1600
青木玉さん、内舘牧子さんなど9人のお宅を訪問して受けたおもてなしの写真を掲載しつつ人柄も味わおう、という一冊。さすが掲載されている人たちは個性を出しつつきっちりおもてなし上手なので感心しきり。ここで覚えたのは加賀棒茶と慶塚漆器。


「静心」
大石静 角川書店 ¥1500
実は結構山あり谷ありの人生だと思うのにクールに客観的に淡々と(3つとも同じ様な誉め言葉ですね)抱えて創作活動している大石さんはそれでどろどろしがちな人より好きだ。そんな彼女のよさが出ているエッセイ集。それでいてところどころ「おーっ!」と開眼するような鋭さがそそっと出ているからすごい。例えば
p60 関東大震災の時にはまだ「住宅ローン」なるものはこの世にそんざいしなかった(そういわれればそうかも)家を失った人は「ゼロからの再出発」なのに、阪神大震災は日本に「住宅ローン」が普及してから初めての大都市災害で、多くの人が「ゼロでなくマイナスの負債を抱えての再出発」というところはすごーく納得。
p91 英語に「遠慮」という単語はない。・・・これを知って海外に行くと心構えが違うよね。

11月1日(月)

「逢う」
中島らも 講談社文庫 ¥467
オフ会にてHARUさんから借り。たしかこの人今年・・・と思っていたら掲示板のほうにHARUさんからお返事が。そうです、この方今年亡くなったんですよね。でもこの本を読んでもすれすれのところで生きている危うさを感じてしまう。特に年齢の近い仲間うち風の対談の中ではちょっと薬過ぎ、と思ってしまうがそれも作家なら仕方ないのか?そこでもすごいのは山田風太郎大先生。p83「やはり過労の作家は死ぬね。」と言い切るのがいい。まさからもさんが亡くなるとは思ってなかっただろうけど。


「いま聞きたい いま話したい」
瀬戸内寂聴 山田詠美 中央公論新社 ¥1200
これもHARUさ名ありがとう、の一冊。もし自分が瀬戸内さんについての卒論を書くなら必要な一冊になるかも。奇しくも前回読んだ中島らもさんの対談集にもあったがp149「もの書く人は記憶力がいい(RUMIKO註 頭がいい、のではなく、のようです)作家には必要条件なのでしょうか?
p37で小説を書くのも節度があり、好きでない人のことは書かない方が良い、というところも寂聴さんを語る上でのキーワードになるかも。
p82「味方がいるっていうことを認識させるって親の役目ですよね。」と言った山田さん、これが「PEY DAY!」になったのねぇ・・・確かに戦後必死で働いて子供に学歴をつけてやったのになぜか親子関係は悪化の一途、の感じがしますもんね。ついつい親が指導者化してしまうのでしょうか・・・親の必死を子供が感じにくい世の中になった、ということかな?

10月26日(火)

「アンリ・ルソーに見るアートフルな暮らし」
勅使河原純 ミネルヴァ書房 ¥1600
最初の方は「第2の人生はアートライフを」という指南書風だが、著者の仕事柄ルソーに着いて述べてゆく形になった一冊。読みやすくルソーがわかる。p38の「人生二毛作」はすごい名言だと思うが、これからの日本人の生き方になるのか?


「藤原照信の特選美術館三昧」
藤森照信 TOTO出版 ¥2500
価値あり、の一冊である。建築に興味ある若い人が読んでも、卒業旅行や新婚旅行のちょっとした回り道を考える人、老後の美術館日本一周を企てている人(って私?)が読んでも興味津々の一冊。
更に「美術館=禁じられた楽園 by恩田陸」の描写とかぶりながら読んでいたのははまりすぎでしょうか?まばゆさが似ていた美術館もあり・・・

10月19日(火)

「ドリームデザイナー」
川ア和男 KTC中央出版 ¥1400
NHKの「課外授業ようこそ先輩」に出演した人たちの本としての一冊。著者は交通事故で車椅子になったが自らそれをデザインしてしまった工業デザイナー。現代の剣持勇、と言ってしまえばご本人にはどう思われるか心配だが、デザインに対するあふれる闘志が似ている気がした。番組の構成上6年生に携帯電話と包丁のデザインをさせるのだが、子供が考えた便利さのほとんどが今や実現している様にかえって驚き!子供はもちろんデザインって何?と言う感じだったがp199「交通標識は六法全書(中略)、六法全書を開かなくてもひと目でここが一方通行とわかる」ってすごくわかりやすい説明。
またデザイナーの妻ってこうなのねぇ・・・と感心したのはp27(仕事が無くてパートナーを東京へ帰らせようか、と悩んでいたら)今月はお金がなくなるから、と花を買ってきたそうで。ふーん・・・なるほど・・・


「しょっぱいドライブ」
大道珠貴 文藝春秋 ¥1238
2003芥川賞。川上弘美の「センセイの鞄」のもう少しワルかも編、と言う感じ。他の2編の主人公も結局探しているのは自分の居場所、ということなのだろう。「しょっぱい」というところが内容をほうふつ。一歩間違えると「しょぼい」になるから。

10月16日(土)

「凛の国」
前野徹 青春出版社 ¥1500
タイトルを見て林明日香じゃん、と手にとったら帯にも『15歳の天才歌手林明日香と78歳の著者との出会いから生まれた感動の一冊』とあったので借り。でも内容は日本人論。彼女の歌とこのタイトルに触発された、とは言え、林明日香論はどこにも出てこなくてちょっとあては外れた感じ。ときどき自分のことを『おじいちゃん』と書いてあるのも無理がある感じ。
しかしp196「武士道の国日本(戦前の日本のこと)の心は縦軸の思想であり、今より更に良い日本を次の世代に残そうとした」というところは当たっているかも。じゃあどの世代が自分だけよけりゃ、と思ったの?と聞きたくなるけど。それも右肩上がり日本の時代もあったからには仕方がないか・・・
更に「何のために歴史の勉強なんかするんだ!」と子供に言われたら、p260「歴史を学ぶというのは縦軸の考えを養う」と言い返しましょう。


「まま母狂想曲」
黒坂黒太郎、矢口周美 講談社 ¥1500
児童虐待、学級崩壊昨今の子供を取り巻く哀しい環境を考えるとこの本はなんて大らかでさわやかな一冊なんでしょう。再婚同士の家族が新たに築く人間同士のふれあいは本文中にもある「血がつながっていても冷たい親子関係」よりもずっと人間としての頼もしさを感じる。一概には言えないかもしれないが面白かったのはp43で黒坂氏が言ったプロポーズの言葉「もし地球上から男がみんないなくなっても女性たちだけでおそらく80年は生きるでしょう。(子種がなくなるまで、と言う意味らしく爆笑!)でも男たちだけになったら一ヶ月生きられるかどうか。すぐ戦争を始めるでしょう(中略)子供には女性が必要なのです」

10月12日(火)

「キッパリ!」
上大岡トメ 幻冬舎 ¥1200
この出版社ならこの本もありかも、と嬉しく読み。表紙の「テンコブポーズ(作者命名、天にこぶしをつきあげて仁王立ち)」を見ると、偶然同じ日に朝日新聞、魁新聞の両紙に推薦されていたものである。珍しく購入して娘のところに置いてきた。ということはやはりこれ若い人に読んで欲しいからです。初版7月30日から買った物は9月15日9刷とはやはり売れているようです。できることはじゃんじゃん取り入れててきぱき生きるのもありじゃん。


「天才たちのDNA 鈴木光司対談集」
鈴木光司 マガジンハウス ¥1800
若き天才から横尾忠則天才まで26名との対談を掲載。読んでみると音楽だけは小さい頃からの積み重ね、ほかは飽くことなき集中力と脳の力、そして体力という観点が興味をそそるかも。DNAは強く念ずればいくつになっても進化する、とうのは「光の帝国」恩田陸ワールドそのまんま!

10月5日(火)

「『赤毛のアン』の秘密」
小倉千加子 岩波書店 ¥2000
なんか岩波というだけで「○○の秘密」もサザエさんなどと違って凄みをおびてくるような。すごく好きだった「赤毛のアン」シリーズだが、あれは中学時代前後に読んだからかも。逆に考えれば味わい時に読んだ、ということ。本書の一番の秘密は作者のモンゴメリーは宗教的にも結婚生活も虚偽で固めた暗さをずっと持ちつづけ、最後は「炉辺荘のアン」を出版社に渡して自殺した、という死因。P29によると、アンシリーズよりもエミリーシリーズのほうが本人に近いようで。創作で癒される人もいるだろうけど、モンゴメリーは創作で命削る森瑶子さんみたいな人だったのかも

「『ずっと欲しかった物』を手に入れるとっておきの魔法」
赤羽建美 青春出版 ¥1100
タイトルが翻訳HOW TO物のようだが、あくまで作者は日本人、しかも男性で若い女性向けに書いた本のようである。結論はあきらめず、前向きに生きるにしかず、というさわやかなエールになっている。

9月27日(月)

「モノ書く女への道」
時実新子 玉岡かおる 実業之日本社 ¥1500
年齢の離れた二人の対談、わたしはああしてこう(物書きに)なった、という内容だが、それぞれにパワーあふれて潔くて一気読みの一冊。特に玉岡さん、小説は読んでなくてごめんなさい、だけど、同世代だし、やはり夢をかなえてゆく林真理子さんを思わせる好みたち。この本のキーワードはp218「ときめく気持ちを耕す方法」ということだろう。これは誰にも共通の課題よね。どきりとするのはやはり玉岡さんの切り口でP42〜45「自分の積んできた教育でなく家事で能力評価される」結婚について、やp177「子育てや親の問題が一段落する(これは親が亡くなる、ということではなくてどういう形で親を支えるか、の覚悟や話し合いがつくってことだと思う)47歳〜48歳で人生のスパンが分かれるときが来る」


「堀田力の生きがい大国」
堀田力 日本経済新聞社 ¥1600
9月20日掲載の三田誠広の「桓武天皇」と並び¥1600にしては両方とも読み応えあり。検事から「さわやか福祉財団」を立ち上げた堀田さんならではの視点からこれからの日本を語っている。たぶん秋田の人が一番共感するとしたらp219「地方に若者の仕事を持っていかなければならない」これが政治経済のすべき最大の課題、というところだろうか。それでもちょっとライブドアや楽天の仙台進出に「アテルイ」ならぬ侵略、とも思ってしまうのは心が狭いからね、わたし・・・でも「地方で人との交流や自然を楽しみながら楽しく生活」という点では、夏だけでも涼しい東北に事務所を、なんて若い経営者が考えたら省エネで素敵。

9月20日(月)

「ふしぎな話」
飯野果菜 新風舎 ¥600
夫がサイン入りでもらってきたのを拝読。畏怖を感じる短編集。興味を引いたのはすんでいた泉中学区の寺内にある「からす沼」の話。空素って書くのねぇ・・・いわれありそうな字。


「桓武天皇」
三田誠広 作品社 ¥1600
読書日記にしちゃうと10日でたった2冊ですが,これが時間かかった!作家になるのも難しいが、作家でありつづけるのはもっと難しい、と三田誠広のこれを読んでかんがえてしまう。「僕って何」はここにはない。「パパは塾長さん」もここにはない。でもここにあるのはアテルイと同時代の正史と言われる歴史の一面と意外な実力者大伴家持であった。

9月10日(金)

「城山三郎の昭和」
佐高信 角川書店 ¥1500
佐高氏の温かなまなざしが巻末に描かれている。p252『城山はこれからも、あまり注目を浴びぬ「除け者にされ」がちな人たちの「完結しない人生」を描いていくだろう。
意外だったのはp20の騒音嫌いですごいこだわりを持っていたこと。共感したのは大学の恩師についてp113「一人はこういう人を持たなくちゃ人間はだめになるんだ」(中略)「わたしにとって教授とは,その存在を意識すると、体の中を風が走り抜ける。普段生きている世界とは違う世界からの風が,吹いてくる」・・・人生を豊かに生きる極意のようです。


「神も仏もありませぬ」
佐野洋子 筑摩書房 ¥1300
63歳が一人生きるためには凄絶です。痴呆の母親を施設に入れています。そこから始まっている本です。文章の勢いがあるので最初に63歳と「私は63歳!母以上に身体も心も衰えてきた!」と断言されるとちょっと本人が老人と言う割りにはイメージが浮かばないほど。浅間山の麓に住んでいるので春の訪れをp88「山が笑いをこらえているように少しずつふくらんできて」というのが茶色の冬山からこぶしと桜のもわっとしたたたずまいを適切にとらえていると思う。「他人のうさぎ」の章がよかった。p155「故郷のある人は人情が深いのではないか」で転勤族で故郷を作ってやれない子育てを反省しつつ、p162「きっとふるさとは土地ではなくて人なのかもしれない」で、これは私にとっては大館ね、とつくづく思う。

9月2日(木)

「文人の素顔」
柳原一日 講談社 ¥1700
料理でも有名な旅館の亭主柳原緑風の子供がなつかしい父の思い出や逗留していた野村胡堂氏、川端康成氏などと父との思い出を語る一冊になっている。ただしあまりにも幼くてときに大作家達の描写が薄いのは残念。でも安蘇時代のその時代の気風のような物を感じられる一冊。


「明日も林檎の樹の下で」
片山良子 暮らしの手帖社 ¥1524
お盆の休みに実家でゆっくり読むわと思って優雅に持参したのにやっと今読み終わりました。sizuko様から思い出多い一冊としてお借りしたのに遅くなってすみません。
出版元からもわかる通り,丁寧に描かれた林檎の街弘前からの暮らしエッセイは読むほうもじっくり時間をかけて味わえる一冊であった。長い休みに読みたい一冊。うらやましい暮らしの数々。

8月25日(水)

「なにを遺せますか」
中野孝次 日本経済新聞 ¥1300
先日亡くなったためますますタイトルがリアル。
p36柳宗悦「日本の手仕事」からの引用が痛い
「日々の生活こそは凡てのものの中心なのであります。またそこに文化の根源が潜みます。人間の真価はその日常の暮らしの中に,最も正直に示されるでありましょう。もしも吾々の生活が醜いもので囲まれているなら、その暮しは程度の低いものに落ちてしまうでありましょう。」
・・・我が家では遺せるものはあまりにも少ないようです・・・


「小説渋沢栄一 上 曖々たり  下 虹を見ていた」
津本陽 NHK出版 各¥1900
ただいま見ている「新撰組!」。でも同時代に生きながら別の結果になった人が埼玉出身渋沢氏。その側面を探ってみたくてリクエスト(多分新刊で買ってくれてごめんなさい・・・)
尊攘志士として自滅していたかもしれない氏が明治以降の様々な産業を起こすに至った様子を語るにふさわしいのは以下の文だと思う。
下巻p60(強運である、と述べつつ)「彼は自分の置かれた環境で常に最善の結果を上げようと努力する、きわめて現実認識のきびしい人物であった。(中略)栄一は自分の置かれた場所で、わが能力を最大限に発揮しようと努力を惜しまなかった。栄一が自分をしあわせ者だといったのは、常に工夫努力を惜しまない性格に生まれた自分をありがたく思ったためであろう。
一つの指針ではある。

8月18日(水)

「禁じられた楽園」
恩田陸 徳間書店 ¥1800
東北自動車道で一気読み。仙台出身の著者はこの本でも秋田出身の女性を登場させ、それがありうるようなリアルさの事件を語っている。
もし恩田陸が好きなら、そして普通推理小説や謎解き本が好きなら「早く結末が知りたい」と思うが、これは「ラストが来るのがもったいない」と思ってしまった一冊。
たった一日だけのできごとなのに、古代山岳信仰の聖地和歌山のもつであろう「地の力」をダイナミックに描く筆力に脱帽。
「あの頃は楽しかったなぁ」と思うことは多いが、「沈んでいる過去と対峙することは本当は怖いこと」なのかも、と思わせられる根源の恐怖を味わえる作品。


「生きるのが楽しくなる15の習慣」
日野原重明 講談社 ¥1300
図書館から離れても実家で貸してくれた本。これだけ長生きしてらっしゃる方なのだから良い習慣ですごしてるのはわかるが,一番びっくりしたのは1970,59歳のとき連合赤軍のよど号ハイジャックに巻き込まれて韓国で解放されたのね、というところ。
先日読んだ中野さんの本ではないがここでもやはり至言を残している。
p186 外に対する願望は,何を持つかという[having」です。希望とはそうではなくてどうありたいかという「being」なのです。


「天国の本屋」
松久淳+田中渉 新潮文庫 ¥476
実家に続き娘まで感動したからと貸してくれた本。女子大生が文庫本、といいところが絵になっていいねぇ・・・
映画にもなっているけれどタイトルは「恋火」。
でも大人の童話として夏の昼下がりに畳にぺたりとおなかをつけて足をぶらぶらさせて静かに味わいたいロマンチックな一冊、かな。

8月6日(金)

「カタコトのうわごと」
多和田葉子 青土社 ¥1400
岸本葉子さんと間違えて借りたのだが、「言葉」というくらいだから「葉子さん」という名前は物を書く人にピッタリの名前なのかも。この本も満足の行く一冊なのであった。
ドイツ語で作品を発表する著者が言葉について鋭くせまる。
面白かったのはp45、吹き寄せられた言葉たち、の章で、「人が出会うところに本が生まれる」という名フレーズ。
次の章でもp51、同じ戦争の悲惨さを歴史として語り継ぐとき、アジアは演劇や文学で表現するが、ヨーロッパでは建築である、と言われ、建築の半永久性についての視点が面白かった。


「江戸宇宙」
桐山桂一 新人物往来社 ¥2200
これもまた民俗学的な部分を多く持った一冊でびっくり。タイトルからして好みなので借りてみる。読んだら今年のお薦め本になるほど!問う教師Bぬんに掲載されていたので既に読んでいた人も居るだろうが、とりあえず「読んでよかった!」と思えた一冊。
日本人よ、自信をもてとエールをもらえる一方で、では今の日本はどうか、とも考えさせられる。ここでようやく私は哲学者内山節氏について少し知ったのであった。

7月29日(木)

「楽しみ,楽しみ」
大橋歩 大和書房 ¥1300
前も読んだかも〜、と思いながらも年がいくだけまた新鮮に感じる部分も。だって自分の方が作者が書いた年の方に近づいてきたから。著者の自戒も含めて40代、50代を素敵に生きる心をもらう一冊。


「片付けない作家と西の天狗」

笙野頼子 河出書房新社 ¥1600
なんか河出というところが「こういう作家に理解がある,こう言う作家をこそ純文学と呼ぶ」姿勢が出ている感じ。
でも読むと「片付けない」のではなく、さまざまなものを「片付けられずに」抱え込んでいる作品群のような気もしてしまうのはこちらが俗人だからね、きっと。
p19でご本人いわく「図書館作家」(書店で買われるより意外に図書館のお買い上げが多い)という一面はあるかも。そして全体を貫くペット飼いの手間隙。読んだら飼えない,可愛さよりもうんざり、とも思ってしまう人もいるはず。この手間隙をクリアできる人こそペッを飼う資格があるのね・・・

7月24日(土)

「私は好奇心の強いゴッドファーザー」
原田宗典 講談社 ¥1600
これを借りてすぐマーロン・ブランドの訃報。さすがにちょっとざわっとしましたね。ディズニー映画以来初めて私がきちんと見た映画は母とテアトル東京で見た「ゴッドファーザー」。原田氏の映画遍歴と育った時代がが軽妙に語られた一冊。同年代の人には重なる部分も多くて親しみがもてるであろう一冊。


「大差の時代」
落合信彦 ザ・マサダ ¥1500
初めての出版社名である。5年前の出版なのに状況はあまり変わっていないので悲しくうなずきながら読む一冊。民主主義の名の下に日本は階級社会になってゆくのか?5年前にこれを読んでいたら小泉さんの言う事もこのことだったのね〜、と驚かなかったかも。

7月18日(日)

「銀の兜の夜」
丸山健二 新潮社 ¥2400
いやぁ、時間がかかりました。でも一冊でもアップしとかないとカウントが伸びない、という姑息な思いでアップしてます。
硬質で難解な文章と拡大しつつ閉じられている自我の世界を描く大長編。その自我の様子は描く大勝は違いますが漱石の「こころ」のようでした。頭の中でぐるぐる回るように齢を重ねた少年期から青年期の主人公は危うい存在。
ドッペルゲンガー、河童なども登場させて描きたかった「銀の兜」が象徴する物は何だったのか?人間の奥底に隠されている破壊本能?

7月7日(水)

このあと丸山健二の大作を読んでいるのでしばらくは日記に掲載できないかも。

「こころの王国」
猪瀬直樹 文藝春秋 ¥1400
表紙の感じがよしもとばなな「王国」(っての活字になかったっけ?)に激似。猪瀬さんて昔CMに出てなかったっけ?切り口鋭い渋めのレポ、と一方的に思っていたけど実はこのような作家論もあったようで。菊地寛を描きながらp185あたりにやはり鋭く人種論をにおわせたりして。
もっと驚くべきことは、巻末に掲載された作者の言葉の中で学生時代のゼミの先輩で今や先生になられた方の論文を参考にした、と実名で出ていたこと。


「現代(いま)を生きよう」
鈴木光司 実業之日本社 ¥1300
なんかこの2冊をアップするとタイトルだけ見ると、この人なにか人生に悩んで・・・?と思われそうでやばい。あの「リング」「らせん」の著者である。それでもすごく子育てパパであることは新聞で知っていた。だからこの本なのか?人生教科書「よのなか」のように若い人向けの本。でも「いまを生きる」ことの大切さが実感できるのはかえって人生かなり来ている人たちかも。というわけですべての人に送る未来へのエールになっているのでR。

6月29日(火)

「縁は異なもの」
白洲正子 河合隼雄 河出書房新社 ¥1600
コストパフォーマンスの高い充実の一冊。対談者がすごいでしょ。河合さんが夢や能の世界に足を踏み入れてゆく心理過程が白洲先輩との対談を通して語られる。これを読むとやはり明恵も読むべきか,と思う。
p40、ドナルド・キーンの「能はポエトリー」というところ、p32河合さんの考え方(ここでは書けない)にはすごく共感。


「あの樹に会いにゆく」
細川剛 山と渓谷社 ¥1400
あなたならどの樹に会いに行きたいですか?と考える一冊。どこにでも行けるならわたしは和賀山塊だろうか。いつでも会いに行くという決まりなら双子が登った水心苑の木だろうか?それともあの子ども公園の桜だろうか?と思うだけですごく贅沢な夢が見られる一冊。この写真エッセイ集を読んだら「もののけ姫」に出てくる木の精はギンリョウソウかもねぇ・・・とか菌類まで、あのブナの倒木に生えたきのこはこんな感じ?とか諸々の菌類も可愛くて嬉しくなってしまった(きっと著者の意図とは違う方向へ言っているだろう)それでももののけ姫は屋久島が舞台だろうか?夫に話したら寂しそうに「ギンリョウソウならこの間行った岳岱のところにアップしている」と言ってました。皆さん見て下さい。

6月22日(火)

「食後のひととき」
早川民代 毎日新聞社 ¥1400
著者の専門が面白い。調理科学と官能評価学、さすがお茶の水女子大って感じ?のせいか「おいしい」と表現する言葉を120の言い方に分析。まったり、まろやか、馥郁などなどたくさんの語源に薀蓄が一杯で興味津々。


「白洲正子が語る 能の物語」
かたりべ草紙 ¥1200
¥1200で能のエッセンスがぎっしり詰まったすごい本である。
21の演目をダイジェストで解説してくれてありがたい一冊。今度また能を見に行く機会があってこの中の演目があったら予習できます。ちなみに阿漕な奴、などという阿漕って能の演目にもなっている人名だったのね・・・ちなみに先日の唐松神社薪能は「弱法師」と秘曲といわれる「第六天」

6月20日(日)

「トリップ」
角田光代 光文社 
短編集でありながら最初に描いた作品の登場人物の一人に次はスポットをあてて主人公にして書き継いでゆく、というのは面白い手法である。
どんな人にもストーリーはある、♪自分の人生では自分が主人公byさだまさし,ということから考えたらこの形でも小説はできるわねぇ、といたく感心。


「和のノート」
日本で暮らしていることを最大限に楽しみたい女の子の為の和の入門書、という著者の主旨どおり、20代の女の子ならすんなり入れる和の楽しさが書かれています。この本から3冊OBAKOさんに借りました。ありがたや。

6月15日(火)

本は絶えることなく読んでいましたが更新の為のまとまった時間がないことを反省。

「おわらない夏」
小澤征良 集英社 ¥1300
誰もがそう願ってしまうはずの素敵なタイトル。でもそれ以上に素晴らしいのはタングルウッドの夏の音楽祭での小澤氏の指揮が恩田陸の「光の帝国」を髣髴させてしまう所である。さすがOZAWA。
ということで次はリクエストして届いた恩田陸さんを読むことに。


「クレオパトラの夢」
恩田陸 双葉社 ¥1400
最後に火事で封印、しかもそれはずっと昔昭和9年に町全体を焼き尽くした大火ともつながっている、という解決は少々はしょった感じの結末だったが、今回は珍しく主人公の色が際立った作品で、彼(彼女?)の個性で読ませられてしまう一冊。


「狂言三者三様 茂山千作の巻」
野村萬斎・土屋恵一郎編 岩波書店 ¥3000
唐松神社薪能と狂言を見たから,というわけではないが、ちょうどその日に図書館に行ったら新着コーナーあったので借り。少しお勉強。千作氏のスケールの大きさや茂山狂言の行方、そして演目の解説もあり,興味ある人にはすごく面白い一冊。


「あなたとワルツを踊りたい」
栗本薫 早川書房 ¥1500
ぐるぐる回る頭の中だけでこしらえた上質のホラーって感じ。だってすべての文体が登場人物の独り言風だから。あっという間に読了。そしてこれは現実だよ、とも思う。

6月2日(水)

「回天の門」
藤沢周平 文春文庫 ¥620
おかしいわね、藤沢周平の本て読みやすかったのに,この一冊で5月の残り10日を消費。でもいくら大河で「新撰組!」をやってるからってこうい重箱の隅をつつくような読み方をしてはいけませんでした・・・「清河八郎の本がある。きっと自分と同じ山形の出身だから取り上げたんじゃない?」と夫が無理やり?貸すので手に取ってしまった。うーん、実在の人物を扱うのは難しい、というよりその人物に共感や愛情を持ってないとこう言う小説を読んでも価値を味わえないんだなぁ,と実感した作品。


「梅原猛の授業 仏教」
梅原猛 朝日新聞社 ¥1300
「こう言本だと読みやすいから」と母が買っていたのを借りてみました。確かに難しい学問を分かりやすく青少年に伝えることを目標に実施された梅原氏の授業をまとめた本だが,仏教と言うテーマはもちろん大人にとっても難しいテーマなのでこうして大人たちが読んでもOKの一冊。難しいことを平易に伝えることが出来てこそその人の血となり、肉となっている知識、ということですしね。
子供向けのこう言うの最近増えているようです。火付け役は藤原氏の「世の中」(2002.7.27参照して下さいね)でしょうか。それ以来「13歳のハローワーク」「『新しい人』の方へ」(2003.12.23)などなど・・・それだけ子どもを大切にしよう、と社会がひしひしと感じているのでしょう。昔と比べれば便利で豊かになったし、子ども達が幸せになるように大人たちは努力してきたのでしょうが、なんかかえってストレス多そうです。
新発見としては梅原氏が講義した洛南中学は空海の綜藝種智院が前進だったこと、意外に最澄は「大昔の口げんか王」だったこと、そして現代における魂の不滅とは遺伝子レベルであり、また仮に子どもを持つ事がなくても誰かに精神的影響を与えることが出来れば命はつながっている、という解釈はいい話だと思った。
最後に梅原さんは多神論の復活=多様性の尊重、寛容と言う形にまとめています。


「燃えよ剣」上下
司馬遼太郎 新潮文庫 ¥667
うーん,「血風録」ではあまりにもシンプルな表現にとまどったが、司馬さんは新撰組が好き?と思わせる爽やかな読後感は司馬さんらしい感じ。土方歳三にスポットをあてている。私はこれを読んで土方君はプロデューサーになったら良かったかも,あるいは経済再生機構みたいな仕事請負人ていうの?違った時代の彼を見てみたかったなぁ。もちろん司馬さんの出世作とも言える一冊だからこそ、かもしれないけれど。もう一度「血風録」読み返すか?と思ってしまった。解説を読むとほぼ同時期に違う雑誌に連載されていたようだが。


「向田邦子 暮しの愉しみ」
向田邦子・和子 新潮社 ¥1400
食事の話、器の話、お気に入りの話、すべて以前に味わった内容。レシピなんてもちろんきちんと作ってるもんね。若くして亡くなったという印象の向田さんだが、着々と自分がその年に近づいており、生きていれば家の母と同じ年だったのね、と妙な感慨。巻末の植田いつこさん、和子さん、お母様との邦子さんを偲んだ対談が、すごくしみじみと良い。こんな風に毎日を丁寧に生きたいものである。

5月19日(水)

「ぶつぞう入門」
柴門ふみ 文芸春秋 ¥1381
「仏像」でなく「ぶつぞう」とひらがなのタイトルにすることで専門的、学問的なだけでなくもしかして一般市民にも親しめるぞ!感を打ち出してくれている一冊。柴門さんといえばマンガもだけどエッセイもすごく面白いのでこれも読む人が多いことだろう。
それでも中の仏像のイラストを見るとプロでも仏像を描くのは難しいのね、いやむしろ書かないほうが良かったかも・・・とちょっと思ってしまうかも。
この本の通り片っ端から見ていったら忙しいけど面白そうです。


「お先、真っ白」
たかのてるこ 扶桑社 ¥1143
たとえ年金がどうなろうとも?たしかに人生お先真っ暗よりは真っ白のほうが楽しそうかも。
どなたなのでしょう、この人?と思いつつ読みやすそうなので借りてみたら、平安寿子さん以来のホームラン!(ってどういうことやねん!)
とにかくテンポが良くて面白い!ちょっとエネルギーを充電したい貴女にお薦め!(って誰やねん!)
こんな!がいっぱい付いた感想だが、それでいて「牧野」の章(p214前後あわせて30ページほどを勝手にネーミングしてみました)は著者の友人である「よしもとばなな」を思わせる文体ですご〜く、すご〜くいい。ここは哀しい短編小説として完成していると思う。


「川越今昔ものかたり」
龍神由美 ¥952 幹書房 
去年に引き続き高校時代の友人の本です。昨年の続きの川越に関する愛情たっぷりの丁寧な観光客向けの歴史解説を一冊にまとめた本。前作同様英語版と併載なのがすごく斬新。秋田も今年から国際教養大学が出来たからそこの学生と県内の人とのコラボでこんな本が出来たら中学生の副読本にいいのにな、と思いながら読む。
こんな風に生まれた街の歴史を愛するって本当はすごく幸せなことですよね。

5月15日(土)

「京都人の秘かな愉しみ」
入江敦彦 大和書房 ¥1400
京都人という人種?はこれを読むと確かにあると思う。幾多の暮らしの行事を楽しみながらこなす。そうすることで培われる伝統。逆に伝統に守られることの安心感というのもこの頃は理解できるようになった。ほのぼのできる一冊。だから続けざまに従姉妹たちが二組も京都に行くのだろう。東北には来ないのに・・・


「文学的商品学」
斉藤美奈子 紀伊国屋書店 ¥1600
結構最近朝日の日曜読書コーナーでもとり上げられていたのでリクエスト。うーん、著者の文芸評論家という肩書きがカッコいいぞ。
一見「心」を描くはずのいろいろな小説を「物」にかこつけて読み解く試みが斬新だが、奇しくも一章を割いている「カタログ小説」のようにカタログ化しているのも否めない。
その中でオートバイ文学の章はいい視点だったと思う。

5月10日(月)

「きもの、大好き!」
平野恵理子 KKベストセラーズ ¥1370
私の中で着物がブームなのは娘の成人式があるせいかも。先日の飲み会も着物談義でしばしお隣りさんと話がはずんだ。三ヶ月で着られるようになるのなら着付け教室も通っちゃおうかな?でも自分はいつ着るねん!初心者にも親しみやすい着物のHOW TOや思い入れが良かった一冊。これもOBAKO様に借り。あと一冊あります・・・


「紅の肖像」
ょうど今やっている三谷「新撰組!」のキャストを思い浮かべながら読むと、藤原竜ちゃんの沖田と、山本耕史君の土方はこの本ともイメージが重なる感じ。あらためてこの人たちって私よりずっと若くして死んでるのよね・・・と思うと,著者が勝海舟に言わせた(歴史の)捨て駒としての新撰組」と言う言葉がぐっと迫るものがある。身びいきでなく、新撰組を見ている人には読んでおもしろい一冊のはず。

5月4日(火)

「北東北のシンプルをあつめに行く」
堀井和子 講談社 ¥1500
こちらもOBAKOさんから借り。本の趣味の合う友人ってありがたいものだが、いつも借りるのは私ばかりですみません・・・・あ、彼女が私の趣味に合いそうな本を貸してくれるんです。
堀井さんのご主人が秋田出身と言う事は新聞などで知っていたが,この本を読むと「通町」付近?と推理できる(って推理しなくても書いてあるので)
ちょっと最初の秋田の水田風景の写真が光が少なくて空も薄曇りなのが惜しいと思うけど,私も他県から来たので秋田の食や工芸の懐の深さには大いに共感して読了。


「新撰組血風録」
司馬遼太郎 角川文庫 ¥780
今まで読んでいた司馬作品は清冽な明るさが特徴的だったが、どうしたのだろう?今やっている三谷新撰組の生き生きした演技と比べるともしかして司馬さんて@新撰組はあまり好きではない、A粛清を繰り返して統制を保つという点でも、御用改めと言う点でもテロ集団というスタンスで描こうとしたのか?確かに歴史の中でも異色の集団,非主流派という位置付けになってしまったかもしれないが、同じ幕末を描いた物でも主人公たちの描き方が他の作品とは大いに違うと思って読んだ。


「父の縁側 私の書斎」
檀ふみ 新潮社 ¥1400
檀一雄って「火宅の人」だし無頼派だと思っていたら実はとっても普請道楽,団欒を求める人であった、とこれを読んで意外さにびっくり。
二世タレント,二世議員と世の中では二世がもてはやされるが、年齢を考えると檀さん、阿川さんこそさきがけだろうか。

5月3日(月)

「老いのたわごと」
高橋政雄 湖東印刷所 
ここの読書日記に掲載されたら先生も作家である、なあんて。非売品である。著者の名前を見て「見覚えがある、なつかしい!」と思う秋田の方もいるであろう。手に入ったのは仕事がらみ。
97歳の今も教え子から連絡がある,というのは教師冥利に尽きるであろう。
昔♪チャ−ミーグリーンを使うと手をつなぎたくなーる、というCMがあって坂道で老夫婦が手をつないでいるシーンがあったが、最近は信号待ちなどでご主人をそっといたわるようにひじをかかえながらよりそう老婦人の姿も美しいと思うのも仕事柄か?そんな著者御夫妻なのである。


「W杯戦士」
乙武洋匡 文藝春秋 ¥1429
¥1429で全部読めるならナンバー買わなくていいじゃん、と思ってしまった一冊。
2002を思い出しつつきたるべき2006を展望しよう。
乙武君と選手のインタビューを読んでいくと若い選手ほど「サッカーは少年を大人に・・・」のフレーズがよくわかる。
長くなるがトルシエの「プレーというのは人間が出る(中略)暗くてウォークマンだけを聞いている選手はお帰り願っているのです。一緒に話し合ったり,一緒に努力を積んでいかなければならないのです。そういうことができるのは小野ですね。」という言葉にはチームプレーとして、さらに社会人としてのエッセンスがつまっている。そして小野君、お婿さんにしたいぞ!遅いか・・・


「にっぽんのおもてなし」
平野恵理子 kkベストセラーズ ¥1500
おお,これぞOBAKOさんちの空気!と思いつつ課してくれたOBAKOさんとリンクする一冊。暮らしを楽しむ極意が一杯。そして真似してみたいなぁとも。OFFに読みたい本です。ちょっと挿絵ひとつひとつのバランスが今ひとつなのが残念。

4月27日(火)

「4TEEN」
石田衣良 新潮社 ¥1400
わかっちゃいるけど読んじゃった、という感じ。14歳というのはどうして輝くんだろう。構成が「明るいスタンドバイミー」って言う印象。でもきっと皆嫌いではないはず。文体がちょっと村上春樹もしくはサリンジャー「ライ麦畑・・・」に似ている。特にp916行目あたり。哀しくてすごくよかったのは「大華火の夜に」と「空色の自転車」彼らのこれらはどんな未来が開けるんだろう?それは14歳を見れば誰にも思うこと。お薦めできる大人の童話。アップテンポな重松清。

4月21日(水)

「まじめな生活」
大橋歩 大和書房 ¥1400
このタイトルと内容を読むと大橋さんて意外に今まであまり生活を大事にしてこなかったかもな・・・と思うのは私だけでしょうか?でも考えればイラストレーターという仕事がメインなんだものね。


「残像」
乙武洋匡 ネコパブリッシング ¥1600
p344「決勝戦のチケットなんて一般的にいくらで売られているものなんですか?」というあたりは必死でチケットを手に入れようとあの手この懸賞を使った下々の私たちには非常に腹のたつ内容だが(そしてそれは全体にそういう感じなのだが仕方がない,彼は有名スポーツライターなんだから),やはりサッカーの話なら一気読みできるわよね〜。おかげさまで2002W杯の思い出に残るシーンが鮮やかに甦ってくれた。あれからたった2年なのになんか遠いわねぇ・・・と思うのは私だけ?

4月17日(土)

「メロンパンの真実」
東嶋和子 講談社 ¥1600
著者は科学ジャーナリストというカッコ良い肩書き。
メロンパンの起源を主に西日本に探ってゆく。各地の絶品メロンパンの店一覧もあり、
好きな人には探求の余地ある一冊。
メロンパンをサンライズ,と呼ぶのは西だけのようで、私は知らなかった。


「ずっと大切だったこと」
王由由 東京書籍 ¥1456
おしゃれな雑貨屋さんのさきがけ、アフタヌーンティー、トゥワイスのオーナーとして各雑誌に活躍の由由さんらしい雰囲気を感じさせる一冊。
淡いピンクを主体とした花々の写真を、なーんか遠くなっちゃったなぁ・・・と少し哀しく見ている自分。同じ女なんだけどね・・・。


「職人学」
小関智弘 講談社 ¥1600
今回お薦めの一冊。プロジェクトXではないけれど,好きと思う箇所を発見できるかも、の一冊。
私が一番印象に残ってちょっとこれから「カリスマよりもマイスター」と使ってみようかな、と思ったところはp60、ドイツのマイスター制度について語ったところで「自分を超えられる職人を育ててこそ一人前の職人」って子育てに通じる物がありませんか?そして自分を超えてもらう為には自分の持っているものは最低限正しく伝える、というところも良い文章。
次いでp200「民衆の中に息づく技術は絶えない」(庶民の道具としての江戸切子が残り、大名に保護された薩摩切子が大名と言う形が崩れると廃れたことについて)
p227「人類最初の巨大建築物のピラミッドは数千年の寿命を今も保っているのに,最新の技術は駆使しているのに自動車でも(携帯でもパソコンでもと言いたいところだろうか)数年であっという間にごみのように捨て去られる」というくだりも考えなければいけないことかもね。

4月8日(木)

「石田節子のきものでおでかけ」
石田節子 阪急コミュニケーションズ ¥1800
着物大好きで仕事もOLから着物関係に変わり、ついに自分のお店も持ってしまった石田さんの着物に対する熱い思い、師でもある池田や(港区白金題ー22−11−101)さんの素敵さも伝わってくる楽しい一冊。東京ウォークにチェックしたい和物のお店の数々も嬉しい。 


「櫻よ」
佐野藤右衛門 集英社 ¥2100
表紙、見返し、しおりと様ざまな桜色を使った美しい本である。
お花見シーズンにあわせて貸してくれた?OBAKO様に感謝!
これを読むと鳥インフルエンザの広がり方も自ずから理解できる。
すごい名文p162.「桜のいいところは,毎年一本の桜を見ていると,花を見たときに去年を振り返りますやろ。そこが大事やと思うんです。(中略)「花見」の秘訣やね。」
小学校に桜があるのって理にかなっていたのねぇ・・・と実感。この本を読むと染井吉野は桜、山桜などを櫻と使い分けたくなる。

4月4日(日)

「またひなまつり」
渡辺一枝 集英社 ¥2200
デジャブ?まさか本の読みすぎで内容がわかってしまっているの?家にもう一冊「ひなまつり」の方も持っていらっしゃるOBAKOさんの検証を仰ぎたいほど「ひなまつり」と同じ文が入っている。出版社が違えばこれってあり、ということなのかしら?でも買ってしまった人はどう思うかしら?


「ユニットケアという幻想」
高口光子 雲母書房 ¥1600
国からの押し付けという形でのユニットケアは反対である、という断固たる語り口をとりながら、介護の現場に来て限界や挫折を感じてしまう若者へ熱いエールを送る一冊。これを読むと理想の介護、というのは極端な話、千差万別の介護に尽きるのか?と思う。


「思い出のむこうへ」
小澤征良 筑摩書房 ¥1300
まず筑摩書房らしい、センスの良い表紙に惹かれる。淡い空の色の四角(むこうへ、というタイトルだからもしかしてこれは空に向かって開いた窓なのだろうか?)そして大好きな恩田陸が実名で登場させた小澤征爾氏の娘である著者と父や家族で過ごした日々の思い出。父は音楽、娘は文章という形で自分を表現しているということだろうか。自分も実家で犬を飼っていたためか、愛犬のお話はついぽろり。以前読んでもパワフルという印象の小澤氏は娘から見てもやはりパワフルなのであった。すごいね、この人の娘である、という事実は。本当に暮らしに音楽があるんだものね。

3月28日(日)

「仕事」
乙武洋匡 文藝春秋 ¥1333+税
スポーツライターとしてナンバーのエッセイとからめながら自身のHPに書いた日記中心の一冊。乙武クンのサイトアドレスも掲載。オタクっぽく面白いのは裏の表紙のすみっこに書かれている「用紙 里紙・白(カバー・帯・別丁頁) 里紙・あんず(表紙) 里紙・竹(見返し)」という言葉。これって何かの用語?なぜ書かれているの?


「王国 2」
よしもとばなな 新潮社 ¥1100
うーん、やっぱりよしもとって大人の童話だ!と感心させられた一冊。今回は最後の7行を書くために作ったのでは無いかと思うほどメルヘンチックでいながら力強い。長いが引用。3月に立ち止まっている誰かに。
p141.そうやって、私という波紋を、宇宙の記録の中にどんどん刻みつけていく。さらに漕ぎ出していけ、私よ。新しい日常のなかに、この小さな光をもって。
なんか旅立ちの3月にピッタリのフレーズだよね。他にも
p81.なんだっていいんだ、魔法は難易でも存在する(中略)そこに人との思い出がちゃんと作られていれば、どんなものでも魔法の装置にかわっていくのだ。
そしてありがとう、図書館、最新刊を貸してくれて。だってp101にはSMAPの「世界で一つだけの花」まで話題に・・・

3月25日(木)

「もっと、わたしを」
平安寿子 幻冬舎 ¥1600
平さんらしいこの本を読んでひと安心。特にやはり女性を主役に置いた「愛はちょっとだけ」「涙をかざって」がいい。全部読むことで登場人物がつながってゆくので時々前を読み返すこともあったが、「どんな人にもドラマ」もっとかっこよく言えば「誰もが自分の人生では主人公(さだまさし風です)」というのが伝わってくる。めげそうなときに読む元気の薬になるであろう。


「貧好きの骨董」
尾久彰三 晶文社 ¥2500
民芸と言うジャンルでくくればこの一冊でも楽しいが、佐藤禎三さん、白洲正子さんにたどり着くかと言うとそれはない。物の魅力を表現するのに文章力の大切さをまたしても実感。それでも随所に柳宗悦、青山二郎のことなどあり、興味はひくが・・・

3月18日(木)

「雪花風月」
佐藤禎三 淡交社 ¥2000
白洲正子さん好きならきっと気に入ると言って貸してくれたOBAKOさんに本当にそのとおり、感謝してます!但しタイトルは「花鳥風月」の間違いに非ず。
著者紹介でサラリーマン、という肩書きながらすごい邸宅と文化をしょって骨董集めが出来る、というのはやはり白州さんに通じる一冊。
美しい写真の数々もこれこそコストパフォーマンスの適正な一冊、と力説できる。


「パートタイムパートナー」
平安寿子 光文社 ¥1700
この人は女性を主人公にした物を描いたほうがもっと生き生き描けると思う。それでも生きることへの明るい自己肯定のたくましさはこの作品でも味わうことができ、平さんらしい一冊にはなっている。あの「素晴らしい一日(2002.9.2の読書日記)」に次ぐ2作目という順序を考えれば一作目の「素晴らしい一日」を超えてはいなかったけど今はもっと進化している。(実はリクエストで「もっと、わたしを」を借りているもんね)


「父は信長」
新井政美 講談社
歴史にもしも・・・はない、とはよく言われるが、この本は「もし信長が本能寺で殺されなかったら」というお決まりのもしも、ではなく、「もし信長の子、信忠が本能寺で死ななかったら」がこの作品を書く強い動機になっていたようで、信忠、新介の爽やかな交流を軸にし、信忠の才気も認めながら、偉大な信長を浮き彫りにした一冊。子の側から信長のすごさを描くという視点は面白い。たしかに子どもだったら命がけ?


「このくにの行方」
筑紫哲也対論集 集英社 ¥1400
深夜のニュースは見てないので今頃読んだもので恥ずかしいが、カルロス・ゴーン、養老孟司、ビートたけしら8人の先頭集団の方々と日本を考えるタイムリーな一冊。それぞれの視点がやはり個性的で興味深い。

3月7日(日)

「司馬遼太郎を歩く 3」 
荒井魏 毎日新聞社 ¥1524
それぞれの作品(主人公)のゆかりの地を訪れながらのエッセイ風作品論。あまりにも司馬さんが多作のため、歴史上の人物の輪郭がぼけてしまうところがあるが面白い試みの一冊である。
ただこのシリーズは3作目らしく、歴史小説に限っているが、もし「街道をゆく」について語るときは「『街道をゆく』をゆく」になるのだろうか?(微苦笑)


「究極のお箸」

高橋隆太 三省堂 ¥1700
ふーん、三省堂から・・・というのが先ず正直な第一印象。OBAKO大先生から借りたのだがなんか生活がグレードアップできそうな一冊。こんな本を持ってるところがさすがさすがですね。
もちろん自家用のお箸ならデパートでもいいが、こんな場面でのお箸の買い方なら行ってみたいわ、このお店、と思わせずにはいられない内容の一冊。東京へ行く楽しみが増えます。大人の東京の楽しみ方。
確かにp152、「かさばらない、手頃な値段、必ず使う」という意味でいいお箸のプレゼントは嬉しい。双子が大館から引っ越すときに塗りのいいお箸をくれた友達はやはりすごくセンスがいいなぁ、と思ったもの。
ちなみに作者のお店は
「夏野  http://www.e-ohashi.com/  」


「ひなまつり」
渡辺一枝 情報センター出版局 ¥1500
椎名誠夫人作のお雛さまも掲載されたエッセイ集。新婚当時、椎名さんが夜中に帰宅すると小さな世界に没頭していた奥様の姿が鬼気迫っていた、というのはなんかわかるなぁ。
結構旅や暮らしのエッセイを読んだいたがこれは初めて。
自宅にたーくさん愛らしいお雛様を飾っているOBAKOさんが収集のきっかけになった本とか。

3月2日(火)

「号泣する準備はできていた」
江國香織 オール讀物 ¥950
姑息にまたしてもオール讀物一冊で2作を楽しもうとしたら、江國作品は4/12しか掲載されていないので、号泣する準備ができないまま読み終わってしまった。全作読んでいないので失礼かもしれないのだが・・・
しかも受賞、というわりに意外に消化不良の作品が多かったかも。好みでしょうが。
最近は「冷静と・・・」に続き、このような大仰なタイトルが多いのか?それは「世界の中心・・・」のように流行なのか?
フレーズとして面白かったのは「こまねずみのように良く働く妻=こまつま」が新鮮であった。


「後巷説百物語」
京極夏彦 オール讀物 ¥950
北海道出身とインタビューで言っていて「あ、それでグレイのTERU・・・」。似てませんか?雰囲気。
「えびすの顔が赤くなると島に大きな災害が云々」というのはこの年になるとどこかで聞いたような話だとは思えるのだが、何たって舞台を男鹿にしてくれた物だから一気に読んでしまいました。直木賞の面目躍如。ただし今回の受賞者は実力も売れ方も、なんで今さら・・・と思う二人ですよね。

2月29日(日)

今回は友人のMさんが文春を買って早速貸してくれた。ありがたや。この年代が芥川賞を取る時代、ということはもう書評を書く側もかなり若返らないと大変ね。いやいつもみずみずしい感性を大切に、自分。でも2冊だったら買わないな、今の自分・・・

「蛇にピアス」
金原ひとみ 文藝春秋 ¥780
娘と同年代の作者が受賞する時代になってしまったことのほうが驚き。苦節なんて言葉は死語かもね。
タイトルの「に」については本人もインタビューで「蛇のような舌になるようにピアスで舌を割ってゆくこと(スプリットタン)」と言っていたけど、おばさんの文法的にはつい「のたうちまわる蛇のしっぽを押さえつけてピアス」に思えてなりません。
結末はやはりシバさんが犯人かも・・・と匂わせながら、「根拠のない自信」で明るい破滅(になってしまうかも)に向かってゆく主人公が現代とクロスする気がする。それは世界のあらゆる紛争。そこが受賞の理由だろうか?
そして作者は山田詠美のようになってゆくのか?何十年後が楽しみでもあるし、痛々しくもあり。
面白かったのは半同棲のアマが行方不明になって捜索願を出そうとしても本名を知らなきゃ出せない、と愕然とするところ。そこだけは妙に現実。


「蹴りたい背中」
綿矢りさ 文藝春秋 ¥780
女子高だったし、兄弟も、男児もいなかったけど、青春を通り過ぎた今なら何となくわかるような気がする。高校生になると急に男子って輪郭までごつくなる気がするものね。女の子になって行く自分と、意外に広い背中になってる男子。そしてその男子は自分以外の何かに夢中になってる(ここではモデルのオリチャンだが、部活だったり、音楽だったりすると妙にかっこよかったり、でも受験勉強だとダサイし・・・)。そんな背中が近くにあったら、うーん、こっちむいて!と足が出るかも。
それでいて主人公ハツちゃんのクラスメイトへの冷めた客観的な不器用さもみずみずしい。その繊細な描写が受賞の一因か?

2月27日(金)

「冠婚葬祭心得」
谷沢永一 新潮社 ¥1000
といってもやり方、料金云々ではなくあくまで心の問題であった。買った覚えもないのに実家にあったが、どうも夫が7年ぐらい前に研修で関東にいたときに買って読んだもの、とのこと。なににおいても心の準備、ということが結論のようで・・・


「まほろば」
原由子 秋田文化出版 ¥1200
わらび座創始者原太郎氏の奥様が一緒に苦労した話、思い出などを書き留めた記念誌的一冊。
きっともっと大変だった部分もあるのだろうけど(結婚した頃あのあたりを車で通り、ふと見掛けた看板に義父母はかなり今と違った言い方をしていた、ということは昔は秋田の人が皆そう思っていたのでは)、文章表現はむずかしい。こればかりは年齢じゃないんでしょうね。

2月16日(月)

「夢我夢中」
小泉清子 NHK出版 ¥1700
タイトルはあくまで「無我夢中」ではなく、「夢我」である。大河ドラマの最後の出演者・スタッフのテロップで衣装考証の所を見るとこの人の名前が。ずっとやっていらしたらしい。偶然に「今年は着物」と思って手にとって見たら大河・・・と言うことが判明。併せてこの方、上野・銀座・全国チェーン鈴乃屋創始者であった。着物にかける情熱、85歳で第一線で働く人の頼もしさを感じる一冊。そんな人でも仕事と子育ての両立の大変さに悩み、というのは今も昔も。人生色々。


「ジーコジャパン ザ・ビギニング」
セルジオ越後 講談社 ¥1500
今年はいよいよオリンピック・W杯予選ということで今月からTVでもUー23、A代表のゲームの放映が多くて嬉しい。ということで来るべき?ドイツへの予習、いや前回の復習のつもりで借り。
辛口セルジオ氏、もう少しジーコジャパンについて言及するかと思った・・・


「ひとり暮らし安心ノート」
松原惇子 いきいきブックス ¥1500
「女が家を買うとき」「クロワッサン症候群」出話題を集めた著者も年齢を重ね50代になって、具体的に「ひとり暮らしを生き抜く」本を出版、というところか。散々女性の自立をあおって最近は女優たちも結構結婚、入籍ラッシュ。そんなあおられた50代への松原さんからのメッセージ。介護の話、終の棲家、遺言状、お葬式までを自分で演出する潔さがこれからの50代なのかも。


「団塊の主張」
森毅編 AG出版 ¥1300
団塊世代の人々、それにエールを送る人々の酒器を集めた一冊。編者の森さんの「人生に小さな祭りを抱えて生きる」というのが素敵なフレーズ。
秋田出身の人もいるかなー、と思いながら読んだら八森出身の人の手記があった。その方は故郷に対してエールを送っていた。

2月1日(日)

「ヘタな人生論より徒然草」
荻野文子 河出書房新社 ¥1500
前回の読書日記で徒然草に触れたらちょうど本の方で図書館で待っていてくれた、という感じ。新聞広告にもあって面白そうだったので即借り。
著者がご存知予備校マドンナ講師のせいか、良い若者向けの一冊となっていると思う。特にp144「自然に対して不思議、と思う完成こそが人としての原点」というあたりは感性の柔らかい若者にこそ!


「無敵の一般教養」
島田雅彦 メタローグ ¥1400
「一般教養」は「パンキョー」とルビ入り。大江さん、荻野さんといい最近はこう言う本が多いなぁ。読んでないけど「13歳のハローワーク」by村上龍もだろう。それだけ皆が若者を憂える時代になってきてるのだろうか?単にブームだったらイヤだけど。
何年か前にも日本の先端科学者のわかりやすい紹介本があったが、これも若者に勧めたい一冊。目からうろことしては、p47人類の特長はそれまでの生物にはなかった「おばあさん」の出現(松井孝典・惑星物理学)。p133子どもの頃蝶を集めていた自分と甲虫を集めていた養老孟司さんではその後の人生観に影響があったと思うと言う説。蝶=重要かどうかで取捨選択の対象になってしまう。甲虫=どれもあまり大差が無い形なので平和主義的。(茂木健一郎・脳科学)という二つは新鮮。名言はp148「どこに行っても、そこを世界の中心にして生きている人たちがたくさんいる」(関野吉晴・文化人類学)これって「人間が人間する」の名フレーズを生んだドキュメンタリー映画「しらかみの夢」に通じるのでは・・・!あれは文化人類学的視点だったのね。こう考えると若者ばかりでなく大人も読んだほうがいいのかしら?

1月26日(月)

「庵を結び炭をおこす」
松村賢治 ビジネス社 ¥1600
旧暦で暮らすことを提唱するシリーズの2作目。1作目を読んでないので何ともいえないが、今回は暮らし振りよりも現代の「方丈」造りに重点を置いた内容かも。
それでも建築に取り入れたい風道とか、災害のときのために備えたい七輪は真似したい提案。
中学で受験のために読んだ時には印象に無かったが、P18にある徒然草151段の現代語訳「50歳になっても上手にならないような芸は潔く捨ててしまいなさい。(中略)老人がやることを世間はあざ笑うわけにいかなくて黙っているだけなのですから云々」という段。まだ芸すらも身につけていない人はどうすればいいんですか・・・?でも確かに昔は50歳は死の近い老人だったんだものねぇ・・・とつくづく。


「だんだん『自分』になってゆく」
落合恵子 講談社 ¥1400
環境も立場も全く違うが今の自分と同年代の頃のエッセイのせいか、「そうだねー」と共感しながら読めた一冊。
p49「わたしたちは毎日旅をしているようなものですよ。今まで知らなかった老いという異郷をね。(中略)老いとは何かを失うことではなく、若さから解放されること」というのは前クールでやっていた「エ・アロール」ではないけど至言ですね。


「ひらまつからの招待状」
平松宏之 文春ネスコ ¥1800
もともと料理の世界ではすごい人だとは思っていたけど、目標、夢に向かって一心に生きている人の本を読むのは実に爽快。料理へのあくなき探究心と後進を育てるリーダー論を読んでいる感じ。そして氏の持つ「働く=自分を表現する」という考え方は去年見て感銘を受けたドキュメンタリー映画「しらかみの夢」の中で言われた言葉「人間が人間する」にもつながってゆくようであった。


「私のきもの生活」
藤間紀子 文化出版局 ¥1600
市川染五郎、松たかこのお母様、といえば当然着物は着慣れているのよね。なんか今年は和の気分盛り上がり。

1月20日(火)

「参加型猫」
野中柊 マガジンハウス ¥1400
もしペットだとしたら猫より犬のほうがずっと参加型だろうに、と思いながら読了。今風な?若い夫婦の引越しの一日を描いたはかない感じの一冊。
良かったのはp85あたり。とっても変なおじさんが、でもすごく腕のいいシェフであることについて「ああいうヘンテコなオジサンでも、こんな美味しい料理が作れるんだから、神様は彼にちゃんと生きる場所を与えて下さってるってことだよね」のあとに続く奥さんの沙可奈(猫ちゃんが出てるので魚のしゃれか?)ちゃんの生きる場所がボクの隣であってほしい、という勘吉君の描写が良かった。


「やりたいことは全部やれ!」
大前研一 講談社 ¥1500
どうしちゃったの、このあおるようなタイトル!と思ったら大前さんいつの間にか少しお年を召してハッピーリタイヤメントの勧めらしい。ただあくまで彼は仕事もダイナミックだが、余暇も彼らしく活動的。
たしかに自分も年を重ねてくるとp222「私およびそのすぐ後の団塊の世代は不幸な時代で、親の面倒を見て、子どもの面倒を見てきたのに、自分の老後はおそらく誰からも見てもらえない最初の世代になるのではないだろうか」という言葉は後に続く世代としてぶるる、ぶるる・・・

1月16日(金)

映画で話題の「半落ち」を夫が購入したので再読。今回は役者をイメージしながら。義父が3日で読了して新年会で他の人に言ったら(私たちに駐車場を貸してくれている大家?さん)その人も借りたいと言う事で広がる「半落ち」の輪。

「ZOO」
乙一 集英社 ¥1500
危ない、と思うくらいの短編集。分別のついた?大人?ならまだしも(もちろん分別に年齢はないのだろうが)人によっては「あぶない」だろう、これは。
なんか事実は小説より奇な今の世の中ならありそうだからますます怖い。
特に「冷たい森の白い家」[SEVEN ROOMZ」は、岩井志麻子さん流に表現するなら「ぼっけぇ きょうてぇ」で。TV化するなら「陽だまりの詩」


「『一人っ子長女』のための本」
多湖輝 新講社 ¥1300
ちょうど一年前(1月20日分の読書日記参照)にも多湖さんの「長女のための本」を読んでいる。だからあれ、もしかして前に借りてた?とちょっと既視感に悩んだ私。今回は帯もすごい。「なぜ可愛い!(rumiko註 これだけ!マークだし)なぜ賢い?なぜ芯が強い?」だもん。最初一人っ子は皆美人という意味かと思って借りちゃったわよ。親が「一人っ子をかわゆい」と思うことだったんですね。でも読んだ結論は、一人っ子で生まれたことよりあとの環境、人間関係の影響は大きい。これってすべての子育てに通ずるのでは?

1月11日(日)

今回の岸恵子さんの本はどうしても返却できない友人に代わり「読んでもいいから代わりに返して」と言われ、風除室に取りに行ったもの。岸さんを見るたびにこのことを思い出すだろうな。

「風が見ていた」上下
岸恵子 新潮社 各¥1500
上下巻頭の岸さんの写真が本当に本当に美しく「アイドルでなく女優が羨望をあびた時代」を感じる。
自叙伝風?かと思われる小説だが、ストーリー運びとしてのテーマは「環(輪)」。登場人物の動かせ方が三島遺作となった輪廻転生の不思議を書いた作品群や「ライオンハート」など恩田陸の持つ雰囲気にも似ている。ラストが少し唐突な終わり方が消化不良な感じ。
でも今の自分と同じ年でラストを迎える主人公の波乱万丈ぶりはやはり女優そのもののような華やかさ。


「『新撰組』土方歳三を歩く」
山と渓谷社 ¥1500
今日から始まるん大河新撰組はいつもよりNHKの前宣伝が力入ってると思う。見るけど。
その前勉強のため?(図書館の新刊にあったし)借り。山本耕史君扮する土方を想像しながら町並みを歩かせてみた。彼が住んだり戦った町並みの写真や地図入りなのも嬉しい。一番手近は板橋駅前か?

1月7日(水)

年末年始は雑誌も読みふける。実家にはクロワッサンがあり、プレジデントでこれからを考えたり、メイプルなども珍しく買ったり、そして「安部清明」も実は読んでいたのだが・・・書くにはいたらず。

「作家はこのようにして生まれ、大きくなった」
黒古一夫 河出書房新社 ¥1800
面白いのは北村透谷論、立松和平論なども出している著者が図書館情報学系の教授であること。
p54、高校時代の回想が見当たらないのは「平凡で充実」していたから、というところは自分の高校時代を思い出しても当てはまると思われる。
「新しい人の方へ」でも批判的に語っていたある作家をデビューの時から批判的だったのも意外だが面白い。


「ツチヤ学部長の弁明」
土屋賢二 講談社 ¥1400
面白くて取っておいたご存知わははのエッセイ集。もしかして彼の持つ文体は(奥様を怖がることも併せて)現代のソクラテスなのか?いしいひさいちのイラストもばっちり!これは笑いたい人にだけのおすすめ!そこから哲学を読み解けば更に人間として進歩するのだろうか?


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